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浮かぶ大便と沈む大便、腸内細菌が決める

登録:2022-11-23 09:34 修正:2022-11-23 09:47
排泄物が水に浮かぶか沈むかを決めるのは脂肪ではなくガスの含有量だ。ガスを生成する主人公は腸内細菌であることが明らかになった=ゲッティ・イメージズバンク//ハンギョレ新聞社

 健康のために排泄物の状態を周期的によく見る人なら、時に応じて大便が便器の水に浮かんだり沈んだりするという事実を知っている。これまでは、何を食べたのか、またはどう消化したのかが排泄物の状態を決めると信じられてたが、今後は腸内細菌に注目しなければならないようだ。

 メイヨー・クリニックのサイード・モハンマド・ムシェル・アーラム氏をはじめとする研究者らは「実験用マウスの腸内微生物の群集を研究していたところ、偶然、浮かぶ大便と沈む大便が腸内細菌の集団と因果関係があることを発見した」と、科学ジャーナル「サイエンティフィック・リポーツ」最新号に掲載した論文で明らかにした。

 1970年代まで、浮かぶのか浮かばないのかについては、排泄物内に脂肪がどの程度多く含まれていることによるものだと信じられていた。実際、腸炎や膵臓炎を患い脂肪をうまく分解できない人のなかに、そうした現象がよく現れる。

 しかし、1972年、何の病気にもかかっていなくても10%以上の人は、つねに排泄物が便器の水に浮かぶ事実が明らかになった。それ以降、科学者らは、脂肪の含有量よりガスがどの程度含まれているかが浮かぶかどうかを決めると考えた。

 ガスが排泄物内に多く含まれると比重が小さくなるため、排泄後に浮力が大きくなり、水に浮かぶことになる。しかし、なぜある人の排泄物内にガスがより多く含まれるのかは謎だった。

便が水に浮かぶマウス(左側)の便の高倍率像。中央は腸内細菌がまったくない無菌マウスの便。右側は「浮かぶ」マウスの便を移植した無菌マウスの便=サイード・モハンマド・ムシェル・アーラムほか(2022)サイエンティフィック・リポーツ提供//ハンギョレ新聞社

 米国の非営利学術医療団体である総合病院メイヨー・クリニックの研究者らは、まったく同じマウスのうち一部について、腸内細菌をすべて殺した後、排泄物が浮かぶマウスの腸内細菌を移植する実験を行った。慢性腸疾患に苦しむヒトに元気なヒトの排泄物から抽出した微生物集団を注入する治療法である「微生物群家利息法(FMT)」に似た方法だ。

 研究者らは、腸内細菌をなくしたマウスの排泄物はすべて水に沈むことを確認した(一般的な実験用マウスでは、浮かぶ割合と沈む割合は半々だった)。しかし、排泄物が水に浮かぶネズミの腸内細菌を注入すると、すべて水に浮かぶ方向に変わった。

無菌マウスの排泄物(左側)と普通の実験用マウスの排泄物=サイード・モハンマド・ムシェル・アーラムほか(2022)サイエンティフィック・リポーツ提供//ハンギョレ新聞社

 研究者らは「腸内細菌が排泄物の浮力を左右する現象が、哺乳類全般にわたり現れる可能性がある」と論文に書いた。研究者らは、10種以上の腸内細菌が排泄物のガスを増やす役目を果たすことを明らかにした。

 そのなかで最も多い細菌は卵形バクテロイデスであり、この細菌が増えると、腹にガスが充満したり、腸疾患を起こすことが分かった。研究者らは「排泄物が浮かぶことに関与する細菌の全貌を明らかにし、そうした現象が腸疾患とどのような関連があるのかを解明することは、今後の研究課題」だと明らかにした。

引用論文: Scientific Reports, DOI: 10.1038/s41598-022-22626-x

チョ・ホンソブ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/ecology_evolution/1068306.html韓国語原文入力:2022-11-22 22:23
訳M.S

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