「『朴槿恵(パク・クネ)-チェ・スンシル国政壟断』は、専門家集団の沈黙と偽りの中でこそ可能でした。受難に遭っても所信を曲げなかった『志高き知識人』の手本のような宋建鎬(ソン・ゴンホ)先生の生涯とメッセージが、今日ますます大きな意味をもって迫ってくるのを感じます」
「第15回宋建鎬言論賞」受賞者に選ばれた金東椿(キム・ドンチュン)聖公会大社会科学部教授(写真)は、言論人ではなく学者だが、青巌(チョンアム)宋建鎬(1927~2001)先生と共通項が多い。分断の現実など、韓国現代史の矛盾した構造を暴いてきた点、その中で知識人の役割は何かを悩んできた点、社会運動と学術運動を併行してきた点などがそうだ。審査委員会は「金教授は理論と研究室に埋没することなく、現代史研究に基づいて韓国社会の現実を分析し、問題の根源とその解決策を見出すために努力し、市民運動と民間人虐殺問題解決の先頭に立つなど“行動する知識人”と呼ぶに充分値する」と選定理由を明らかにした。
1970年代に学生生活を送った世代にとって宋建鎬先生は、故李泳禧(リ・ヨンヒ)先生と共に精神的師匠だった。77年に入学した金教授もやはり青巌の『民族知性の探求』を読んで朴正煕独裁政権の本質と韓国の歴史と社会に対して目を開いた。「知識人としての勇気に深く感動して」青巌のほとんどすべての文を探して読みふけったという。
29日、電話インタビューで金教授は「宋建鎬先生は個人的にお目にかかったことはないが、扱う領域と主題意識、スタイルなどに常に深い共感を感じてきた。先生の文章は、私が韓国の支配層や彼らのイデオロギーを研究するうえで基本指針になった」と明らかにした。
代表的な「進歩的知識人」に挙げられる金教授は、理論より経験的現実と歴史を中心として新しい社会科学を焼き直して研ぐ学術活動に邁進してきた。彼の研究は労働者の現実に対する分析から出発し、知識人論、韓国戦争、民間人虐殺、反共イデオロギーに対する研究など、韓国の現代史において支配秩序がどのように作動してきたかを明らかにする方向に発展してきた。この過程で『戦争と社会』(2000)、『戦争政治-韓国政治のメカニズムと国家暴力』(2013)など11冊の大型単独著書が出版された。市民団体である参与連帯の設立と運営にも参加し、過去事清算関連法案制定運動に乗り出したのに続き、国家機関である真実・和解のための過去事整理委員会の常任委員も務めた。
金教授は「宋建鎬先生の足跡から、自身の哲学と所信に従って判断し発言するという、知識人の責務を再確認しなければならない」と話した。
彼は進歩的価値と談論を生産するシンクタンク「新たな百年」の非常勤研究院長も受け持っている。研究院では大統領選挙を控えた来年初、息の長い代案的談論を集大成した『韓国報告書』(仮称)を出す計画だ。