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【 ハンギョレ in 】“質の悪い働き口”社内下請け ① 質の悪い働き口を作り出す財閥(1)

登録:2011-10-11 08:54

原文入力:2011/10/10 08:32(3004字)


月給も作業服も休憩室も…社内下請け労働者は“庶子扱い(非嫡出子)”


キム・ソヨン記者


←全南(チョンナム)順天市(スンチョンシ)海龍面(ヘリョンミョン)の「栗村(ユルチョン)産業団地」にある鉄鋼業者 現代ハイスコ順天工場。ここでは正規職労働者393人と社内下請け労働者500人が共に働いている。 キム・ソヨン記者


働き口は福祉の基本だ。 韓国社会で“良質な働き口”創出が停滞していることについては、社内下請けが重要な原因に挙げられる。 社内下請けは雇用不安と劣悪な労働条件で“質の悪い働き口”を代表している。 これまで“良質な働き口”を作り出してきた大企業と公共部門において、社内下請けは流行のように拡散している。 実態と原因、解決法を5回にわたって見てみよう。

現代ハイスコ順天工場の実態


全南順天市海龍面「栗村産業団地」にある鉄鋼業者 現代ハイスコは、順天の象徴的企業だ。 2008年にSPPエネルギーが栗村団地に入ってくるまでの10年間、この会社は順天唯一の大企業だった。 順天の若者たちが“外地”に出て行かずに故郷に生活の基盤をつくるためには、働き口が切実だった。 現代自動車グループの系列会社である現代ハイスコの“順天入城”は順天の人々の心をときめかせた。


二人に一人は社内下請け労働者
月給は半分、そのうえ解雇の不安


順天で生まれたパク・カンシク(仮名・34)氏。現代ハイスコに出勤するのも今年で6年目だ。しかし現代ハイスコの職員ではない。 彼は入社してから自分の“身分”が違うということを悟った。 作業服からして違っていた。 「一週間経ってから一緒に仕事をしているお兄さん(正規職)に尋ねると、私のことを下請けだと言いました」。パク氏の仕事場は数百度の熱気が吹き出てくる溶鉱炉だ。 鋼板を亜鉛でメッキする工程だが、スコップをもって溶鉱炉に浮いている不純物を取り除く仕事をする。不純物をきれいに除去しなければ不良が出るので、常に緊張していなければならない。 パク氏の業務は“亜鉛鍍金鋼板”を作るのになくてはならない仕事だ。


溶鉱炉作業などきつい仕事に配置
特殊作業服も与えられず火傷は茶飯事


パク氏の古い作業服にはとりわけ穴がたくさんあいている。 熱い亜鉛が飛んで来て服を突き抜け、彼の肉も溶かした。 パク氏のからだには数十の火傷の痕がある。 亜鉛から身を守る特殊作業服を要求したが、下請け業者は「金がない」と言って断った。 溶鉱炉作業はパク氏のような下請け労働者が3班3交代で順繰りに引き受ける。 早朝6時30分~午後2時30分、午後2時30分~夜10時30分、夜10時30分~午前6時30分の3班に分かれるが、5日ごとに勤務時間が変わる。 勤務班が変わる日は負担が大きい。 朝の勤務班の場合、早朝から仕事を始め午後2時30分に仕事を終わらせ、昼間しばらく寝たあと夜10時30分に再び出勤して夜を明かさなければならないためだ。 若い彼でも頭がぼうっとするのが常だ。 パク氏が一ヶ月に受取る給料は平均150万~160万ウォン(実受領額)、ボーナスのある月(年に4回)は190万ウォンだ。 彼は「工場の外に出れば2011年なのに、工場の中にいれば1970年代に生きているようだ」として「辞めたいと思うことも多かったが二人の子供(7才、5才)のことを考えて耐えている」と語った。


休憩室は騒音で対話困難
労組事務室も会社から20分


正規職は違う。 亜鉛鍍金工程で正規職は鋼板の厚さにより作業速度を調節する自動化システムの部分を担当する。 下請け労働者パク氏の目には、正規職が“ボタンを押すだけの人”に見える。 休憩室にも差がある。 パク氏は「正規職の休憩室はエアコンが二つもあり(防音処理になっていて)耳栓をしなくても静かだ」として「社内下請けの休憩室は騒音がひどすぎて対話をしようとすれば喉が痛いほど」と言った。 その上、正規職は4班3交代だ。 正規職は1ヶ月に8回休むが、下請け労働者は最大でも4回しか休めない。 それさえも、下請け労働者は人員が足りないうえに少ない月給を補充するためさらに稼がなくてはならないから、2回だけ休むケースが多いという。 組合事務室も正規職は工場の中にあるが、下請け労組は工場から車で20分程かかるところにある。


現代ハイスコ順天工場は、元請け(正規職)労働者393人に対し社内下請け労働者はそれより107人も多い500人(13の業者)だ。 職員2人に1人以上が下請け労働者であるわけだ。 現代ハイスコ唐津(タンジン)工場は元請けが580人、下請けが426人(10の業者)であり、蔚山(ウルサン)工場は生産職(300人余り)の場合、正規職は一人もおらず100%社内下請けだ。 蔚山(ウルサン)工場の正規職は唐津工場と順天工場に移ってきた。 現代ハイスコ非正規職労組関係者は「順天工場の場合、正規職は蔚山出身が多く、社内下請け労働者は大部分が順天出身」として「大企業が順天に入ってきて期待が大きかったが、結局非正規職ばかり増やした格好だ」と話した。


そのため地域社会の視線も好意的とは言えない。 順天でタクシー運転歴20年余というイ・マンス(仮名・51)氏は「順天では現代ハイスコが一番大きい企業だが、6年前に大きな闘い(下請け労組のストライキ)が一度あって、下請けが大変な労働条件のもとで働いているということが知られるようになった」として「外から見たら立派だが中は腐った企業という気がする」と語った。


「工場の外は2011年なのに工場の中は1970年代だ」

下請け労働者は工場で溶鉱炉作業だけでなくクレーン運転など労働強度の強い仕事を担当しており、電気・機械整備は正規職労働者と一緒にやっている。 製品包装作業をするキム・キルス(仮名・39)氏は「包装業務でも正規職は自動化システムを利用して作業をするが、下請け労働者は走りまわって手で直に包装をしなければならない」と話した。ハン・スンチョル現代ハイスコ非正規職労組委員長は「同じ工場で正規職より困難な仕事をしたり、 同じような仕事をしても賃金など労働条件が正規職の50~60%水準だ」と言い「また下請け労働者は現代ハイスコ職員ではないため、いつも正規職管理者らの顔色を伺い、周りの人に現代ハイスコに勤めていると堂々と話すこともできないなど、心理的にも非常に困難な状況にある」と話した。


現代ハイスコ下請け労働者は労働条件の差別だけでなく、2005年には労組設立などと関連して下請け業者が相次いで廃業し、120人余りが一晩のうちに失職するなど雇用不安も体験している。
このように社内下請け労働者はいつも劣悪な労働条件に苦しめられているが、現代ハイスコの当期純利益は2008年229億ウォン、2009年544億ウォン、昨年は1990億ウォンと、毎年増加している。


順天/キム・ソヨン記者 dandy@hani.co.kr


原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/499995.html 訳A.K