スイスで個人の自由を制限する新型コロナウイルス防疫の法律の妥当性を問う国民投票が行われる。個人の自由を尊重することと、公衆保健のために市民生活を制限する政策との間の葛藤が、国民投票を通じて論議される異例の事件になる見通しだ。
スイスの市民団体「憲法の友人たち」は13日、新型コロナ対策法の廃止の是非を問う国民投票を実施するために、8万6000人の署名を集めて連邦政府に提出した。スイスでは年に4回、3ヵ月ごとに国民投票を実施する。連邦法律や政策に異議がある場合、公知時点から100日以内に5万人以上の署名を集めれば国民投票を要求できる。連邦政府は国民投票の結果を政策に反映しなければならない。今回の国民投票は早ければ6月から始まるものとみられる。
スイス議会は、商店経営の一時中止など防疫対策の根拠作りのため、昨年9月に新型コロナ対策法を可決した。以前も感染病対策法に基づいて市民生活の制限は可能だったが、議会の監視のもと一時的にのみ可能だった。
「憲法の友人たち」の幹部であるクリストフ・フルガー氏は「私たちは政府がパンデミックを利用して統制を強化し、民主主義は弱体化していると考える」とし「こうしたアプローチで発生する長期的な問題は重大だ。私たちは主権者の意志なくしては危機管理もできないという運動を繰り広げている」と述べたと「フィナンシャル・タイムズ」が伝えた。
個人の自由を重視するスイスでは、防疫のために市民生活を制約することに否定的な世論が高い。スイスの公共放送「SRF」が昨年11月に発表した世論調査によると、回答者の55%は「政府対策で個人の自由が制限されることを懸念」している。回答者の約3分の1は「食堂と飲み屋を夜11時に閉めることも過度な措置」だと答えた。
スイス政府は昨年末、アルプス山脈に隣接した他の欧州国家が新型コロナの再流行を懸念してスキー場を閉鎖した時も、単独でスキー場営業を許可した。しかし最近はスイスも新型コロナの再流行の勢いに驚いて、強力な封鎖政策を取っている。昨年12月18日、食堂と飲み屋、各種レジャー施設を2月まで閉鎖するようにした。今月12日にはこれを生活必需品関連施設を除くすべての施設に拡大した。人口850万人程のスイスの新型コロナの累積感染者は49万人以上だ。1日の感染者は去年11月2日に1万人を超えたが、封鎖実施後の最近は1日3千人程度に減った。
廃止するかどうか問うことになる新型コロナ対策法の条項の多くは、国民投票の時点では効力を失うように設計されている。国民投票の実益は大きくなさそうだが、「憲法の友人たち」は未来の危機状況で参考にする先例を残すことが重要だと主張している。