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[‘弁護人’熱風 なぜ?] 安寧を尋ねる映画に熱い応答

登録:2014-01-01 20:51 修正:2014-01-01 21:46
映画‘弁護人’の一場面

 映画が終わると客席のあちこちから拍手が響いた。 闇の中でしくしく泣いた人々も手を叩いた。 試写会や映画祭でもない普通の劇場ではめったに見られない光景だった。 去る12月31日夜、ソウル龍山区(ヨンサング)にあるある映画館は大変な混雑ぶりだった。 一年の最後を映画<弁護人>(監督ヤン・ウソク)の観覧で送ろうとする人々だった。 子供と一緒に来た40~50代の夫婦、忘年会を兼ねて集まった20~30代の会社員など、多様な老若男女が共に笑って共に泣いた。

 <弁護人>は社会現象になっている。 封切り後2週間経った1日、観客動員は600万人を突破した。 年末と新年初日の二日間で新たに100万人が観覧した。 観客動員1362万人で歴代興行1位の映画<アバタ>が600万人を越えるには17日かかった。<弁護人>を‘両親を連れて観に行こう’とか‘再観覧しよう’という動きもある。 映画に登場する1987年6月抗争の場面に該当する盧武鉉元大統領の実際の写真がインターネットで転送を重ねられていて、盧元大統領の墓に<弁護人>の映画チケットを載せる人々も出てきた。

 この映画が扱う‘釜林(プリム)事件’は1981年 全斗煥(チョン・ドファン)軍事政権が執権直後に起こした釜山(プサン)地域で史上最大の容共ねつ造事件だ。 この時、盧元大統領は拷問された被害者の弁護を務め、人権弁護士への道を歩むことになる。

 映画専門家や市民たちは<弁護人>に時代と呼吸する力があると口をそろえる。 ‘アンニョン(安寧)できない我が国の民主主義’の問題を提起する映画版‘アンニョン ハシムニカ’だということだ。 友人と一緒に映画を観に来たキム・ジヨン(42・女)氏は 「映画に出てくるように、その時も今も自分の目の前の利益にすがりつかざるを得ない平凡な市民が多いが、そのような状況に置かせた不当な現実は依然として改善されていない」と話した。 別の観客イ・サンギュ(32)氏は「映画を観て、題名の‘弁護人’が新たに意味深く迫ってきた。 暴圧的な国家公権力から市民の基本権・人権を守るという仕事がどういう意味を持つのかを考えさせられた」と話した。

 映画評論家ファン・ジンミ氏は「前の政府の時から民主主義の基本精神と市民の政治的権利が急速にき損されている。 特に外国為替危機以後、庶民の暮らしが疲弊した状況で、昨年新しい時代精神として台頭した‘経済民主化’も後退中だ。映画は民主主義という時代精神を呼び覚ましている」と語った。

 よく構成された出来ばえと俳優の熱演も観客を引き付けている。 特に主人公ソン・ウソク弁護士役を演じた俳優ソン・ガンホは、この映画を一種の‘成長映画’に作りながら観客の没入と共感を引き出した一番の貢献者に挙げられる。 観客チョ・某(40・女)氏は「盧武鉉前大統領が好きで彼に会いに来たが、盧武鉉ではなくソン・ガンホに会った。 当座の暮らしに汲々として社会に対する関心は持ちにくいが、それでも心の片隅に負債感と苦しさを持って生きてきた小市民をよく描いている」と評価した。 ファン・ジンミ氏は「ソン・ウソク弁護士が法廷で‘国家とは国民です’と叫ぶ場面は、映画の主題を語っている。 政権が正常でなければ国民が変えることができる、ということが民主主義の本質だ」と説明した。

 その一方で<弁護人>の限界に対する指摘もある。 この映画が1980年代の労働・学生運動を粗雑に扱い、自由主義的市民運動を当時の民衆運動の実体として満たしたという物足りなさだ。 文化評論家イ・テックァン氏は「同じ時代を生きた人間として、最も戦闘的な集団だった大学生を軟弱に描いている点が惜しかった。‘民主 対 反民主’の構図に回帰しながら‘進歩’の位置づけが下がるだけ下がった現実を反映しているようだ」と話した。 キム・ヒョシル記者 trans@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/617985.html 韓国語原文入力:2014/01/01 20:14
訳J.S(1827字)

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