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巨大木版画に躍るDMZ248キロ

登録:2020-06-01 03:57 修正:2020-06-01 09:57
インスタレーションのように斜めに重ねて配置された版画家キム・オクさんの木版画の連作『DMZ』。江原道の高城統一展望台から鉄原の駅谷川まで続く非武装地帯6カ所の風景を大型木版画として初めて再現した作品//ハンギョレ新聞社

 67年にわたり、朝鮮半島の腰を断絶している248キロの休戦ライン非武装地帯(DMZ)の周辺にも、自然と人の風景は例外なく広がる。約40年間にわたって木版画を制作してきた版画家キム・オクさん(65)は、この厳粛な真実を露わにするために、彼が自ら見て触れた非武装地帯の地、人、自然を数多くの木版画の画幅に込めた。忠清北道鎮川(チンチョン)にある生居(センゴ)版画美術館では、キムさんが昨年1年間にわたって制作してきた連作『DMZ2019』を一堂に集めた「国土叙事」展が5月22日から開かれている。江原道の高城(コソン)統一展望台から鉄原(チョルウォン)の駅谷川(ヨッコクチョン)までの非武装地帯6カ所、そして漢江(ハンガン)河口、江華湾(カンファマン)、白ニョン島(ペンニョンド)など黄海水域の境界線付近4カ所の人文地理的風景を隅々まで描き出した木版画の17点の連作が、過去の20点の国土紀行作品とともに展示されている。今回の展示は、1990年代以来、国土の隅々の景観を歩いて目に焼き付け木版画を彫ってきたキムさんの制作歴を画するものとなっている。

 展示場に入ると、縦180センチ、横50センチの赤と黒の大きな木版画12枚がななめに重なり、掛け軸のように垂れ下がった光景が目に入る。東の金剛山(クムガンサン)展望台から楊口(ヤング)の頭陀淵(トゥタヨン)渓谷、鉄原の白馬(ペンマ)高地とファサルモリ(矢頭)高地を経て黄海の江華湾、白ニョン島まで、DMZの分断の現場を17点の大型木版画の連作で再現した前例のない作品だ。特に5、6回も訪れたという鉄原のファサルモリ高地が描かれた連作の木版画は、じっくり見るべき部分が多い。韓国軍の前方警戒所(GP)のすぐ上には戦死者の遺体発掘作業の現場が見え、そのすぐ上に南北兵士が道を開通させて握手する場面が描かれる。山岳非武装地帯の閑散とした雰囲気とは対照的だ。分断の桎梏(しっこく)が刻まれた軍事的対峙の光景と温もりのこもった人間の風景が、10枚を超える画幅のそこここで重なる。

26日、展示場に現れたキムさん。昨年制作した連作『DMZ』の最初の部分「高城統一展望台」を指差し、絵の構図について語っている。金剛山と海金剛が見える休戦ライン南方限界線の最北端の自然風景が上から見下ろすように描かれている//ハンギョレ新聞社

 金浦(キンポ)から江華島、黄海岸海上境界線一帯までの海の境界線の風景は、横3メートル、縦80~40センチの3点から成る連作で再現されている。キムさんが2019年に制作した大作『金剛山を眺める』は、横219センチ、縦50センチの細長い画面に江原道高城の最前線のGPから見た北の金剛山の景観が描かれている。連峰とその最東端を成す九仙峰(クソンボン)、鑑湖(カムホ)、海金剛(ヘグムガン)などの雄大なパノラマが広がる。

 「北朝鮮の風景は分断以来、遠くから眺めるだけのものです。今回の連作では、遠くから眺める風景であることを強調しようとしました。そのようにして分断状況を浮き彫りにしたかったのです。これまで我々は、休戦ラインのDMZの鉄柵をトゲのようなイメージで認識し、表現してきました。接近が難しいという象徴性を表してきたわけです。しかし視覚的にはすべて見えるので、完全に断絶しているわけではない。いつかは行くべき、希望を持って回復すべき場所であることを、イメージを通じて示したかったのです」。

キム・オクさんの2018年の作品『漢江と臨津江が出会う』。横278センチの細長い画面に、漢江と臨津江が合流して祖江を成す坡州の烏頭山統一展望台前に広がるパノラマを描く//ハンギョレ新聞社

 朝鮮半島の腰を分かつこの地の分断の風景は、縦に長く横が狭い掛け軸を斜めに重ねて表現した。黄海海上水域の見えざる分断の風景は、横に長く縦が短い横軸線の形態の3つの大作で表現し、その視線と感興に変化をつけた。「分断地帯の地形的、環境的条件に合わせて作品の形式を変えた」というキムさんの説明からは、キムさんが内容につながる形式にどれほど気を使っているかを、国土紀行を木版画によって解き明かすことに対する責任感がどれほど強烈であるかを実感する。

キムさんの2019年の大作『金剛山を眺める』。横219センチ、縦50センチの細長い画面に江原道高城の最前線のGPから見た北の金剛山の景観が描かれている。連峰とその最東端を成す九仙峰、鑑湖、海金剛などの雄大なパノラマが広がる//ハンギョレ新聞社

 展示を企画したキム・ジンハさんが展示の後記で指摘したように、キム・オクさんは現場のスケッチ、写真などを通じて場所の特徴を圧縮して表現する。古地図や真景山水画、航空写真を見るような臨場感が印象的だ。この地の人文的歴史や現実とともに迫ってくるスペクタクルな木版画は、すでに数十年間の制作歴を持つ作家の版画が、時を経るとともに精巧で豊かになっていることを示している。しかしキム・オクさんは、まるで記録するようにこの地の人文的景観をスケッチして回ることに疲れた様子も見せた。「これからはもっと自由に想像したり観照したりしようと思います。非武装地帯の連作の仕上げ作業も、統一時代の非武装地帯の未来を示すという方向で構想しています。今は人影もなく鳥だけが飛び交う江華湾や、漢江と臨津江の河口に遊覧船が浮かび、静かな鉄原平野を高速鉄道が疾走するファンタジーの風景を、私の表現力を駆使して表現しようと思っています」。展示は8月19日まで。

鎮川/文・写真 ノ・ヒョンソク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/music/947243.html韓国語原文入力:2020-05-31
訳D.K

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