北朝鮮が今年に入って、矢継ぎ早にミサイル発射実験を行っている。5日と11日の極超音速ミサイルを皮切りに、14日には線路上の列車から「北朝鮮版イスカンデル」(KN23)を、17日には短距離戦術ミサイルを発射した。
いったい北朝鮮はなぜこのような動きを続けるのか。アントニー・ブリンケン米国務長官は「我々の関心を引くために、ミサイル発射実験を繰り返している」とし、「以前もそうしてきたし、これからもそうするだろう」と述べた。これは、バラク・オバマ政府時代、国務長官だったヒラリー・クリントン氏が好んで使った表現だ。
ところが、どうも腑に落ちない点がある。オバマ政権の対北朝鮮政策は「戦略的忍耐」だった。米国側は当時、対話と関連し北朝鮮に難しい条件を掲げ、朝米対話の敷居を高めた。そのため、北朝鮮が米国を対話のテーブルにつかせるためにミサイル発射で関心を引こうとしたという診断は一理あった。一方、バイデン政権は「戦略的忍耐」との決別を宣言し、北朝鮮に条件なしの対話を提案している。「いつどこでもあらゆる問題について話し合う用意がある」とし、「対話の扉は開かれている」と強調している。北朝鮮のミサイル発射実験を「米国の関心を引きつけるため」と規定したブリンケン長官は状況判断を誤っているのではないかと思われるのもそのためだ。
一方、韓国政府と与党では、北朝鮮の相次ぐミサイル発射実験が3月9日の大統領選挙に及ぼす影響に神経を尖らせている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮のミサイル発射に対して「懸念」を表明した理由の一つに「大統領選を控えた時期」という点を挙げた。共に民主党のイ・ジェミョン大統領候補は「韓国側の政治地形に影響を与えており、特定陣営の利益になるのは明らかだという点を明確に指摘する」と糾弾の声を高めた。
これもいまいち腑に落ちない。確かに、北朝鮮のミサイル発射で安保危機が高まった場合、得をするのは国民の力のユン・ソクヨル大統領候補かもしれない。ならば北朝鮮は、韓国側の(南北関係において)保守的かつ強硬なスタンスの大統領選候補を助けるため、ミサイル発射実験を続けているのだろうか?うなずく人はそう多くないだろう。
米国の関心を引こうとするわけでもなく、韓国の大統領選挙に影響を及ぼそうとしているわけでもないなら、北朝鮮の意図は何だろうか。北朝鮮が昨年から強調してきた二つの表現から、その答えを見つけることができる。「軍事力のバランス」と「戦争抑止力」がそれだ。すなわち、軍事的敵対関係にある韓米日を相手に最大限の軍事力バランスを取って戦争を抑制するのが北朝鮮の根本的な意図であり、目標であるという意味だ。
これは「知彼知己(彼を知り己れを知る)」を通して優に推測できる。韓米日は北朝鮮の核とミサイル能力だけに注目するが、韓米同盟と米日同盟の軍事力は北朝鮮を圧倒する。ここのところ韓国と日本の軍事力も飛躍的な成長を遂げている。2017年に世界12位と評価された韓国の軍事力は、最近世界6位に跳ね上がった。特に「キルチェーン-韓国型ミサイル防御体制-大量報復」で構成された3軸システムが強化された。専守防衛の原則を掲げ攻撃用兵器の導入を控えてきた日本も、「敵基地攻撃論」を既成事実化するなど、変化を見せている。
これに対抗して、北朝鮮は核とミサイルに「選択と集中」をしながら、新型ミサイルを保有することで軍事力のバランスと戦争抑止力を維持しようとしている。北朝鮮が最近発射しているミサイルの特性からも、これを確認することができる。極超音速ミサイルは韓米日のミサイル防衛体制(MD)を無力化しようという意図を、潜水艦や列車から発射するミサイルは発射プラットフォームを多様化し、2次攻撃能力を確保するという目的を持っている。
では、北朝鮮の暴走を止める方法は何だろうか。対北朝鮮制裁の強化や先制攻撃論では阻止できない。終戦宣言や対北朝鮮支援の意思表明でも不十分だ。ならば、ほかに何が必要だろうか。北朝鮮の武器庫に劣らず、自分たちの武器庫に積まれていく先端兵器も顧みる知恵が、韓米日に求められている。