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Kリーグ2の日本人選手の感動ストーリー「私は敗北者ですが…人生かけてます」

登録:2021-11-01 01:42 修正:2021-11-01 11:28
石田雅俊(登録名「マサ」)。大田ハナシチズン提供//ハンギョレ新聞社

 現代スポーツは華やかなサクセスストーリーであふれている。スポーツスターたちはSNSに高価な車や贅沢なパーティーを公開し、メディアはそのことばかりに光を当てる。選手が稼ぐ金がすなわちその選手の価値になる。そんな時代に「自分は敗北者」という告白で一気にファンの心をつかんだ選手がいる。Kリーグ2大田(テジョン)ハナシチズンの石田雅俊(26、登録名マサ)がその主人公だ。本紙は書面で石田雅俊選手(以下、マサ)にインタビューした。

 日本出身のマサは高校サッカーの有望株だった。2014年、京都サンガFCに入団したものの、定着できずにレンタル移籍でチームを転々とした。結局、2019年に追い出されるようにして韓国へ。Kリーグ2の安山(アンサン)グリーナスに移籍した。言葉も通じない不慣れな土地。チームには通訳もいなかった。「何も知らない状態で来たので、不安な気持ちが大きかった」時代だった。

 マサは切迫していた。「ここでも失敗してはならないという覚悟を固め」、新たな環境に適応しようとした。韓国サッカーは、彼が日本で学んだものとは全く違っていた。「サッカーについての理解も、プレースタイルも」全面的な変化が必要だった。韓国語の勉強も欠かせなかった。通訳がいなかったのでやむを得なかったという面もあるが、何より「学ばないと発展できない」と思ったからだ。

マサ(左)がチームメイトのパク・ジンソプと韓国語の学習について話している=YouTubeチャンネル「ハナTV」より//ハンギョレ新聞社

 懸命に努力したものの、現実は苛酷だった。試合に出られない日が増えた。特に「1カ月半ほど試合に出場できなかったことがあって、そのときは本当にサッカー人生が終わったと思った」という。悲壮な気持ちで「映像を見て本当に深く分析し、どうすれば自分が変われるのか、ゴールを入れられるのか、ずっと考えていた」と語った。

 まっすぐな彼の努力に天も感動したのだろうか。ある瞬間「自分はこれまで勘違いしていたことに気づいた」という。その瞬間を迎えた彼は「その足で監督のところに行き、『活躍できなかったら解雇してもいいから、出してほしい』と言った」と振り返った。「本当に活躍できそうだと確信したから」だった。こうしてようやく得た機会。マサは最後の13試合に9ゴールを集中し、逆転ドラマの主人公となった。彼の「サッカー人生のターニングポイント」だった。

マサが、大田ハナシチズンのイ・ミンソン現監督が1998年フランスW杯アジア最終予選の韓日戦で逆転ゴールを決め、「東京大勝」を完成させる映像を見ている=ハナTVより//ハンギョレ新聞社

 シーズン終盤の活躍により、彼はKリーグ2水原(スウォン)FCに移籍した。27試合で10ゴールを決めて、チームに1部リーグ昇格をもたらした。2部リーグ最高のゴールゲッターとなったマサは、今季を前に1部リーグの江原(カンウォン)FCに移籍した。人生がおとぎ話だったなら、その後のマサには幸せな未来ばかりが広がっているはずだった。しかし、現実はそれほど甘くはなかった。マサは開幕戦の前半開始わずか5分で得点チャンスを逃したばかりか、負傷までした。以後、9試合無得点にとどまった。

 「とても苦しい時」だったが、あきらめはしなかった。「困難を克服するために努力」し、夏の移籍市場でのレンタル移籍で2部リーグ大田へ。2部リーグに戻ってきたマサは、チーム昇格のために走り続けた。ついに彼は今月10日、韓国の最初の所属チームだった安山(アンサン)との対戦でプロデビュー後初のハットトリックを決め、チームを勝利に導いた。

 人生で最高のプレーを繰り広げたマサは、その日のインタビューで「昇格を望むファンに一言お願いします」との求めに対し、韓国語で「私は個人的に、これまでのサッカー人生では敗北者だと思います。それでも、このように毎試合人生を変えうる競技があって…。とにかく昇格、それに人生をかけてやっていきます」と語った。まるで日本の少年漫画の主人公のように、本心がまっすぐに込められた答えだった。

大田ハナシチズンのマサが10日、大田のハンバッ総合運動場で行われたKリーグ2-2021対安山グリーナス戦での勝利後、インタビューを受けている=ハナTVより//ハンギョレ新聞社

 マサのインタビュー映像は一気にファンの関心を集めた。マサの誠実さや韓国語を学ぶ努力などが知れわたったことで、さらに話題になった。ある放送局のユーチューブチャンネルで、すでに照会数が123万回を超えているほどだ。人々は彼の言葉に慰められ、勇気をもらい、改めて彼にエールを送った。つらい生活に疲れた人々は、日本から来たサッカー選手、いや、ひとりの人間のまっすぐな告白に夢中になった。「これこそまさにスポーツだ」、「生きていく勇気をもらった」など、熱い反応が相次いだ。

 普段は性格上、自分の映像は見ないというマサ。あのインタビューが「これほど話題になるとは思ってもいなかった」と語る。彼は「試合後、多くのファンの皆さんがメッセージを通じて、あなたは失敗者ではないと温かい声援を送ってくださった。感謝している。さらに最善を尽くす姿で応えたい」と話した。

 マサはまた、「人生に完全に成功したと言える人は、多くても5%ぐらいだと思う」とし、「誰もが、自分の置かれている環境の中で時間を無駄にせずに、これから自分がどのように進んでいくべきか常に考え、それを実践へと移すことが重要だと思う」と勇気を与えてくれる言葉を語った。また「ファンの皆さんに楽しんでもらえるようなサッカーをしたい。目標達成に向かって最善を尽くしているので、ファンの皆さんも競技場に来て、我がチームが頑張れるよう応援してほしい」と訴えた。

大田ハナシチズンのマサ(左)が23日、大田ハンバッ総合運動場で行われたFC安養との試合で得点後のセレモニーを繰り広げている。この日マサは2ゴールを決めてチームを勝利に導いた。後ろにファンが彼のインタビューを引用した横断幕が見える=大田ハナシチズン提供//ハンギョレ新聞社

 「石の上にも3年」という日本のことわざがある。諦めずに努力すれば福が訪れるという意味だ。韓国生活3年目。マサは今季、大田で13試合に出場し、すでに9ゴールを決めている。ハットトリックを記録した33ラウンドとマルチゴールの活躍をした35ラウンドでは、ラウンド最優秀選手(MVP)にも選ばれた。マサの活躍で大田は底力を発揮し、リーグ3位(勝ち点58)にまで上昇。昇格を狙える位置にいる。

 マサの切なる願い通り、大田は今シーズン昇格に成功できるだろうか。誰にも断言はできない。ただ、ひとつ確かなのは、マサは彼の約束通り、これからも人生をかけて毎試合プレーするだろうし、多くの人々が彼を応援するだろうということだ。

イ・ジュンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/sports/soccer/1017147.html韓国語原文入力:2021-10-29 04:59
訳D.K

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