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日本の学者「ハングルは『科学的文字』それ以上…K-POPは『宇宙アート』の創造」

登録:2022-10-20 06:37 修正:2022-10-20 07:35
韓国語学者の野間秀樹・前明治学院大学客員教授//ハンギョレ新聞社

 10年前、ハングル学会の「周時経(チュ・シギョン)学術賞」を受賞、話題を集めた日本の学者がいた。彼の受賞図書である『ハングルの誕生』(トルベゲ)はその間、国内外のハングル研究者たちの間で「必読書」としての位置を占めた。野間秀樹・前明治学院大学客員教授が、韓国語版刊行11年ぶりに改訂増補版を刊行した。

 「一言で言って、ハングルの位置が完全に変わりましたね。非常に高まりました。何よりも地球上で多くの人がハングルに接する機会が、増えました」

 9日、聯合ニュースとのオンラインインタビューで野間前教授は改訂版を出した理由としてこの10年間のハングルの位相の変化を強調した。彼は「改訂版が出たということは、それだけ愛されたということなので、感慨深い」と述べ、「ハングルの位置が変化した分だけ、新たに書き起こさねばならないところも増えた」と語った。

 改訂版ではまず「文字という奇跡」であった副題が「人間にとって文字とは何か」へと変わった。言語と文字をハングルを通じ再び凝視しつつ、真の意味を求めようという意図だという。「初版は日本語圏で未だハングルを知らない方が多かったので、やや啓蒙的な記述が少なくありませんでした。ところが今はハングルの認知度が完全に高まっているので、文字の本質のようなことも語ることができたわけです」

 彼は「ハングルの最大の長所であり、魅力は、文字それ自体の論理性、そして文字の背景にある知的な世界」だとし、「しばしば世界で最も科学的だとか、一番だなどと言うけれども、そんな水準を超えている」と述べた。さらに「いまやハングルの知的な世界を我々が新たな時代にどれだけ言語化できるかが核心」であるとし、「これからはハングルと韓国語が世界の文化を先導していくこともありうると見ている」とも付け加えた。

『ハングルの誕生』の2022年改訂増補版の表紙=トルベゲ提供 //ハンギョレ新聞社

 改訂版で今一つ目を引く変化は、彼自身を紹介し「韓国と日本双方の血を嗣ぐ」という一文を加えていることだ。「解放前に日本へ来た母の故郷は咸鏡道だ」と明らかにした。

 日本で生まれ育ち、東京教育大学で芸術学を専攻し、「現代日本美術展」で入賞していた彼が、韓国語学者にまでなった理由と、流ちょうな韓国語の秘訣が、ついに確認されたことになる。2012年、本紙とのインタビューで彼は「ハングルの魅力に魅せられ、ハングルの学習テープを擦りきれるまで聴き、本と学術論文まで漁って独学した。やればやるほど疑問が積もっていくのだが、参考になるような資料も本もなかったし、その頃出会える韓国の人もなく、1983年に30歳で東京外国語大学の朝鮮語学科に入った」と語っていた。

 1996~1997年、ソウル大学の韓国文化研究所特別研究員として過ごした彼は、『日本語とハングル』など多くのハングル関連の著書と数十編の論文を発表した功労により、2005年、大韓民国文化褒章を受章した。2007年から韓日の関連学者60人が執筆した、全4巻の韓国語教育の叢書『韓国語教育論講座』の編著者でもある。2010年に日本でまず出した『ハングルの誕生』で毎日新聞社とアジア調査会が主管する「第22回アジア太平洋賞」も受賞した。

 彼は本の中で日本政府の朝鮮学校の生徒たちに対する公公然たる差別と抑圧に、言語学者として断固たる所信を明らかにしている。

 「ハングルという文字の現在はこのように、差別と抑圧に抗する崇高なる闘いが築き上げてきたものである。言語は、そして言語教育は、個人が有する固有のものとして、無条件に尊ばれなければならぬ権利である。言語そして言語教育はこの点において人が人として生きる根幹に係わっている。試みに想像してみよ。他の言語圏において日本語を学ぶ子供たちの前で、拡声器を持った大人たちが現れ『スパイの子供だ』と叫ぶ姿を、あるいは日本の伝統的な衣装である浴衣を着て出かけた少女たちが、服を裂かれる辱めを受ける姿を」

 1945年の解放後、国語講習所から出発した朝鮮学校は、かつては日本全域で160カ所に達したが、近年は60余箇所へと、大きく減った。1994年には朝鮮学校の女生徒の制服である「チマチョゴリ」が切り裂かれる事件が、日本各地で起こりもした。2009年には京都朝鮮初級学校の小学生たちの前で民族排外主義を掲げる極右の日本人たちが「ヘイトスピーチと政治扇動」を繰り広げた事件もあった。2010年代に入っても、高校の授業料無償化の対象から朝鮮高校は除外され、日本の司法さえもこれを正当化し、肩入れしている。

 彼は聯合ニュースとのインタビューで、こうした見解を明らかにするのは、容易なことではないだろうという問いに、「歴史の中で記録されねばならない」と淡々と答えた。

 野間前教授は、11月末に刊行の、また異なった本を紹介している。世界的に旋風を起こしているK-POPを言語学と美学の視点から照らした『K-POP原論』である。

 彼はK-POPミュージックビデオとそこに現れる韓国語を集中的に分析している。「IVEというグループの歌は、韓国語の濃音(韓国語の子音群の一種)によく現れる声門閉鎖を、濃音の発音がないところで見事に駆使している。またITZYは日本語にはない音の高低で日本語の歌を歌って、新鮮な刺激を与えている」。この新しい本にはQRコード150個を付し、読者がK-POPの音楽を聴きながら読む楽しみを加えている。「K-POPは一つの音楽のスタイルやジャンルを超え、巨大な『Kアート』という宇宙を作っています。音楽や美術などあらゆる芸術はもちろん、経済もK-POPに嫉妬していると言っても、過言ではありません。この本は新たなる体験になると思います」

キム・ギョンエ記者、聯合ニュース (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1062900.html韓国語原文入力: https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1062900.html

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