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[寄稿]男性は孤独で死ぬ

登録:2021-02-17 03:14 修正:2021-02-17 09:24
2018年1月、京畿道高陽市徳陽区にあるソウル市立昇華院にて。無縁仏の葬儀支援団体「分かち合いと分かち合い」のメンバーが孤独死した人の火葬を終え、骨壺と遺影を抱えている=高陽/パク・チョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 「チェ○○さん(男)は1960年生まれでソウル市○○区に住み、2020年11月21日に自宅で亡くなっているのが発見されました。死因は不明です。チェ○○さんの遺骨は、昇華院内の幽宅の丘に散骨される予定です」

 新正月と旧正月にはさまれた1月のひと月で、ソウル市立昇華院(火葬場)では80柱の無縁仏の葬儀が行われた。2019年の全国の無縁仏は2536人で、毎年10ポイントずつ増加しているので、今年は3000人を超える見込みだ。実は「無縁仏」という言葉は正しくない。国語辞典によると「縁故者」とは血統、情、法律などの関係で結ばれた人をいうが、生まれて誰とも情を交わさない者がどこにいよう。実際に統計によると、無縁仏の約80%は書類上の家族がおり、60~70%は縁故者が貧困や家族の解体などの理由で遺体の引き取りを放棄したケースだという。

 この1カ月の間にソウル市立昇華院で葬儀を行った80人は、一人ひとりが大切な自分自身の歴史を持つ人々だ。一人の人間の生涯を数値に還元して平均を出し、カテゴリーに分けて説明する過ちは犯したくないが、慎重にいくつか語ろうと思う。80人の平均死亡年齢は64.6歳で、韓国の平均寿命よりも10年近く短い。死亡原因は不明(16件)が最も多く、がん(12件)、脳卒中(11件)がそれに続く。自殺も8件にのぼり、死亡しているのが発見されたケースは26件だ。居住地は九老区(クログ)、永登浦区(ヨンドゥンポグ)、鍾路区(チョンノグ)が多く、江南区(カンナムグ)は2人、瑞草区(ソチョグ)は1人もいない。死亡場所は療養所・療養病院が31件、病院21件、長屋・考試院(簡易宿舎)などの居住施設が20件、路上なども7件にのぼった。何より驚くべきことは、80人中71人が男性だったことだ。

 無縁死はよく「孤独死」と呼ばれる。昨年3月に「孤独死予防および管理に関する法律」が制定されたが、最小限の行政措置に焦点を絞っているだけで、実効性のある政策からはほど遠いように思える。孤独死の主な原因である貧困、家族解体、高齢化の問題が解決の兆しを見せていないからだ。こうした原因についての認識が広まっているのは幸いだが、その一方で孤独死の70~90%が男性であるという問題についての社会的議論はあまりない。

 ある人は、男性は老いて死ぬのではなく孤独で死ぬのだと言う。男性の孤独死はなぜ多いのだろうか。頻繁に返ってくる答えは「因果応報」だ。家庭内暴力、酒乱、浮気、賭博、老害、マッチョイズム(男性優位主義)などの単語が登場する。言い訳のようにも聞こえるが、ある人は、男性は年を取ると女性とは異なり思考の柔軟性が低下し、社会への適応速度がさらに遅くなって疎外と孤立に陥りやすいと語る。

 しかし、たとえその男性が出来の悪い夫や父親であったとしても、「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」という世界人権宣言第1条が定言的命令なら、すべての存在もまた尊厳ある死の権利を有する。考試院の部屋からの悪臭で最後に存在を知らせる死は、尊厳ある死とは言えない。この時に毀損されるものは彼の尊厳だけではない。彼の疎外と孤立には、彼自身が責任を取るべき部分があるかもしれない。しかし、彼に戸を閉めた責任があるのなら、その戸を開かなかった私たちにも責任がある。ある研究によると、無縁仏の13.4%は障害者で、大半は貧しかったという。安全装置のない工事現場から落ちて障害を負わされ、労災補償金もなしに不当解雇されて貧しくなったのは彼の過ちではない。

 自分は金持ちであり、家族と友人がいるから孤独死を心配する必要はないと断言するなかれ。彼らも一時はそう思っていた。次第に人間関係は揮発性のクモの巣のようになっていき、家族愛、友情はドラマの中にのみ存在するようになって久しい。新型コロナウイルス大流行という人類的災害を前にしてもワクチンの横取りと勝者独占が蔓延し、憐憫と連帯の価値は急速に色あせつつある。幼い娘がトコトコと駆けてきて胸に抱かれる、そのような感覚を持つことが難しくなった非接触時代に、私たちはつながればつながるほど孤独になっている。

 何よりも、あらゆる死は孤独だ。愛する家族に囲まれて迎える死すらも、一人で去らねばならない最期の瞬間は常に孤独なものだ。それゆえ、ある意味では、あらゆる死は孤独死である。しかし、日本尊厳死協会副理事長などを務めた長尾和宏はこう述べる。「死ぬ時は一人だが、死後も一人だとしたら悲しいことだ」。 旧正月の連休を終え、二度目の新年を迎えた今、今日も昇華院に立ち昇る青い煙が私たちに問いかける。破産し、長患いしたとしても、あなたの遺体の前で、天が崩れ落ちるように泣いてくれる人はいるのかと。

//ハンギョレ新聞社

シン・ヨンジョン|漢陽大医学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/983173.html韓国語原文入力:2021-02-16 14:44
訳D.K

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