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武陵桃源を思わせる展示場…「楽園の夢」が盛り込まれた国宝と宝物の宴

登録:2020-07-21 09:29 修正:2020-07-21 15:16
申潤福の「美人図」。今回の展示の代表作に挙げられる澗松美術館の所蔵品。8月12日から9月3日まで展示//ハンギョレ新聞社

18世紀に活動した絵画の巨匠沈師正と、彼の弟子で19世紀に花園画家として活躍した李寅文がそれぞれ描いた巻物絵の大作「蜀棧圖卷」(右)と「江山無盡」が、史上初めて同じ場所に並べてショーケースに置かれ、観客を迎えている//ハンギョレ新聞社
 ここは武陵桃源なのか、展示場なのか。

 ショーケースの周囲で、あらゆる鳥の声があちこちから朗々と聞こえる。目の前の三面の壁は理想郷の風景で覆われている。絶壁と峠が波打つ雄大な山並みの中に人の住む村が混じる、こぢんまりとした楽園のイメージだ。

 22日に再開されるソウル龍山区(ヨンサング)の国立中央博物館の企画展示室では、韓国と中国の昔の士人たちが夢見た武陵桃源の絵に、本当に武陵桃源の雰囲気に包まれるように出会える。

 韓国伝統美術の歴史で最も幅が長い絵であり、士人の楽園を描いた代表作として有名な二つの巻物絵が並べて特製ショーケースの中に置かれている。朝鮮後期の18~19世紀を代表する文人画家である玄斎・沈師正(シム・サジョン, 1707-1769)の大作「蜀棧圖卷」と、彼の弟子格である花園画家の古松流水館・李寅文(イ・インムン,1745~?)の大作「江山無盡図」だ。「蜀棧圖卷」と「江山無盡図」の幅はそれぞれ8.18メートルと8.56メートルだ。「江山無盡図」がすこし長いが、絵画史学者や愛好家たちは、師匠と弟子の間柄である二人の二つの大作が、史上初めて劇的に出会ったということに興奮する。

 実際、「江山無盡図」は、中国の中原から現在の四川地方である蜀に向かう険しい道を描いた師匠の沈師正の「蜀棧圖卷」を見て、李寅文が基本モチーフを取り描いたのだろうと学会は推定してきた。しかし、人の姿があまり描かれない中国の観念山水画の構図の「蜀棧圖卷」とは異なり、300人を越える多くの人間群像が岩峰の間の渓谷の村や川辺の入江などで交じって暮らす人生の世俗的な風景を熟練した筆遣いで繰り広げているという点で、個性の違いも見せる。

 二つの大作の空間は、文化財庁と博物館の共同企画イベントである「新しい宝物のお出まし-新国宝宝物殿2017~2019」(9月27日まで)の一部だ。2017年から2019年までに新たに指定された国宝と宝物157件のうち、建築文化財や重量が重い文化財などを除く83件196点を大衆の前で見せる大規模な企画展だ。国宝と宝物の公開展示としては史上最大規模だと両機関は明らかにした。作品を貸した機関や個人、寺院などの所属先だけで34カ所だ。

金得臣の風俗図「野猫盜雛」。ひよこをくわえて逃げる猫の姿と驚いて追い掛ける母鶏と家主の様子がよく捉えられている//ハンギョレ新聞社

 展示場は第1部「歴史を守る」、第2部「芸術を広げる」、第3部「念願を込める」に分かれて構成されている。

 観客の関心が集まるのは、やはり第2部の先祖の美意識が込められた芸術遺産だ。韓国美術史の名門である澗松(カンソン)美術館のコレクションの名作22点が、国家宝物の指定にあたり一度に貸出展示されたのは史上初のことだ。特に「江山無盡図」と対をなす澗松所蔵の「蜀棧圖卷」の国立中央博物館への出品(実物は8月11日まで展示され、以後は影印版を展示)は、1972年の「韓国絵画」展以来48年ぶりのため、共同展示の意味はより一層深まった。展示期間は3週間間隔で入れ替えられ、展示される澗松の他の名作も優れている。

 馬に乗って道を進む中、柳の木の上でさえずるウグイスの姿に心動かされた視線を向ける士人の姿を描いた檀園・金弘道(キム・ホンド, 1745 ~ ?)の「馬上聴鶯」や、この地の山河の風景を朝鮮固有の画法で描く「真景山水画」の大家のチョン・ソンの「楓嶽内山総覧図」が、来月11日まで先に展示される。引き続き、18世紀のあどけない朝鮮女性の美妙な姿を描き「朝鮮のモナリザ」のニックネームが付いた申潤福(シン・ユンボク, 1758 ~ 1814)の代表作「美人図」が来月12日から9月3日まで展示される。朝鮮後期の先祖の気さくな日常を見せてくれる金得臣(キム・ドゥクシン, 1754~1822)の「風俗図画帳」、大学者であり文人画家である秋史・金正喜(キム・ジョンヒ, 1786~1856)が出した絵画集である「蘭盟帖」、二つの川の合流点などの漢江(ハンガン)沿いの風景を盛り込んだチョン・ソンの「京郊名勝帖」は、帖の中の絵を交替して展示することになる。

 陶磁器の名作では、高麗初期の青磁の様相を見せてくれる「淳化4年(993年)」の銘の壺(国宝、梨花女子大学所蔵)と高麗の象形青磁の精髄である透刻蓮唐草文の筆立て(宝物、国立中央博物館所蔵)などが視線を集めるものと見られる。

 第1部「歴史を守る」では、様々な記録遺産を披露する。玉山書院所蔵本「三国史記」と延世大学所蔵本「三国遺事」を始め、朝鮮太祖から哲宗まで472年の歴史を記録した「朝鮮王朝実録」などが出てくる。第3部「念願を込める」は、国内で指定された国宝・宝物の半数を超える仏教文化財の地位を観察する場だ。釈迦や高僧の遺骨を入れる容器である舎利器と舎利器を入れる舎利龕が各種の供養品とともに塔に奉納された6世紀百済時代の「扶余王興寺址出土舍利器」(国宝、国立扶余文化財研究所所蔵)と、7世紀の益山(イクサン)弥勒寺址の西塔から出土した舎利荘厳具が、ソウル国立中央博物館で初めて一堂に並び置かれ、観客を迎える。東アジアで最も古い舎利器の遺物で、百済工芸技術の真髄を見せてくれる名作だ。統一新羅末期から高麗初期の仏教芸術品では、2008年に慶尚北道軍威(グンウィ)の麟角寺址で出土した青銅仏と青磁浄瓶、香合が断然注目される。「妙法蓮華経木版」(宝物、開心寺所蔵)、讃仏画である「月印千江之曲巻上」(国宝、個人所蔵)などの仏教経典や書籍からは、朝鮮半島の仏教記録文化の悠久な面々をじっくり見ることができる。

国宝に指定された忠清南道扶余王興寺址出土の百済時代の舎利荘厳具//ハンギョレ新聞社

 博物館側はオンライン予約制を取り入れ、毎日午前10時から午後6時まで2時間単位で観覧人員を200人に制限する方針だ。

文:ノ・ヒョンソク記者、写真:国立中央博物館・文化財庁提供 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/music/954431.html韓国語原文入力:2020-07-21 05:26
訳M.S

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