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[寄稿]強制徴用被害訴訟の却下は遺憾だ

登録:2021-06-14 06:09 修正:2021-06-14 07:15

 今月7日、85人の日帝強制徴用被害者とその遺族らが日本企業16社を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の一審で、ソウル中央地裁民事合議第34部(キム・ヤンホ裁判長)は、却下判決という被害者敗訴の判決を下した。2015年5月に訴訟を提起してから6年間待ち望んでいた一審判決で、法廷が開かれてからわずか1分で「却下」の宣告を下した。この判決は、強制徴用被害者が勝訴した2018年の最高裁(大法院)の「強制徴用賠償判決」に真っ向から反するものだ。

 今回の判決は、2018年の最高裁判決と比較すると、事実上、原告が異なるだけの同じ事案に異なる論理を適用したものだ。当時の最高裁の賠償判決の少数意見に従ったものだ。最も本質的な違いは、日帝植民地支配と強制徴用の法的性格にある。今回の判決は、植民地支配と強制徴用の違法性については、韓国国内法的な解釈にすぎず、国際法ではそうではないと強弁する。しかし、これは妥当な主張ではない。

 まず、植民地支配を認めない脱植民地化は、国際法や国際判例、国際会議により規定と宣言がなされている。国際法上の脱植民地化は「自決権」の形式で具体化されている。国際法は、植民地支配を認めない「自決権」を国連憲章第1条第2項、第55条、第73条、第74条で明文化した。これを具体化した1960年の国連総会の「植民地と人民に独立を付与する宣言」に続き、1970年の国連総会の「国家間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言」の5番目の「人民の自決の原則」で、早急な植民地支配の終息を国際法の原則として宣言した。国際司法裁判所(ICJ)は、勧告的な意見として植民地の違法性を実際に適用した1975年の「サブサハラ事件」で、1970年に宣言された「人民の自決の原則」を法的確信として実際に活用した。また、国連が組織した人種差別禁止国際会議で採択された2001年のダーバン宣言(Durban Declaration)の第13章と第14章は、植民地主義は人種主義、民族差別主義、外国人嫌悪症を助長するとして、植民地支配の清算を21世紀の時代的な課題として宣言した。

 二つ目に、強制徴用の違法性については、戦時における民間人の強制徴用を反人道的な国際犯罪として規定した国際人道法と国際人権条約がある。1940年時点での日本は、1930年の強制労働禁止に関する条約を批准した加盟国として、明確に条約を違反したのだ。

 このように日帝の植民地主義支配と強制徴用は、国際法上違法として規定されている。さらに、国際社会の大きな流れも、過去の主権国家中心主義より、国際法の主体としての個人の法的地位の認定と人権伸張主義へと発展していく傾向にある。

 三つ目に、1948年に制定された韓国憲法の前文では、臨時政府の法統性の認定を韓国憲法の中心的な価値として明文化し、日帝植民地支配を不法と規定しており、1910年の強制併合条約を不法とみなしている。たとえ1940年代に植民地主義が欧州と米国で許容されていたとしても、日本の1910年の韓国強制併合条約の過程と内容は、欧州とは全く性質が異なる。韓日併合条約は、軍事的な圧力のもとでなされたものであり、条約の成立要件である自由な意思の合致の不在や条約締結権者の印章の偽造など、初めから不法で無効だ。したがって、日本の1910年の韓国強制併合条約は源泉無効だ。

 今回の裁判での85人の強制徴用被害者の個人損賠請求は、1952年のサンフランシスコ条約第4条に基づき締結された1965年の請求権協定案における経済的、商業的な損害賠償請求ではない。不法な植民地支配と侵略戦争の遂行に直結した、日本の軍需企業の反人道的な不法行為にともなう精神的苦痛に対する慰謝料としての性質の損害賠償請求だ。

 植民地支配体制の不法性が国際法の原則で決議されたにも関わらず、いまだに国際法に残っている植民地の残滓を取り除いているところだ。国連を含む国際社会は、植民地の終息と人間の尊厳などの方向にさらに発展する傾向にある。

 韓国の司法府も、国際法と国際社会の大きな流れを正確に看破し、過去の植民地のもとで苦痛を受けた強制徴用被害者個人の傷をいやすことに、よりいっそう率先垂範しなければならない。韓国の裁判所は、被害者側を勝訴とする場合、韓日関係や韓国の国際信頼性の低下などの行き過ぎた国家中心主義だけを意識するようだ。これは、国家の主権より個人の人権の伸張を最重要視する現代の国際法の発展傾向にはそぐわない。

//ハンギョレ新聞社

イ・ジャンヒ|韓国外国語大学名誉教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/999168.html韓国語原文入力:2021-06-14 02:40
訳M.S

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