原文入力:20110705 10:31(2633字)
どこへ行っても「どこの大学を出ましたか」・・・就職・賃金差別の根拠に
イ・ジェフン記者
学歴がそのまま身分に・・・差別禁止法制化せねば
今日もお決まりのその質問が出てきた。「どこの大学を出られましたか?」一人が質問しただけだが、集いに参加した全員が同じ問いの込められた視線で見つめる。 高卒という事実を確認でもしようというのか。「○○観光大学ホテル経営学科を出ました」と答える。 一浪して入学したが一ヶ月で辞めた学校だ。
読書会の自己紹介の場で出身大学がなぜ気になるのか、チョ・スヨン(仮名・28・女)氏にはまったく理解できない。 だが“高卒”と答えた時にかもし出されるよそよそしい雰囲気に耐えるよりは、いっそのこと“ウソ”を言う方がましだ。
高卒のレッテルが一生足を引っ張る
大卒との賃金差 50代には二倍
学閥格差もますます激しくなり
もはや大学出ても非正規職
「同一労働同一賃金制度化
学歴学閥の差別をまずなくすべき」
高校時代に仲良くしていた7人の友人は大部分がソウルの有名大に進学した。 修能試験(訳注:大学入試のための一律試験、日本のセンター試験のようなものだが大学別の本試験が禁じられているため極めて重要度が高い)の点数が模擬試験より100点も低く出てしまったチョ氏としては入学願書を出さないことが自尊心を守る方法だった。 浪人してスパルタ式寄宿制予備校で一ヶ月に70万ウォンずつ払い勉強した。 4年制大学の警察行政学科が目標だった。 有名大に通う友人たちの前に堂々と立つためには警察という“権力”が必要だと考えたという。 しかしその年も、翌年も、大学の門は開かれなかった。
2004年ソウル鷺梁津(ノリャンジン)にある警察公務員試験対策塾に登録した。 警察のバッジは“三浪生”というくびきと“高卒”という“身分”を洗濯できる唯一の希望だった。 2年間に4回試験を受け、全部落ちた。 ストレスで偏頭痛が激しくなった。 ふと「私は本当に警察官になりたいのか。 虚像を追っているだけではないか」という気がしたと語った。
“ジョブマネージャー”になりたかったが、5ヵ月間に7ヶ所の人材派遣会社に履歴書を出したが、どこからも連絡がなかった。 月給120万ウォンで経理の仕事を始めた。“高卒”はそのまま“経理”に通じた。 2年後に職場を変わりカード貸出しの“テレマーケター”になった。他人を信用不良者にするかもしれない仕事をやるというのはまた別のストレスだ。 「8月に仕事を辞めるつもりです。 でも、高卒は経理やテレマーケター以外に仕事は見つからないといわれます。 私は何をしたらいいんでしょうか。」
韓国社会で学歴と学閥は“身分”であり“資本”だ。 学歴と学閥にともなう社会的差別、そして労働条件での差別が、大学教育に対する無限需要を産む。 こういう構造では皆が大学進学を“強要”されざるを得ない。 いわゆる“一流大”が年間授業料2000万ウォンを要求するとしても、学生と父母は“一流大の身分証”を手に入れるためにその2000万ウォンに耐えようとする。 "半額授業料”を実現したとしても、依然として解けない宿題だ。1次的な問題は学歴にともなう賃金格差だ。 雇用労働部の「雇用形態別勤労実態調査」の結果を見れば、2009年基準で25~29才の高卒労働者の賃金を100とした場合、中卒以下は89.7、専門大卒は103.4、大卒以上は124.2であった。 しかし、55~59才の賃金では専門大卒136.7、大卒以上は222.6で高卒との格差がさらに広がる。 学歴水準別労働時間格差を見ても、2009年高卒労働者の労働時間を100とした場合中卒以下は103、専門大卒は94、大卒以上は89.1となっている。 大卒以上が高卒者より10%以上少ない時間働きながら賃金は最大2.2倍にもなるという話だ。
ここに“学閥プレミアム”が加わる。 去る4月、韓国労働経済学会の論文集<労働経済論集>に掲載された論文「1999~2008年 韓国の大卒者間賃金格差変化」を見れば、2008年を基準として最上位13大学出身就業者は14~50位の大学卒業者より14.2%、51位以下の大学卒業者より23.2%、専門大卒業者よりは42%も賃金を多く受け取っているという調査結果である。 1999年には最上位13大学と14~50位の大学卒業者の賃金格差が1%に過ぎなかった。 9年間に“学閥プレミアム”がはるかに大きくなったのだ。チャン・スミョン韓国教員大教授(教育学)は「近頃は最上位圏の大学の出身者が相対的に過去より就職に困難を経験しているのは事実だが、実際に就職できさえすれば“学閥プレミアム”をより一層強固に享受することができるということを示す研究結果だ」と話した。
最近になって問題になっているもう一つの問題は、大卒者でさえ半分は非正規職に転落し“新貧民層”になりつつあるという点だ。 教育科学技術部が昨年発表した資料を見れば、大学を卒業して就職を望む48万人余のうち正規職就業者は55%の26万人余りに過ぎなかった。 韓国労働研究院が去る4月に出した「学歴別労働市場ミスマッチの分析と教育制度改善課題」という報告書でも、就職できなくて“卒業猶予”等で長期学籍を保有している学生が100万人を越えており、彼らが大学に残っているために発生している“放棄された所得”等を表す間接教育費は5兆4178億ウォンに達することが明らかになった。
キム・ユソン韓国労働社会研究所長は「大学を出ても与えられる働き口は半分は非正規職で、大学に行かなければさらに思わしくない働き口しか得られないため、誰も彼もが懸命に大学に行こうとし、大学でも“スペック積み”に没頭する」として「大企業など労働市場でちゃんとした正規職の口を増やし、“同一労働同一賃金”の原則遵守を強制する装置を作るなど非正規職に対する処遇を改善しなければならない」と指摘した。
イ・ジェフン記者nang@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/485835.html 訳A.K