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韓国「WTO発展途上国地位」放棄方針…農民「崖っぷちに追いやるのか」

登録:2019-10-22 01:28 修正:2019-10-22 08:37
農民6団体が21日、全羅南道道庁前で記者会見を開き「米国の圧力に対抗してWTO発展途上国地位を維持せよ」と要求した=全国農民会総連盟光州全南連盟提供//ハンギョレ新聞社

 政府は米国の通商圧迫に対応するため、世界貿易機関(WTO)での農業分野における発展途上国の地位を放棄する方針を固めた模様だ。早ければ25日にも対外経済長官会議を開いて決定する可能性がある。政府は、発展途上国の地位を放棄しても直ちに関税や補助金に変化があるわけではないと強調したが、農民団体は農業基盤が崩壊するとして反発した。

 21日の企画財政部、産業通商資源部、農林畜産食品部の説明を総合すると、政府は今月中に対外経済長官会議を開き、途上国の地位の放棄を決定する。時期は、企画財政部の国政監査(23~24日)終了後の25日が可能性が高いという。産業部のユ・ミョンヒ通商交渉本部長はこの日、米国へ向けて出国し、米通商代表部(USTR)と関連する懸案事項について議論して24日に帰国する予定だ。

 今年7月、ドナルド・トランプ米大統領は韓国などの「最も裕福な国」がWTOにおいて途上国の地位を認められることについて問題提起し、90日以内に対策を講じない場合はそれらの国を途上国として待遇しないと明らかにしている。これについてホン・ナムギ副首相兼企財部長官は先月20日、「今後も途上国の特恵を維持できるかどうか根本的に考える必要がある時期」とし、再検討する立場を明らかにした。韓国は1995年のWTO発足時に、農業分野において途上国の地位を選び、輸入農産物に高関税を課し、国内農業に補助金を支給する特恵を認められている。

 政府は、今回途上国の地位を返上しても象徴的な意味があるだけで、直ちに国内の農業と農民に及ぶ実質的な不利益はないと説明した。1995年に妥結したウルグアイラウンド協定に代わる交易ルールを決めるため、2001年に農業分野を含めたWTOドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉が始まったが、先進国と途上国の意見の違いにより2008年以降10年以上も議論が行われず事実上決裂しているうえ、近いうちに交渉が妥結する可能性もほとんどないからだ。途上国の地位を放棄しても新しい農業交渉の妥結は望めない状況なので、今すぐ先進国並みにコメの関税率と農業補助金の限度が調整されることはないというわけだ。

 米国は韓国だけでなく35の国を「途上国からの除外」対象に分類して圧迫しているが、すぐに新しい交渉が開始される可能性は低いというのが政府の観測だ。農食品部の関係者は、「米国が主張しても、中国やインドなどが反対しているため、新たな交渉の場が設けられても最終妥結までは難しいだろう。多くの面で不確実性が大きい状況だ」と述べた。

 長期的には新たな交渉による農業基盤の変化に備えるべきだ。新たな交渉によって関税率と補助金の限度が先進国並に調整された場合、国内の農業分野への打撃は避けられないためだ。韓国農村経済研究院のキム・テフン先任研究委員は、「特定品目や直接生産と関係なく農家を支援する『公益型直接支給制』はWTOが認める方式だ。あらかじめ準備をしていない状況でWTOが定めた補助金総量限度が削減される状況になれば、それ以上の農家への支援は難しくなる。公益型直接支給制への転換を前倒しする必要がある」と述べた。

 全国農民会総連盟光州全南連盟、全国コメ生産者会光州全南本部などの農民6団体はこの日、全羅南道道庁前で記者会見を開き、「政府による途上国地位の放棄は、通商主権を放棄し農業を崖っぷちに追い込む所業だ。農業先進国を主張するが、食糧自給率24%、農業所得20年停滞、都市と農村の所得格差60%などの現実は全く改善されていない。農民と膝を突き合わせて対策を講じるべきだ」と述べた。政府は22日にキム・ヨンボム企財部1次官の主宰で農民団体との懇談会を開き、意見を聴取する予定だ。

イ・ギョンミ、アン・グァノク、チェ・イェリン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/914050.html韓国語原文入力:2019-10-21 20:07
訳D.K

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