原文入力:2011/12/05 22:39(2091字)
ユーロの故郷でも‘分裂の影’
イ・ボニョン記者
マーストリヒト市民たち
経済危機で働き口失うや
民族主義・排他性 強まり
ヨーロッパ一つの屋根の下の統合が
自身の暮らしを揺さぶったと考える
‘ホワイト スワン’とは、危機が反復されているにも関わらず解決策を出せない状況を示す。ヌリエル・ルビーニ米国ニューヨーク大教授が著書<危機経済学>で、予期できない危機という意味の‘ブラック スワン’に備えて現在の経済危機を説明したことに由来する。最近の日常化された経済危機は世界が‘ホワイト スワンの時代’に入ったことを意味する。 反復される危機の中で所得の両極化は激しくなり中産層は没落している。 混沌の中で漂流するヨーロッパと米国の経済危機現場を探ってみる。
由緒深い建築物が列をなしているオランダ東南部マーストリヒトの旧市街地のとある路地。50代の男性3人が露天カフェに座りコーヒーを飲みながら、昼間一時を過ごしている。 ユーロゾーン経済危機と関連した質問を投じると、すぐにギリシャに対する糾弾があふれた。紙巻タバコを深く味わっていたヨー プリントは「銀行らと、実際に稼いだより多く使う国家どもが問題」として「ギリシャのようなところはユーロゾーンから退出させなければならない」と声を荒げた。友人のケース パンソメロンは「55才になれば退職して年金を受け取るというのが話になるか」として、ギリシャとイタリアのような南ヨーロッパの‘食べて遊んでばかりいる文化’が問題だと主張した。
先月16日に会ったオランダ マーストリヒト市民はそのように不満を吐きだした。ヨーロッパの南のすみに位置したギリシャで発生した危機が自分たちの暮らしを揺さぶっていると腹を立てる。観光客が減り最近カフェを閉めたというプリントは「通りに人がいないじゃないか」として「私矢この友人らをはじめとしてしばしば付き合う友人が5人いるが全員が失業者」と話した。パンソメロンは福祉設計士をしていたが解雇されたという。
彼らの反応がさらに意味深長に聞こえるのは、マーストリヒトが20年前にヨーロッパ現代史の大きな転換点となった条約が誕生したところであるためだ。 1991年12月9~10日、ここで開かれた首脳会議で合意して2年余り後に発効されたマーストリヒト条約で共通市場に過ぎなかったヨーロッパ経済共同体(EEC)は‘政治共同体’を追求するヨーロッパ連合(EU)へと発展する。もう一つの核心合意事項が最近経済危機の中心に置かれたユーロ貨幣の導入と経済通貨同盟の創設だ。
だが、一時繁栄するヨーロッパの象徴だったユーロは今や苦労の種に転落する危機だ。プリントは「それでもそういう重要な条約で有名になった都市で生活することは誇らしくないか」という質問に「こうしているのに誇らしいことが何があるか」と反問した。
こういう情緒は‘ユーロの故郷’でありドイツ・ベルギーと接した国際都市であるマーストリヒトでも民族主義と排他性を刺激している。 マーストリヒトが州都であるリンブルフ州では昨年の総選挙で極右指向の自由党が最多得票(26.9%)を得て異変を起こした。 2006年総選挙時は自由党はこの地域で10%を得るのにとどまっていた。カトリック地域のリンブルフ州では伝統的にキリスト教民主党が優位を占めていたが、失業率が上がり東ヨーロッパ移民者が入ってくるや自由党支持者が急増した。
リンブルフ州出身でオランダ自由党所属のヨーロッパ連合議員 ローレンセ スターソンは「ユーロ危機は無制限的ヨーロッパ統合という誤った考えの危険性をはっきり示している」として「(自由主義経済学の大家である)ミルトン・フリードマンもはるか以前にユーロゾーンの失敗を予想していた」と話した。スターソン議員は「ユーロゾーンに残る限り、競争力不足というギリシャの問題は決して解決されない」としてギリシャをユーロゾーンから分離しなければならないと主張した。
‘それでもヨーロッパ統合が生きる道’という側では、事態を心配そうに眺めている。マーストリヒトでヨーロッパ法を勉強するホドゥリグ メスキタ ドゥ クーニャは 「ヨーロッパ人がこれほど繁栄を享受し戦争から自由になったのはヨーロッパ統合のおかげなのに、人々が突然否定的な面だけを強調している」と話した。
今、ヨーロッパ人たちの目はマーストリヒト合意から20年になる日、ユーロを生かすために集まるヨーロッパ首脳たちに向かっている。 ユーロゾーン国家の財政統合方案などを議論する9日ベルギー、ブリュッセルのヨーロッパ連合首脳会議はヨーロッパ国家の分裂か、或いはさらに強い統合かを分ける分岐点だ。 マーストリヒト/イ・ポニョン記者 ebon@hani.co.kr
原文: 訳J.S