世界最大のスポーツ祭典と呼ばれる五輪。東京五輪には世界中から1万1090人の選手が出場するが、彼らの中には歓迎される選手も、ときには歓迎されない選手もいる。彼らはどんな選手だろうか。
難民に希望を…29人の挑戦
東京五輪には29人の難民選手が五輪旗を抱いて12種目に出場する。選手の中ではシリア出身(9人)が最も多く、イラン(5人)、南スーダン(4人)、アフガニスタン(3人)出身が後に続く。難民チームは2016リオ五輪の時に初めて参加した。当時は10人だったが、今回は参加人数が増えた。
競泳のユスラ・マルディニ選手(23)はリオに続き東京大会にも出場する。マルディニ選手はシリア内戦が激化した2015年に故郷を離れたが、定員を超えたヨットを海で3時間30分もの間押しながら必死の脱出を果たした。現在、ドイツ・ハンブルクに居住しているマルディニ選手は「水泳は私の命を助けた。ドイツでも水泳は私の人生の出発点になった」とし「シリアで育った時は難民になるのが悪いことのように感じられたが、難民は安全に滞在できる避難所を探す人たちを意味する。私たちは難民だけでなく世界中の多くの若者にも希望を与えたい」と応援を呼び掛けた。柔道女子57キロ級に出場するシリア出身で3人の子どもの母親であるサンダ・アルダス選手(31)も「五輪参加でただの難民ではなく、社会の一員となることができてうれしい。スポーツは私たちに大きなモチベーションになった」と語った。
“公正性”議論を呼んだトランスジェンダー選手
ニュージーランドの重量挙げ代表のローレル・ハバード選手(43)はトランスジェンダー選手として五輪に出場する。125年の五輪史上初めてのことだ。ハバード選手は「ギャビン」という名前で105キロ級男子重量挙げ選手としても活躍した。2013年に性別適合手術を受け、国際オリンピック委員会(IOC)が2015年にトランスジェンダー選手の五輪出場を認め、ハバード選手も女子競技出場資格を得た。2015年から男性ホルモンの数値検査を行い、2016年12月のテストステロンの数値がIOCなどが提示した数値以下に下がった。
ハバード選手の東京五輪出場が認められてから、公正性をめぐる議論が続いている。五輪の舞台で競争する選手たちも意見が分かれる。ハバード選手は2017年、ニュージーランドのラジオでのインタビューで「人々の心を変えることは私の役割や目標ではない。彼らが私を支持してくれることを願うが、彼らに強要することはできない」とし「多くのニュージーランド人が私に与えてくれた親切と支援に感謝している」と述べた。
ドイツのDPA通信によると、今回の東京五輪にはハバード選手以外にも少なくとも141人の性的マイノリティが参加する。これは過去最大の数だ。
自国民に恨まれるミャンマー代表
ミャンマーの選手たちは胸に国旗をつけたが、自国民の応援は受けられない見通しだ。軍部クーデター政府のもとで派遣された選手だからだ。ミャンマー競泳国家代表のウィンテットウーさんらが「国民の血で染まった国旗の下では行進しない」と五輪不参加宣言をした中、テッタートゥーザー選手(バドミントン)、エトゥンナウン選手(射撃)ら2人はミャンマー代表として出場を決めた。
ミャンマーで大衆的な人気を集めていたテッタートゥーザー選手(22)に対する市民の反感は非常に大きい。テッタートゥーザー選手の両親はいずれもバドミントン国家代表出身だ。ミャンマーの市民たちはソーシャルメディアを通じて「もうあなたを誇りに思わない」「絶対に応援しない」と恨みの感情を噴出させている。
ミャンマーでは軍部クーデター以後、民主化市民運動が続いており、現地人権団体は軍事鎮圧で10日までに899人の市民が死亡したと明らかにした。6月末から新型コロナも拡散し、さらに混乱した状況にある。