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[インタビュー]WTO事務総長に挑戦したユ・ミョンヒ氏、来月から大学の教壇に立つ

登録:2022-02-21 10:09 修正:2022-02-21 13:58
今月15日、産業通称資源部のユ・ミョンヒ前通商交渉本部長が法務法人サミャンの会議室でインタビューに応じている=イ・チュンジェ先任記者//ハンギョレ新聞社

 2020年夏、産業通商資源部のユ・ミョンヒ前通商交渉本部長が世界貿易機関(WTO)事務総長出馬に挑戦したのは「卵で岩を砕くようなもの」だった。現事務総長のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ元ナイジェリア財務相は、アフリカ加盟国44カ国と欧州連合所属の複数の加盟国から全面的な支持を受けていた。米通商代表部(USTR)がユ前本部長を公開支持したが、WTOは国連のように分担金を多く出す国の影響力が強いわけではない。164の加盟国が同等に一票を行使する。事務総長には選ばれなかったものの、ユ氏の挑戦は海外の通商専門家から好評を得た。韓国が自由貿易を通じて経済成長を成し遂げた過程に、多くの人々が共感を示した。

 今月15日にインタビューしたユ氏は「昨年8月に公職を離れる際、交渉パートナーだった海外の通商官僚たちが電子メールを送ってくれ、激励してくれた」とし、「WTO事務総長への出馬は私にとって大きな資産になりそうだ。多くの後輩たちに挑戦してもらいたい」と話した。

 ユ氏は後輩たちを育てるために、3月から大学の教壇に立つ。ソウル大学国際大学院で「新通商イシューと対応」をテーマに講義する。通商分野で30年間積み上げてきた経験やノウハウを企業各社と共有するために、最近、国内の小さな法律事務所(法務法人サミャン)に席を置いた。ユ氏は政府の経済通商分野の外交活動を支援する経済通商大使としても活動している。

-通商分野だけで30年間公職生活をした。格別な思いがあるのでは。

 「行政高等公務員試験(35期)合格後、1994年に通商産業部で仕事を始めた時から昨年退職するまで、通商分野一筋だった(笑)。2006年の韓米FTAの初交渉の時は課長級で、2018年の再交渉の時は首席代表として参加した。国際通商には一筋の専門家が必要だ。海外交渉に出ると、数十年間積んできた人的ネットワークを持った人々が大勢いる。彼らは交渉パートナーとして個人的に親密な関係を結んでいる。互いについてあまりにもよく知っているため、厳しい交渉も円満に進めることができたようだ」

-大学の講義でも一筋でいく専門人材を育てようとしているのか。

 「そうだ。とくに女性の後輩を育てたい。国内の通商分野はかつて男性の専有物だった。30年前、海外の交渉テーブルに出ると、他の国々は女性の人材が非常に多かった。唯一、韓国と日本だけが黒スーツ姿の男性たちで、私が唯一の女性だった。その時『いつか公職を辞めた後には女性の後輩を育てる仕事をしなければ』と思った。昨年11月に米通商代表部のキャサリン・タイ代表が訪韓した際、『韓国の女性の人材と話しを交わしたい』という連絡が来た。ちょうど私が通商分野で活動している後輩たちと数年前から私的な勉強会を開いていた。それでタイ代表の方に勉強会を紹介したところ、とても喜んでいた。当初1時間の予定だった対話が、2時間近く進められた。タイ代表は、他のスケジュールを押してまで対話を続けたがっていた。私と後輩たちにとってとても有益な場だった。これからもこうした機会をもっと多く作りたい」

「米国の炭素規制には中国牽制の狙いがある 
米中貿易対立の本質は「覇権争い」 
韓国はどちらかにつくよりも核心技術の確保が重要」 
 
通商分野だけで30年間公職生活 
2年前に「WTO事務総長」に出馬 
来月から大学で「通商イシュー」講義

-昨年、世界的にカーボンニュートラル(炭素中立)が重要なイシューに浮上した。

 「カーボンニュートラルは今後新たな貿易の壁になりそうだ。きちんと対応できなければ、韓国のような輸出中心国には大きなリスクになるだろう。昨年7月、フランスのティンマーマンスEU上級副委員長(グリーンディール担当)が訪韓した際、こんな話をした。自分が欧州の財界で一番人気のない政治家だと。炭素排出規制で欧州の企業の価格競争力が落ち、エネルギー価格が急騰したため、欧州でも産業界を中心にカーボンニュートラルに対する抵抗が大きいということだ。このように苦労してカーボンニュートラル経済体制を作ったからこそ、他の国々にも厳格な基準を適用しないわけにはいかないということだ。EUが導入しようとしている炭素国境調整税などは、今後新たな貿易の壁となる可能性が高い。米国も、バイデン政権が中国を牽制するためにカーボンニュートラル関連の規制を強化する考えだ。『中国の汚れた鉄鋼を入れない』というバイデン大統領の発言がこれをよく示している。米国はカーボンニュートラルで『1石3鳥』の効果を狙っている。鉄鋼など米国内の主要基幹産業を保護すると同時に、気候危機に対応する国際的努力に協力するイメージ向上効果がある。また、鉄鋼などは選挙で競合地域である『スイングステート』の主要産業であるため、世論を友好的にする効果もある。米国と欧州がカーボンニュートラルの方向に産業構造を変えているため、これに対応できない国々は新たな貿易の壁に直面することになるだろう」

-米中の貿易対立はいつまで続くと思うか。

 「今後かなりの期間続くとみるべきだ。これは単なる貿易紛争ではなく、次世代の覇権争いだ。米国の学界で最近出ている報告書によると、このままでは5Gと量子コンピューター、人工知能(AI)など先端技術分野で中国がリードするという見通しが多い。このような技術は、いつでも軍事技術として転用できる。先端技術を支配する国が世界覇権を占めるようになるということだ。そのために米国の警戒心が大きくならざるを得ない。米国の先端技術のサプライチェーンから中国を排除しようとする試みは相当長くなるのは避けられない」

-韓国はどのように対応すべきか。

 「米国と中国のどちらかにつくよりもっと重要なのは、核心技術を確保することだ。韓国が次世代技術で競争力を確保すれば、米国と中国のいずれも韓国を無視したり排除することはできない。半導体技術の競争力があるからこそバイデン大統領が韓国企業を訪問したようにだ。同時に、我々が目指す価値、つまり市場経済・自由貿易・開放経済・公正な貿易などの価値を確実にすることも重要だ。今はWTOのような多国間貿易規範にない規制が登場する時代だ。経済的要因の他に、環境、労働、人権、そして地政学的安全保障など、非経済的な要因で生じる規制が国ごとに発生する。このようなリスクにあらかじめ備えなければならない」

イ・チュンジェ|ハンギョレ経済社会研究院先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1031820.html韓国語原文入力:2022-02-21 02:31
訳C.M

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