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銀行‘デルタ・ワン’投機…監視システム無かった

登録:2011-09-17 07:40

原文入力:2011/09/16 21:19(1671字)
イ・ヒョンソプ記者


銀行持分収益を残すために顧客の金で勝手に取り引き
利益金はそっくり‘ごっくん’…監視は難しい
* デルタ・ワン:危険分散のために資金の一部を他に投資


←クゥェク アドボリという一人のトレーダーが20億ドルという天文学的な損失を負わせたと分かったスイス銀行UBSのロンドン支社前を15日(現地時間)警備員が守っている。 ロンドン/ロイターニューシス


‘UBS事態’に見るモラルハザード
一人のトレーダーが20億ドル(2兆2240億ウォン)という天文学的な被害をもたらしたスイス最大銀行UBS事態が‘監視を受けない銀行システム’問題を再び水面上に引き上げた。UBSのトレーダー クゥェク アドボリ(31)が会社側の申告でロンドン警察に逮捕された15日(現地時間)、信用評価会社ムーディーズはUBSの信用等級下方調整を検討中だと明らかにした。

承認を受けていない取り引きを通じて大きな損失を及ぼしたいわゆる‘悪党トレーダー’(rogue trader)名簿に追加されたアドボリはUBSの‘デルタ・ワン’派生商品デスクを担当していた。デルタ・ワンはまだ一般の人にはなじみがうすいが、投資銀行では一般化された取引技法だ。2008年サブプライムモーゲージ派生商品によって銀行が莫大な損害をこうむるや、米国とヨーロッパ金融当局は銀行の‘自己売買’(銀行が直接金融商品を取引すること)を禁止した。 これに伴い、銀行は投資家の注文により取引をして手数料を受け取る以外には収益を創り出すことが難しくなった。その渦中に浮上したのがデルタ・ワンだ。


デルタ・ワンは投資家の注文により取引をする際に行う‘ヘッジ’(投資取引の損失を回避するための反対投資)の一種だ。例えば、銀を基礎資産にした投資商品を販売しつつ運用資金の一部を他の商品に投資し危険を分散する形式だ。主に株価連係証券(ETF)や為替先物などに投資する。ヘッジをした商品で基礎資産である銀以上の収益が出れば、銀行は販売手数料以上の利益を着服できる。顧客の資金で投資をするが、追加収益は銀行の持分となる一種の自己売買の性格を持っているわけだ。JPモルガンは昨年 デルタ・ワンが今後グローバル投資銀行らの主要収益源になるだろうと予想していたと英国<ファイナンシャル タイムズ>は伝えた。


問題は銀行がデルタ・ワンを危険分散手段ではなく収益源として認識して、トレーダーらにボーナスまで与えながら高危険投資を煽っているという点だ。2008年デルタ・ワン取引によりフランス ソシエテジェネラル銀行に70億ドルという天文学的な被害を抱かせたジェローム ケルビエルはその前年に6000万ドルの収益をおさめ銀行から41万6000ドルのボーナスを受け取った。米国<ウォールストリート ジャーナル>は「20億ドルの利益を抱かせた悪党トレーダーを何と呼ぶだろうか? 間違いなく社長!」と皮肉りもした。ケルビエルはさらに裁判渦中で「銀行は私の投資事実を知っていたが、損失が出た時から知らなかった振りをした」と主張した。


英国の銀行独立委員会(ICB)が金融危機が発生しても一般預金者に被害が及ぶことを防ぐために、小口金融と投資金融を分離する方案を骨格とする改革勧告案を去る12日に発表するなど、最近 全世界は銀行に対する監視の手綱を引き締めている。だが、派生商品の特性上こういう小さなスキ間からでもいくらでも途方もない損失が出るおそれはあるという点は相変らず難題として残るものと見られる。<ファイナンシャル タイムズ>は 「悪党トレーダーではなく悪党銀行が問題」と皮肉った。 イ・ヒョンソプ記者 sublee@hani.co.kr


原文: https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/496602.html 訳J.S