原文入力:2011/06/18 16:47(4299字)
←10,11日の二日間にわたり開かれる‘SMタウン ライブ ワールド ツアー イン パリス’公演のために8日夕(現地時間)フランス、パリ ドゴール空港に到着したデュオ‘東方神起’とグループ‘シャイニー’、‘f(x)’がひと目見ようとフランス、英国、イタリア、スイスなどから訪ねてきた1500人余りのファンたちの歓呼を受けながら入国している。 パリ/ SMエンターテインメント提供、ニューシス
去る10~11日、フランスで国内最大の芸能企画会社であるSMエンターテイメントが主催した‘SMタウン ライブ ワールドツアー’公演が開かれた。これに対して国内外の数多くのマスコミが「韓流がヨーロッパに上陸した」として特筆大書した。だが、11日 フランスの有力紙<ルモンド>は「製作会社の企画で育まれた少年少女たち」として韓国のアイドル育成システムに対し批判的な記事を送りだし注目を集めた。韓国のアイドルが‘産業・文化的成果’を上げていることは明らかだが、育成システムについては批判世論も侮れないのが現実だ。これについて大衆文化専門家たちの意見を聞いてみる。
←パク・ウンソク大衆音楽評論家一方的な統制では音楽的省察を期待できない
私は企画会社のアイドル育成システムを批判的に眺める立場だが、その具体的事例を指摘し改善策を提案するつもりはない。批評家の立場からより大きな関心事は、冷静に言ってアイドルを育成する方式を評価するよりは、そのようにして育成されたアイドルの力量を計ることにある。例えば、厳格なアイドル育成システムの元祖と言われる米国モータウン レーベルの事例を見よう。 社長ペリー ゴディー ジュニアは所属歌手たちに歌唱と振りつけはもちろん、笑い方や歩き方を指導し、さらにタバコの格好良い吸い方まで教えた。フォーディズムの信奉者であった彼は、そのような教育過程を "品質管理" と称しもした。彼にとって歌手の個性は重要ではなかった。販売量こそが重要だった。 私はそのようなモータウンの方式に批判的だ。 だが、そのような過程を通じて生産された商品の中に優れた作品があったことを否定しはしない。同じだ。米国のモータウンと韓国のSMタウンを他の基準で見る理由はない。
ただし、モータウンの最も偉大な作品が結局はペリー ゴディー ジュニアの方式を拒否した自意識の強いミュージシャンたち、マービン ゲイやスティーヴィー・ワンダーから出てきたことを吟味してみる必要がある。数多くのアイドル グループが短い人気を享受した以後、果たしてどんな成果をあげられたかを確認すれば、その育成システムに内在した根源的限界を把握できる。要するに、エンターテイナーの技術は教育できるかも知れないがミュージシャンの省察を教えることはできないということだ。Kポップのアイドル育成方式が当座は海外市場で効果を生み出せるかも知れないが、全世界がそのような方式でアイドルを生産し始めるならば、その時も今と同じ競争力を維持することができるだろうか? タイが第2のニックンを、中国がまた別のビクトリアを直接発掘して出てきた時、私たちが前面に押し出すことができる比較優位なメリットが何かを考えてみる必要がある。
昨年の今ごろ、全世界音楽産業関係者たちの例年カンファレンスである‘ミュージック メトス’に参加した。Kポップの成長はそこでも重要な話題の一つだったが、それが窮極的に大衆音楽産業の本土である米国や英国市場でも成功できるかについては各国の専門家パネルは懐疑的な立場だった。「工場で印刷したような音楽では難しい」ということだった。個性的な音楽と創造的力量が確かでなければならないという意味だ。周知のとおり、それは整形手術や合宿訓練で得られるものではない。 <ルモンド>記事の行間に込められた論点もそれだ。ひたすらスターになるという一念で一方的なシステムの統制を自ら要望した子供たちから音楽的自意識を期待することは難しいという意味だ。結局は音楽だ。
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←イ・スンハンTV評論家画一化見解は偏見…改善は現実肯定から出発すべき
少女時代とアイユ(IU)は共に企画会社の徹底したプロデューシングの下で活動している。音楽の他にも各種芸能やドラマで活躍して、ファンと大衆の熱狂の中で時代のアイコンと言われている。アイユがフォーク音楽をするからと言ってアイドルでないと見る理由はない。韓国のアイドル産業はすでにその中にジャンル的多様性を整えた独立的な生態系となった。その中で活躍する人々がみな同じようなシステムで育成されているという考えは偏見に近い。
あえて共通点を探そうとするなら韓国のアイドルは万能であることを要求されているという点だ。踊りとライブを同時に消化しなければならず、演技力もまた、水準を満たさなければならず、喋りも個人技も備えなければならない。‘エンターテインメント産業の全人’、苛酷に見えるこの目標は実際のところ大衆が設定したものだ。 パフォーマンス型歌手が多くなかった時期に大衆はアイドルに“マイケル・ジャクソンのように踊りながらライブし作曲もしなさい”と要求し、ドラマに出演する人々には“人気だけを信じてむやみに他人の食卓をのぞき込む”という批判を投じた。
←少女時代とアイユ(上) ハンギョレ資料写真、SMエンターテインメント提供.音楽にだけ専念してもかまわないなら良かったが、MP3の到来に歩調を合わせられなかった韓国音楽市場の没落はそれを不可能にさせた。収益窓口を多角化しなければ生存が不可能な状況、解決法は大衆の期待値を全て満たす万能新人を育成するということだった。育成期間が長くなるほど支出は増加し、なおさら所属歌手が創り出す収入に対する依存度は高まった。自然に契約期間は長くなり、アイドル産業はハイリスク・ハイリターンの賭博となった。
晩時之歎(時既に遅し)、2000年代後半 汎アジア市場を抱えてアイドル産業は比較的安定した市場を確保し、不公正な契約構造から歌手を保護するための標準専属契約書が登場した。2008年に公正取引委員会が提示したこの契約書は‘勧告事項’だが、国内3大企画会社は標準契約書の水準を履行しようと努力中だ。システムはある程度 安定化状態に入り、一人の歌手を10年を超えて強制的に縛っておくような契約は次第に消えている。 スーパージュニアの専属契約は5年、ビッグバンも5年であり、2PMもまた勧告案最長値の7年を越えない。
現システムに問題がないということではない。しかし、かろうじて賭博から産業の段階に入り込んだ今の時点で必要なことは、変革でなくシステムをどのように徐々に改善できるかに対する悩みだ。この不完全なシステムまで如何に多くの試行錯誤の末に出てきたことかを考慮すればなおさらだ。そしてその改善案を作る作業はアイドル育成システムに対する肯定からしてこそ可能だろう。
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←チェ・ジソン大衆音楽評論家人材育成と投資回収‘両刃の剣’
Kポップ・韓流に対する論争が新しいラウンドに入り込んだ。いわゆる‘ポスト韓流’の成就とともにアイドル訓育システムが今一度 問題的話題となった。良く知られているように、アイドルとして代弁されるKポップは特有のスターシステムを通じて構築された産物だ。その中でも‘練習生システム’(または‘アカデミー’)と呼ばれる教育・訓練システムが最も大きな特徴だ。 これを基盤にエンターテインメント会社は企画と製作からマネジメントに達するあらゆる分野と過程を包括し統制している。これは初期とは異なりエンターテインメント会社が巨大な複合組織に変貌し、いわゆる‘ワンソース マルチユース’という戦略を採択したことと関連がある。それで時間が流れるほどに訓育の対象は拡大・細分化され歌唱やダンスはもちろん、語学が必須となり、演技と‘芸能感’のような‘個人技’、ひいては容貌の矯正も包括される。そのために練習生は幼い年齢で抜擢され長期にわたり疲れてだるい訓練を経る。
最近進化したと評価されるアイドル ポップ音楽はこういう過程を通じて誕生した。アイドル グループの多様なイメージやダイナミックで一糸不乱な群舞はこのように‘製造’された。エンターテインメント会社別に‘ブランド’を創り出し、更に‘国内歌謡’の意味を越える‘韓国産アジアン ポップ’を創り出したのもこのシステムの賜だ。
ところが訓練と育成システムが徹底的に体系化されるほど、その意味は否定的になる。創意的な部分まで調整され管理されるという点でも画一的な音楽を量産しているという批判は昨日今日のことではない。同時にエンターテインメント会社の投資が増大し、これを短期間内に最大限回収するようシステムが強化された。そのために練習生がデビューした後にも、多くの労働量に耐えなければならず長期にわたり‘専属’とならなければならない。このように企業と個人の間に成り立つ不公正な契約慣行や不適切な補償体系は今後も絶えず俎上に上がるだろうし、特に西洋の現実と比較されながら‘海外進出’でもジレンマとして作用するだろう。
ところで、これはアイドル スター システムが資本と産業の論理に編入される過程から始まったものだ。過度な労働強度とそれを補償しなかった韓国の経済・社会構造と関係がなくはない。極度の競争を強調する資本主義社会の断面図そのまま露呈している。Kポップの外国進出という神話もやはり‘輸出型産業’を強調しなければならない韓国型産業構造と同型関係と見てもおかしくない。そうした点でこのシステムは‘誠実と努力のファンタジー’と‘勤勉イデオロギー’を通じて労働力を集約し、その他の問題を打開しようとした‘経済成長神話’の文化的バージョンではないか。こうしてアイドル スターシステムは両刃の剣となる。
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/argument/483303.html 訳J.S