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「強制動員判決の肝は『違法強占』…日本は支配者の認識を捨てるべき」

登録:2022-09-23 02:27 修正:2022-09-23 11:55
キム・チャンノク教授は1996年から論文の執筆、講演、意見書提出、法廷での証言など様々なかたちで韓日の歴史清算に努めてきた=キム・チャンノク教授提供//ハンギョレ新聞社

 『最高裁の強制動員判決:核心は「違法強占」だ』(知識産業社)

 慶北大学法学専門大学院のキム・チャンノク教授が、日帝強占期(日本による植民地期)の強制動員の韓国人被害者に対する賠償を日本の加害企業に命じた4年前の最高裁判決の意味を指摘し、その波紋についての自らの見解を明らかにした著書だ。同判決後、日本政府は1965年の韓日請求権協定に違反するとして、韓国に対して通商攻撃すら行い、その結果、韓日関係は急速に冷え込んだ。

 日本の憲法思想史の研究で1994年にソウル大学で博士号を取得した著者は、1996年に日本軍「慰安婦」をテーマとした論文を発表したことを機に、論文執筆、講演、意見書提出、法廷での証言など様々なかたちで韓日の歴史の清算に努めてきた。

「違法強占問題は依然として残っているという宣言」

 同氏は本書の序文で「最高裁判決の核となるメッセージは『日帝による朝鮮半島支配は違法な強制占領であり、違法強占は韓日請求権協定の適用対象ではない』というものだが、残念ながらこの核となるメッセージは、日本はもちろん韓国でもほとんど注目されていない」と述べている。

 キム教授は本紙の取材に対し、13日に電子メールで回答を寄せた。本紙は著者に、まずなぜ最高裁判決の核心が「違法強占」なのかを尋ねた。

 「最高裁はこの判決で、違法な植民地支配と直結する反人道的な違法行為を前提とする請求権は、1965年の韓日請求権協定の適用対象ではないと釘を刺しました。言い換えれば、違法強占にともなう問題は解決されたことがなく依然として残っているから、解決しなければならないということです。この宣言の意味はとても大きい。違法強占による問題は被害者個人の請求権のレベルにとどまらず、国家間でも解決しなければならない課題だということを意味するからです」

 同氏は最高裁判決について「1965年以降の長年の課題に対する回答」だとも語った。「(日帝の植民地支配が)違法強占なのか合法なのかは1965年の韓日が解決せずに放置していた長年の課題です。韓国人の強制動員被害者たちは1990年代初めから日本の責任を追及するために訴訟を起こし、日本での訴訟まで加えれば30年近い法廷闘争の末に最高裁で勝訴確定判決を勝ち取りました。この期間に数多くの法的争点が争われましたが、最後に残ったのが『請求権協定によって解決されたのか』ということでした。これに対して最高裁は『違法強占にともなう被害は請求権協定の適用対象ではない』と宣言したのです」

 同氏は「日本政府が最高裁判決に強く反発する中心的な理由も、違法強占だと認めることはできないということ」だとし、「最高裁判決に続く日本政府の反発は、1965年以降の長年の課題を解決しなければ韓日の真の友好は不可能だということを確認させてくれた」とも語った。「日本政府は『植民地の支配者』の認識から脱し、違法強占であったことを認めなければなりません。それを出発点にしなければ『日韓の友好』は不可能です。韓国政府は最高裁判決で再び確認された大韓民国の基本的な立場を広く知らしめ、貫徹することに努めなければなりません」

キム・チャンノク教授の近著の表紙//ハンギョレ新聞社

 しかし同氏のみるところ、韓国政府は「深刻なことに、最高裁判決について明確な態度を示すことに失敗している」。「尹錫悦政権は(法に則った)日本企業の国内資産の現金化とは異なる方法で事態を解決しようとしているようにみえます。日本政府が指し示す方向へと韓国政府が動くということは、最高裁判決を否定し、違法強占であることを否定し、結局は大韓民国の憲法を否定する結果になります」

 どうするべきか。「最高裁判決は、一次的には韓国人個人と日本企業という私的主体間の個別紛争に対する判断です。したがって判決どおりに執行すれば一段落します」。同氏はまた、韓日関係をめぐる現在の事案は「歴史の問題」だとし、「韓国政府はその重さにふさわしく、長い目でみて慎重にアプローチすべき」だと語った。「現金化するならば韓日関係を破綻させるという日本政府の態度は、最高裁判決はもちろん、その核である違法強占であることは認められないという前提から出発したものです。(韓国政府は)歴史の前では謙虚であるべきです。中途半端な解決をしようとしてはならないし、することもできません。2015年の日本軍『慰安婦』問題についての韓日外相合意がどれほど多くの不必要な混乱をもたらしたかを繰り返し考えるべきです」

「『徴用』という単語も不適切…合法だったという日本の認識」

 著者は本書で、韓国メディアなどが広く使用する「強制徴用」という言葉の不適切さも強調した。この用語は「違法性を内包する『強制』と合法性を前提とする『徴用』をつなげた『形容矛盾』を起こしているうえに、法的に鋭く対立する問題の本質も曇らせうる」ということだ。

 「強制動員と徴用は法的根拠が全く異なる別の概念です。最高裁判決は、日帝の朝鮮半島支配は違法強占であり、したがって『徴用』の根拠法である『国家総動員法』と『国民徴用令』の効力も認められないから、日帝が朝鮮半島の人々を連れて行って働かせたのは何の法的根拠もなしに強制連行して強制労働させたもの、つまり強制動員であると宣言したのです。しかし日本の政府とメディアは、意図的に『徴用工』という用語だけを使います。『国家総動員法』と『国民徴用令』にもとづいた『徴用』制度は『合法』だったのだから『強制動員』そのものを認めることはできないというのです。2つの用語は、このように日本の朝鮮半島支配の基本的性格についての認識の違いを反映しています。大韓民国の公式の立場である『違法強占』という前提の上に立つなら、当然『強制動員』という用語を使わなければなりません」

カン・ソンマン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1059779.html韓国語原文入力:2022-09-22 19:50
訳D.K

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