昨年4月の総選挙を控え、未来統合党(現・国民の力)側に与党陣営関係者や報道関係者の告発をそそのかしたという疑惑の中心人物であるキム・ウン議員(国民の力)とソン・ジュンソン前最高検察庁捜査情報政策官(現大邱高等検察人権保護官)が6日、関連容疑を全面否定した。しかし、本人たちの名前が入ったメッセージなど、文書をやり取りした情況が公開されたにもかかわらず、具体的な説明なしに「覚えていない」または「全く事実ではない」という主張を繰り返し、かえって疑念を抱かせている。
昨年の総選挙の直前に、ユン・ソクヨル検察総長(当時)の側近であるソン・ジュンソン捜査情報政策官から与党陣営関係者らに対する告発状を受け取り、これを未来統合党に伝えたという疑惑を受けているキム・ウン議員は、この日立場を表明し「私のところに届いた情報提供と資料の大半は党に伝えたが、問題になった告発状を実際に受け取ったのか、誰から受け取ったのか、受け取ったならこれを党に伝えたかどうかは確認できない」と説明した。さらに「(告発状を)受け取ったとしても、報道内容によると総選挙が差し迫った時期だったので、これを気にすることはできなかっただろう」とし、「検察側が作成した文書ならば、検察が明らかにすべき」だと主張した。また「本疑惑と関連した資料は真実なのか、(メディアに)情報提供した目的は何なのかは、情報提供者側が明らかにすべき問題だ」とも述べた。
キム議員は初めて疑惑が持ち上がった2日、「当時、議員室に多くの情報提供があり、情報提供を受けた資料は当然、党の法律支援団に渡した」とし、「当時、受け取ったメッセージはすべて削除したため、現在問題になっている文書を私が受け取ったのか、誰から受け取ったのかは確認できない」と主張した。
しかし本紙が、キム議員がソン政策官から受け取ったファイルを未来統合党側の関係者と推定される人物に送ったテレグラムのメッセージを公開するなど波紋が広がったことを受け、今回は「確認できない」と主張し、「検察」と「情報提供者」に真実を明らかにする責任を転嫁したのだ。
キム議員は告発状ファイルを転送する過程で「確認したらチャットルームを爆破(する)」というメッセージを送ったのに対し、「チャット履歴を削除したのは違法かどうかとは関係なく、情報提供者の身元を保護するための日常的なこと」だとし、「たとえ情報提供された資料を党に渡したとしても、情報提供者の意図とは関係なく、これを党に単純に伝えるのは違法行為ではない」と主張した。
しかし、この疑惑を最初に取り上げた「ニュースバース」が報道に先立ち、取材記者とキム議員の間で交わした通話の内容は、これとはまた異なる。2日の電話取材でキム議員は、「開かれた民主党」のチェ・ガンウク候補(当時)の公職選挙法違反について、自分が最初に問題提起をしたと明らかにし、「明らかに違法の素地があると考えたからこそ、そちら(検察)が(告発状を)送ってきたのかもしれない」と述べた。告発状にユン前総長の妻、キム・ゴンヒ氏に関する内容が含まれていることについては「それはそちら(検察)の問題だ」と述べた。自分が直接この事件に関与したかどうかは明らかにしなかったが、検察が文書を送った「可能性」は残したわけだ。さらに、同日開かれた国会法制司法委員会の全体会議で、国民の力のチャン・ジェウォン議員は「ニュースバース」の取材陣とキム議員が今月1日に交わした通話内容を公開したが、ここではキム議員が「(告発状を)私が作った」とまで言っていた。
疑惑が浮上した翌日の3日から年次休暇を取ったソン・ジュンソン検事も、6日午前に記者団に携帯メールを送り、「『ハンギョレ』と『ニュースバース』は私がキム・ウン候補(現・国民の力議員)に告発状および添付資料を送ったという疑惑を報じた。私が告発状を作成したり、添付資料をキム議員に送付したという疑惑は全く事実ではない」と疑惑を否定した。また「根拠のない疑惑提起とこれによる名誉毀損など、違法行為に対して強力な法的措置を取る」という意向も示した。
しかし、ソン検事は告発状を含め、情報提供者の実名の判決文、SNSなど100件を超える写真をテレグラムで送る過程で「転送されたメッセージ:ソン・ジュンソンより」と表記されたテレグラムのメッセージなど自分に不利な状況に対し、何も釈明しなかった。告発状の内容と伝達過程がすべて公開され、ソン検事の介入をめぐって熾烈な政治的攻防が繰り広げられている状況でも、「包括的否定」戦略を固守したわけだ。
一方、パク・ボムゲ法務部長官は同日、国会法制司法委員会全体会議に出席し、「国民と政界の関心事案として検察の政治的中立および名誉がかかった重大な事件であり、迅速かつ厳正な真相調査が必要だ」とし、「今後の進行経過によって法務部と最高検察庁による合同監察など追加措置を考慮する」と明らかにした。最高検察庁で行っている真相調査については「マスコミで最初に報道された後、キム・オス総長が最高検察庁監察部に真相確認を指示し、これによってソン・ジュンソン検事が使用したパソコンを確保するなど、最高検察庁でも迅速な調査を進めていると思う」と述べた。
パク長官は、国民の力のキム・ウン議員がこの日「記憶にない」という立場を明らかにしたことに関し、「当事者が今日否定したため、最高検察庁監察部が一定の時点を決めて早く調査を進め、結果を国民に示さなければならない」とし、「きちんとした究明が足りない場合には、捜査体制への転換も考慮すべきだ」と述べた。捜査主体については「もし公職選挙法違反の部分が少しでも明らかになれば、それは検察の6大直接捜査対象に当たる」と付け加えた。