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軍事大国に進む日本…約70年ぶりに「敵基地攻撃能力」備える

登録:2022-12-17 10:03 修正:2022-12-17 10:32
総理官邸のウェブサイトよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 日本政府が北朝鮮や中国などの周辺国のミサイル基地を直接攻撃する「敵基地攻撃能力」(反撃能力)を保有することを決めたことにより、過去70年あまりの間維持してきた安全保障政策の枠組みが大きく変わる。5年後には日本の防衛予算は10兆円を超え、米国と中国に続く世界第3位の軍事大国に成長する。日本の安全保障政策の大転換は、朝鮮半島を含む東アジアに相当な影響を与えるものとみられる。

 日本の岸田文雄内閣は16日午後、閣議を開き、外交・安保政策の方向を含めた「国家安全保障戦略」改定案を決定した。2013年に国家安全保障戦略が作られて以来初めての改正だ。あわせて、下位概念であり日本の防衛の目標を設定した「国家防衛戦略」と、5年間の防衛予算や具体的な兵器などを決める「防衛力整備計画」も承認した。

 国家安全保障戦略では、「反撃能力」という表現で敵基地攻撃能力が明記された。「(日本に対する)そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする」と書かれた。「専守防衛」(攻撃を受けた場合のみ防衛力を行使する)の原則により、太平洋戦争敗戦後、70年以上にわたり「防衛」だけにとどめていた日本の安全保障政策が、攻撃能力を持つことになる歴史的転換点をむかえた。

 岸田首相は、閣議後の記者会見で「脅威が現実となったときにこの国を守り抜くことができるのか。極めて現実的なシミュレーションを行った。率直に申し上げて、現状は十分ではない」とし、「相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる反撃能力は、今後不可欠となる能力」だと述べた。

 敵基地攻撃は、相手(敵)が武力攻撃に着手した場合に可能となる。日本政府は「どの時点で武力攻撃の着手があったと見るべきかについては、その時点の国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、態様等によるものであり、個別具体的な状況に即して判断」すると明らかにした。日本は「反撃能力」行使の過程で、米国と協力する方針だ。「国家防衛戦略」では「我が国が反撃能力を保有することに伴い、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していくこととする」とされている。共同通信は「「反撃能力(敵基地攻撃能力)発動時の共同対処を盛り込む」よう、「自衛隊と米軍の役割分担を定めた日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定を提起する方向で調整に入った」と報じた。日米防衛協力指針は2015年に改定されている。

 日本は、攻撃能力を実質的に強化するため、1000キロメートル以上の長距離巡航ミサイルなどを3段階わたり1000発以上確保する。1段階目では、射程距離1250キロメートル以上の米国の巡航ミサイル「トマホーク」500発を購入し、早期配備する。2段階目は、自衛隊が運用中の「12式地対艦誘導弾」の射程距離を200キロメートルから1000キロメートル以上に長射程化した後、地上発射形で2026年に導入する。艦艇は2028年、戦闘機搭載は2030年だ。3段階目に、マッハ5(音速の5倍、時速約6120キロメートル)以上の速度で飛び予測困難な軌道を描く極超音速ミサイルを2030年頃に配備する。そのために来年から5年間で5兆円が投入される。

 日本政府は、攻撃能力だけでなく現在の国内総生産(GDP)1%水準の防衛費を、5年後には2%にまで増額することを強調した。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の資料によると、昨年時点での防衛予算が最も多い国は米国(8010億ドル)で、中国(2930億ドル)、インド(766億ドル)などが続く。現在、世界第9位の日本(541億ドル)が5年後に防衛予算を2倍に増やすとなると10兆円を越え、世界第3位に急上昇することになる。韓国(502億ドル)は昨年時点で第10位だ。

 「防衛力整備計画」によると、来年から5年間に約43兆円の防衛費を確保する。現行(27兆4700億円)より1.5倍以上増える金額だ。歳出の構造調整や建設国債の発行などでは足りない約3兆5000億円は、増税で調達する。自民党は2024年以降、法人税・所得税・たばこ税を引き上げることで意見を集約した。

日本の陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾=陸上自衛隊//ハンギョレ新聞社

 このように、日本が安全保障政策の大きな枠組みを変え、大々的に軍備拡大に乗りだすのは、中国の浮上による国際秩序の変化と北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応するためだ。日本政府は「国家安保戦略」で中国と北朝鮮に直接言及し、「我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境のただ中にある」と判断した。

 中国に対しては「十分な透明性を欠いたまま、核・ミサイル戦力を含む軍事力を広範かつ急速に増強し」、「台湾について平和的統一の方針は堅持しつつも、武力行使の可能性を否定していない」とし、「これまでにない最大の戦略的な挑戦」だと規定した。「中国は国際社会の懸念事項」という過去の記述より表現がかなり強まった。これは、米国と北大西洋条約機構(NATO)の対中戦略に歩調を合わせようとするものだ。中国が日本にとっての直接的な脅威になった事例も、国家防衛戦略に具体的に記述された。8月4日に中国が台湾海域周辺で9発の弾道ミサイルを発射し、そのうち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)の内側に落ち、「地域住民に脅威と受け止められた」と明らかにした。

 北朝鮮に対しては「核戦力を質的・量的に最大限のスピードで強化する方針であり、ミサイル関連技術等の急速な発展と合わせて考えれば、北朝鮮の軍事動向は、我が国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威」だと明記した。

 安全保障政策の転換をめぐっては、日本の内部から反発する声も出てくる。市民300人あまりはこの日、東京の首相官邸周辺で集会を開き、「武力で平和を作れない」と訴えた。学者や市民社会で構成された「平和構想提言会議」は15日、国会で記者会見を開き、「(国家安保戦略内容は)日本が自ら戦争する国家に変わるなど、現行憲法で認めることができない内容だ。国民的な議論が必要だ」と主張した。

 米国防総省のパトリック・ライダー報道官は閣議決定前の15日(現地時間)の会見で「我々は、日本の努力を含む我々の同盟国とパートナーが自衛力を強化する努力を幅広く支持するという点を明確にしてきた」と述べ、支持の意向を明確に示した。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1071950.html韓国語原文入力:2022-12-17 07:06
訳M.S

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