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国家の正当な政策もISDの前には無力

登録:2011-11-02 10:44

原文入力:2011/11/02 09:48(1687字)
チョン・ウンジュ記者


他国はほとんど訴訟をしていないが、米国は別


メキシコ、1億9180万ドル 賠償
蔗糖産業保護ための消費税にアメリカの液状果糖企業らが提訴

アルゼンチン、1億6500万ドル 賠償
30年間水道運営権を持ったアメリカ企業、不良管理により権利を剥奪されるや提訴

カナダ、タバコの箱規制案 撤回
‘まろやかな味’ 表記禁止の導入推進に対しフィリップ・モーリスが抗議書を送り阻止


政府は投資家-国家訴訟制(ISD)を我が国が1967年から結んだ81ヶの投資協定で導入している制度だとして、韓国人による国外投資を保護するための装置と説明している。しかし我が国が相手国を提訴したり、外国投資家に提訴されたことはこれまで一度もない。米国が含まれていなかったためだ。

実際、この制度を主に利用している国は米国だ。昨年末までに知らされた国際仲裁事件390件の内、米国投資家が申請した事件が108件、米国政府が提訴されたものが15件で全体の31.5%を占める。特に1994年に米国・カナダ・メキシコが結んだ北米自由貿易協定(NAFTA)が発効し仲裁事件が急増し、その実体が明らかになった。


ノーベル経済学賞受賞者ジョセフ スティグリッツ米国コロンビア大教授は2004年1月<ニューヨーク タイムズ>に寄稿した‘NAFTAのこわれた約束’という寄稿文で「新しい種類の‘権利章典’が北米全体にかけて民主主義を弱化させる結果を産んだ。これによって環境、保健、安全のための各種規制が攻撃を受け存廃の危機に置かれている。 現在までの賠償額を合わせれば130億ドルを越える」と評価した。


メキシコは租税政策が問題になった。メキシコ政府はサトウキビで作った砂糖である蔗糖ではなく、他の甘味料を使った炭酸飲料に消費税20%を賦課することにした。輸入産液状果糖により立場を失った自国の蔗糖産業を保護するための措置だった。しかし液状果糖を生産する米国企業3社が自由貿易協定違反だとしメキシコ政府を仲裁手続きに回付し、仲裁審判部は1億9180万ドルの賠償を命じた。


2006年7月、アルゼンチン政府は米国-アルゼンチン投資協定のせいで米国企業アジュリに1億6500万ドルを支払わなければならなかった。 アジュリは米国企業エンロンから分社した企業だが、1999年ブエノスアイレス地域の水道を30年間運営する権利を得た。その時から水道水がまともに供給されず、翌年には毒性バクテリア問題まで起きた。地方政府が2001年に運営権協約を終結するやアジュリは仲裁手続きを申請し賠償金を受け取った。


このような仲裁審判の特徴は行政訴訟のように国家政策の正当性や動機は考慮しないという点だ。国家の何らかの措置により投資家の資産価値が減少し、それが協定違反ならば賠償対象になると判断する。米国企業のメタルクレドゥがゴミ廃棄場の設置許可を取り消したメキシコ政府を相手に起こした仲裁申請で国際投資紛争解決センター(ICSID)が2000年に出した決定文にこのような内容が含まれている。

外国人投資家が得られるものは巨額の賠償金だけでない。仲裁審判まで行かずとも国家政策を無力化することができる。2001年12月、カナダ政府がタバコの箱に‘まろやかな味’と表記することを禁止する規制を導入しようとしたが、米国のタバコ会社フィリップ・モーリスが自由貿易協定違反だとし抗議書を送った。カナダ政府は投資家-国家訴訟制にともなう賠償金負担を計算してみた後に規制案を撤回することにした。 去る7月、わが国政府も4大河川工事で供給過剰になった掘削機の新規登録を制限する‘建設機械需給調節’政策を自由貿易協定のために放棄した経緯がある。


チョン・ウンジュ記者 ejung@hani.co.kr


原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/503536.html 訳J.S