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[寄稿]「貧困ポルノ」、何が問題なのか…憂慮すべきはあなたたちの反知性

登録:2022-11-22 05:29 修正:2022-11-22 09:08
尹錫悦大統領夫人のキム・ゴンヒ女史が12日(現地時間)、カンボジアのプノンペンで先天性心臓疾患の少年の自宅を訪れ、健康状態を見ている。右は似ているとされた俳優オードリー・ヘップバーンの写真=大統領室提供、SNSより//ハンギョレ新聞社

 先日、あるインターネット上のコミュニティーでの「深い(退屈な)謝罪(「深い」を意味する語を同音異義語の「退屈な」と勘違いしたもの)」発言が思いがけない「公憤」を呼び起こしたことで、読解力の低下が社会的な関心を集めた。読み書きがしやすいように作られたハングルに対する自負も相まって、その「事件」が起こるまで韓国人の読解力について疑ったことがあった人は多くはないだろう。ある教師は読解力だけでなく、長期化した非対面や、簡単明瞭な情報ばかりをやりとりするデジタル環境などが、中学生くらいが使いそうな表現ばかりに慣れさせたのだろうと分析する。

 しかし私が注目したのは「深い謝罪」発言を理解できなかった一部の人々の傍若無人な態度だ。悪態と嘲笑混じりの一部の過激な反応には、与えられた情報を理解できなかった時の戸惑いや、好奇心のような何かを理解したり学んだりしようという態度がない。気に入らなければ何であれ腹を立て、ケンカを売るような彼らの態度は、低下した読解力と同じくらい心配だ。大手コンビニのキャンピンググッズの広告や警察庁のポスターに対して「男性ヘイト」だと食って掛かったり、女子大在学中のショートカットの韓国代表選手に対して金メダル返還を要求したりするなどの状況には「度を越した」という表現では足りない何かがある。

 大統領の配偶者に対する今回の野党議員の「貧困ポルノ」発言もやはり難解だったようで、あの荒唐無稽な「男性ヘイト」論争に劣らない与党政治家たちの激しい反応を呼び起こした。10年近く国連難民機関の親善大使を静かに務めてきた俳優について、いきなり彼は「ポルノ俳優」なのかと非難したり、大韓民国のすべての女性に謝れなどととんちんかんな怒りを噴出させたり。彼らが「聞きも問いも」しないで腹を立てるのを予想していたなら、「貧困ポルノ」ではなく「先進国であれば夢にも思わなかったであろうボランティア」、「白人児童に対しては考えることもなかったであろうボランティア」、「抱いている子ではなく遥か遠くを凝視し、その効果にばかり関心を示したボランティア」、「マスクもしないでコロナ感染させるボランティア」などと言うべきだったのか。

 『急進の20代』の著者のキム・ネフンは、いわゆる「イデナム(20代男性)」のフェミニズムに対する「極嫌」について、フェミニズムのことをきちんと知りもせずに、その名に対してのみ「大嫌い」な感情を抱いていると分析する。新しくて馴染みのない概念や現象に対する好奇心から、その意味するところをじっくりと学ぼうという真剣な努力ではなく、まず嫌悪、嘲笑、怒りを表現するというのだ。意味を知ろうとしないから、フェミニズムについての議論は、今回の「貧困ポルノ」に対する与党政治家の反応からも分かるように、論旨を逸脱して全く関係のない論理へと頻繁に変質するのは当然だ。このように考えると、ある理論や概念について意味を理解しようと努力することもなく、まず怒りの感情を表出し、権力感と政治的自己効力感を味わおうとする者は、20代の一部の男性ばかりではない。

 民主化の主役だと言いながら性差別や性暴力には無関心な政治家、自由と法治を語りながら言論の自由や性平等は眼中にない政治家、国民だけを見ると言いながら国民の安全と生命には責任を取らない政治家、青年男性を代弁すると言いながらフェミニストを「フェミナチ」とさげすむ政治家、フェミニズムは男性を潜在的加害者だと考えているというフェイクニュースで男性をたきつける政治家。このように1987民主化体制以降でさえ、意味の分からない華麗な発言、空言だけでも政権を交替し、権力を握り、威張り散らし、虎の威を借ることが可能だった韓国社会の反知性主義の政治史は、貧困ポルノの「寓話」によっても例外なく繰り返された。

 韓国より貧しい国だからこそ可能だった非公式の「ボランティア活動」、白人の人種主義を精一杯真似して東南アジアの児童を抱いた「白い」肌の大統領の配偶者、抱いている子ではなく自分に心酔した視線をもとらえたその1枚の写真は、まったくもって「貧困ポルノ」以上でも以下でもない。だから政治家たちよ、大韓民国の女性はもちろん、難民のために奉仕してきたあの俳優の名誉は限りなく高く、いかなる政治家も決して傷つけることはできないのだから、配慮するふりをして声を張り上げることなかれ。その代わり、意味も知らないくせに自由、民主主義、性平等、生命、責任、省察などを口にできる「無知だからこそ勇敢たりうる」あなたたちの反知性を振り返ってみることを、心から願う。

//ハンギョレ新聞社

ナ・イム・ユンギョン|延世大学文化人類学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1068243.html韓国語原文入力:2022-11-21 19:09
訳D.K

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