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明洞の街に貼り出された「空き店舗」…自営業の負債、韓国経済の雷管に

登録:2022-04-09 02:38 修正:2022-04-09 07:54
コロナの大流行に伴う防疫措置により売り上げが不振にあえぎ、高価な家賃に耐え切れなかったことで、大韓民国を代表する商圏であるソウル明洞の空室率は50%を超えた。「空き店舗」と記された大きな紙が貼り出されている/聯合ニュース

 新型コロナウイルスの大流行が続いたことで、大韓民国を代表する商圏であるソウル明洞(ミョンドン)の空室率が50%を超えた。2019年までは空き店舗は見られなかったにもかかわらず、社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)などによる売り上げ不振のせいで高価な賃貸料に耐え切れなかったのだ。人であふれかえっていた明洞の通りに「空き店舗」の表示が並んでいる様子は、まるで見知らぬ街のようだ。光化門(クァンファムン、23.0%)、南大門(ナムデムン、14.5%)、鍾路(チョンノ、10.8%)など、都心の中・大規模商店街の空室率(2021年末現在で17.5%)も状況に大きな違いはない。

 政府は数回にわたって自営業者対策を打ってきた。2020年4月から小商工人向け融資の満期の延長と返済猶予措置を6カ月単位で3回延長し、オミクロン株の拡散などに伴って2022年3月にそれを再び延長した。自営業者向け融資の満期延長と返済猶予の残高は、2021年末現在で130兆ウォン(約13兆1000億円)を上回る。

 2021年第4四半期からは、家賃や人件費などの負担を軽減するとともに、生計を支えるため、小商工人に1次(100万ウォン=約10万1000円)と2次(300万ウォン=約30万3000円)にわたって320万社に16兆ウォン(約1兆6200億円)ほどの防疫支援金を支給し、体温測定器などの防疫用品も補助している。これとは別に、2021年第4四半期には、ソーシャル・ディスタンシングによる集合禁止、営業時間制限、人員制限措置を履行した小企業・小商工人のうち、売り上げが減少した約90万社に対しても、2兆2000億ウォン(約2220億円)ほどの損失補償金を支給している。

相次ぐ融資延長と返済猶予

 コロナ禍以降、自営業者の所得は低迷しているが、負債が急速に増加していることから不良債権化の懸念が高まっている。韓国銀行の2021年12月の金融安定報告書によると、2021年9月末の自営業者向け融資の規模は257万人、890兆ウォン(約90兆億円)に達し、自営業者1人当たり3億5000万ウォン(約3540万円)にのぼると推定される。自営業者向け融資の増加率も2021年第4四半期には対前年同期比で14.2%を記録し、家計向け融資(10.0%)より増加が早い。業種ごとに見ると、卸・小売業(12.7%)、余暇・サービス業(20.1%)などで高い増加率を示している。一方、自営業者の売り上げはコロナ禍以降、宿泊・飲食業などの対面サービス業を中心として不振が続いている。2021年10月の宿泊・飲食業の生産は2019年末の89.8%、余暇・サービス業は72.8%にとどまっている。

 2022年8月以降、政策金利が0.5%から1.25%へと0.75ポイント引き上げられたことで、利子もかなり大幅に増えた。当面は政府による融資満期延長や利子返済猶予措置などで危機を免れているが、急速に増えた元金と利上げによる利子負担が脆弱・高危険自営業者を債務不履行に陥れる恐れがある。一方、自営業者数は、2019年末の668万人(無給の家族従事者を含む)から2022年1月の633万人へと35万人ほど減少しており、とりわけ従業員を持つ自営業者は154万人から135万人へと19万人減少している。

 韓国の自営業者の流れを概略的に見ると、1970~80年代の経済成長過程で都市に移住した人々は賃金労働者となるか、小売業や宿泊・飲食業などの自営業者として定着した。賃金労働者は1983年に700万人、2018年には2000万人を超えるなど、国際通貨基金(IMF)の経済危機に見舞われた1998年を除けば着実に増えていった。

 自営業者(無給の家族従事者を含む)も五輪が開催された1988年に500万人を超え、1998年の構造調整の過程で押し出された賃金労働者が自営業市場に参入したことで、2002年には800万人を超えた。しかし2003~2004年のクレジットカード事態による内需低迷、大型ディスカウントストアの拡大、フランチャイズの拡大、情報技術の発達などで、現在まで減少傾向が続いている。特にコロナの衝撃の中で実施されたソーシャル・ディスタンシングなどの防疫指針に伴って、卸・小売業、飲食・宿泊業、余暇・サービス業などの対面サービス業種を中心として減少がみられる。

軟着陸対応策をまとめるべき

 経済成長の初期から自営業を営んできた世代とIMF経済危機後に自営業市場に参入した世代は、もはや高齢化していると評価される。2009~2021年の自営業者の年齢の変化を見ると(農林漁業を除く)、15~39歳が130万人から96万人に、40代が200万人から130万人に減っている一方で、60代以上は70万人から135万人に増えている。2009年には60代以上の割合は12.6%に過ぎなかったが、2021年には26.1%と13.5ポイント上昇している。しかし40代以下は59.4%から43.6%へと15.8ポイント減少している。今後、ベビーブーム世代と高齢層の自営業者は徐々に労働市場から退出すると予想される。

 韓国の自営業者の割合は、コロナ禍以前から世界の主要国より高いと懸念されていた。2020年現在で国内の就業者に占める自営業者の割合は24.4%で、日本(10.0%)、フランス(12.4%)、ドイツ(9.2%)、米国(6.3%)に比べて非常に高い。ギリシャ(31.9%)、トルコ(30.2%)、メキシコ(30.4%)は韓国より自営業者の割合が高いが、主要観光国であるという共通した特徴がある。

 自営業者の割合は今後、様々な要因によって主要先進国の水準にまで低下する可能性が高い。短期的に自営業者はコロナ禍の影響による売り上げ不振、金利引き上げによる債務返済能力の低下などにより危機に陥る恐れがあるため、政策当局は脆弱・高危険自営業者に対する対応策を講じなければならない。長期的には、高齢化が急速に進んでいる自営業者の軟着陸を誘導する一方、安定的に生計が維持できるようセーフティネットを構築しなければならない。

キム・ヨン|金融専門家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1037883.html韓国語原文入力:2022-04-07 08:59
訳D.K

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