故ペ・チュンヒさんなど日本軍「慰安婦」被害者とその遺族12人が起こした損害賠償請求訴訟で、「日本政府は被害者に1億ウォン(約950万円)ずつ賠償せよ」との判決が下された。「慰安婦」被害に対して日本政府の損害賠償責任を認めた初の判決であり、国際的な反人道犯罪の責任の所在を法的に明らかにし、被害者に実質的正義回復の道を開いた歴史的意味が大きい。
裁判の争点は、韓国の裁判所が日本政府の行為に対する裁判権を持つかということだった。日本政府は、一国家の主権的行為を他国が司法判断の対象とすることはできないという「国家免除」理論を前面に出した。だが、裁判所は「(『慰安婦』は)当時日本帝国が批准していた条約および国際法規に違反したものであるだけでなく、第2次世界大戦後に東京裁判所憲章で処罰することに定めた『人道に反する罪』に該当する」として、『国家免除理論は、国際強行規範に違反して他国の個人に大きな損害を負わせた国家が、その理論の後ろに隠れ、賠償と補償を回避できる機会を与えるために形成されたものではない」と明らかにした。人類普遍の人権を規定した世界人権宣言をはじめとする現代の国際法的根拠から導き出した極めて常識的な法解釈だ。
国際法秩序は強者の論理を反映する側面が大きい。2004年イタリア最高裁も第2次世界大戦当時にドイツ軍に連行されて強制労働をした自国民に対して、ドイツ政府が損害賠償をしなければならないと判決を下したが、その後国際司法裁判所がドイツの手をあげる保守的判決を下している。だが、国際法は固定不変でなく、人類が成就した人権・正義の価値に歩調を合わせて変化しなければならない。そのうえ戦犯国として責任を認め被害補償努力を傾けてきたドイツと、何の謝罪も公式賠償もしない日本を同一線上で比較することはできない。
日本政府は、1965年の韓日請求権協定や2015年の韓日外交長官合意で解決済みの事案という既存の主張を固守し、判決自体を認めないとの態度だ。控訴すらしないという。このまま判決内容が確定すれば執行段階に移るが、それはさらに大きな外交的葛藤要因にならざるをえない。韓国政府は司法府の決定を尊重しなければならない立場だ。日本政府は過去の反人道的犯罪に対して歴史的・法的責任を認める態度への転換なしでは、未来志向的な韓日関係が一層困難になることを明確に認識しなければならないだろう。