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「先制反撃」可能になった日本、北朝鮮の「攻撃の意思」はどうやって見極めるのか

登録:2022-12-19 10:14 修正:2022-12-19 12:11
10月の東海公海上の韓米日ミサイル防衛訓練の様子=米国防総省提供//ハンギョレ新聞社

 「先制攻撃は国際法違反だ。(敵の攻撃の)着手の見極めというのは、大変難しい課題だ」

 岸田文雄首相は16日午後、戦後日本の外交・安保政策の「大転換」と評される国家安全保障戦略など3文書の改定を閣議決定した後、記者会見に臨み、答弁でこのように発言した。質疑応答の最後の方で、今回の文書改定を通じて日本が保有することになった「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の盲点に迫る質問が出た。日本政府の見解では、敵による日本への「攻撃の着手を確認できれば敵地を攻撃できる」としてきたが、いつの時点を「着手」と見なすのかを尋ねたのだ。

 これに対する岸田首相の答弁は、曖昧極まりなかった。「攻撃着手」の見極めには「いろいろな学説があり、国によってもいろいろな扱い(判断)がある」とし、「日本は国際法をしっかり守ると申し上げているので、その範囲内で日本が対応できるような体制を具体的につくっていかなければならないと思う」と答えた。敵が実際に日本を攻撃する能力と意思がない状況で先に攻撃した場合、国際法違反になるだけでなく、下手をしたら大きな戦争につながりかねない。そのような状況が発生しないようにするという答弁だった。

 岸田首相が「曖昧な答弁」しかできなかった理由は、日本が保有することになった敵基地攻撃能力の持つ根本的な限界のためだ。日本は今回改定した国家安全保障戦略で、この能力を持つ理由として、北朝鮮が変則軌道で飛翔するミサイルを含め迎撃の難しいミサイルを繰り返し発射しており、これが日本にとって「重大で切迫した脅威」だという点を挙げている。

 日本が実際にこの能力を使うためには、発射に着手した敵のミサイルの位置を正確に把握し、北朝鮮が本当に日本を攻撃する意思があるのかを確認しなければならない。しかし、北朝鮮は最近、移動式発射台(TEL)や鉄道・潜水艦などによる変則発射能力まで誇示しており、ミサイルの存在を確認するのは容易でない。さらに、北朝鮮に本当に攻撃の意思があるのかを把握するのは不可能に近い。下手にボタンを押せば、北朝鮮の容赦ない報復攻撃につながる可能性があり、慎重に慎重を重ねなければならない。そのため、浜田靖一防衛相は6日の定例記者会見で、「着手」に関する質問に対し、「その時点の国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、態様等によるものであり、個別具体的な状況に即して判断すべき」という回答にとどまった。

 このようなことから、日本が敵基地攻撃能力を本当に使うためには、豊富な情報資産を持つ同盟国である米国とともに情報判断と意思決定をするほかはない。実際、日本はこの能力を米国と共同で運用する予定だ。産経新聞も18日、「日米双方が打撃力を行使する際、友軍の誤爆や攻撃目標の重複を回避するため日米間の連携がより重要となる」とし、「米側からは米韓同盟と同様に、(日米)連合司令部の創設や指揮統制システムの統合を求める声もある」と報じた。結局、韓国の立場としては、朝鮮半島全体を戦争の惨禍に追い込みうる日本の決定的な「誤断」を防ぎ、米日間の意思疎通の過程に参加するために、好むと好まざるとにかかわらず、米国を媒介に韓米日三角協力を強化せざるを得なくなった。

 さらに一歩進んで考えると、日本の専門家は、政府が表向きは北朝鮮の脅威を強調しているが、実際に念頭に置いているのは台湾海峡を挟んだ中国だと分析している。特に、日本が開発計画を明らかにした射程距離3000キロメートルの極超音速ミサイルは、中国を狙ったものとみなさざるを得ない。金沢工業大学の伊藤俊幸教授(海上自衛隊出身)は毎日新聞の記事で、北朝鮮に対する日本の攻撃は「第2次朝鮮戦争が起こり、北朝鮮が日本の米国支援を阻止するために米軍基地に向けてミサイルを発射した場合、これに対応する程度しかない」と語った。慶応大学の神保謙教授(国際政治学)も朝日新聞の記事で、「北朝鮮対応の主体は米韓同盟であり、日本の反撃能力の役割は共同作戦での補助的なものとなる」との見解を語った。ただし、「反撃能力の保有によって、米韓の共同作戦計画の意思決定の輪に日本が入るテコとすることには大きな意義がある」と付け加えた。

北朝鮮の金正恩国務委員長は、9月25日から10月9日まで北朝鮮軍戦術核運用部隊や長距離砲兵部隊などの訓練を視察した。写真は当時の北朝鮮軍の訓練の様子/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 日本がこれまで保有していなかった攻撃能力を確保することになり、韓国は困難な状況に置かれることになった。船頭が多くなり、韓国の意思とは違って船が山に向かう可能性が高くなったためだ。韓国の外交部当局者は16日、「朝鮮半島を対象とした反撃能力行使のような朝鮮半島の安保および韓国の国益に重大な影響を及ぼす事案は、韓国との緊密な協議および同意が必ず必要だ」と明らかにした。しかし、日本政府の関係者は同日、「反撃能力の行使は日本の自衛権行使であり、他国の許可を得るものではない。日本が自主的に判断する」と述べた。ただし、この関係者は「反撃能力を決断する際、情報収集と分析という観点で米国・韓国と必要な協力をする」と付け加えた。「不安なら協力しよう」と秋波を送ったわけだ。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1072155.html韓国語原文入力:2022-12-19 8:55
訳C.M

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