原文入力:2011-04-17午後04:21:55(6425字)
大統領府・政府の毒々しい眼差しにも関わらず4ヶ月に2回の値上げ
国際価格 急騰…製粉・食糧など地球的危機
←ソウル、中区、蓬莱洞のある大型マートで市民が小麦粉製品を見ている。国際穀物価格が上がるや小麦粉の国内価格が同時に跳ね上がっている。キム・ギョンホ記者
我が国製糖業界の先頭走者はCJ第一製糖だ。この会社は去る3月11日、特異な報道資料を出した。内容は簡単だった。砂糖価格を9.8%上げるということだ。 ところが変だった。業界で製品の価格を上げる際に大騒ぎして報道資料まで出すケースは多くない。価額上昇は立ち上がって広報することではないためだ。普通なら会社は製品包装をこっそり変えたり、容量を減らす形で価格を上げる。CJの報道資料はそれで目立った。報道資料を見れば、価格を上げなければならない理由を3ページにわたりぎっしり書いてあった。絵や表もていねいにのせられた。誰かを説得するための努力がにじみ出ていた。ところで業界の慣例を考えれば、その誰かが消費者である可能性は少なく見えた。その‘誰’が誰だったのだろうか。前後の脈絡を見れば、CJの視線が向かったところは大統領府や知識経済部である可能性が非常に高い。 話は3年前に遡る。
‘アグフレーション’最高水準
2008年3月17日、大統領府は知識経済部の業務報告を受けた。李明博大統領はこの席で「生活必須品目50ヶ余りの価格を集中管理せよ」と指示した。国際穀物価格が最高値に迫り、原油価格が揺れ動いた時期だった。企画材政府が乗り出した。1ヶ月も経たない4月4日、チェ・チュンギョン当時企画財政部1次官は「52ヶ品目の価格動向を集中点検する」と明らかにした。小麦粉とラーメン等52ヶ生活必需品項目の中には砂糖も挙げられていた。企業等に価格を上げるなという政府の話は事実上‘命令’に近かった。当時、物価政策を総括する役割を受け持ったチェ・チュンギョン次官はほどなく為替レート政策の失敗責任を負い席から退いたが、今年初め 知識経済部長官として華麗に復帰した。戻ってきた彼は再び専攻を生かしている。精油業界を圧迫しガソリン価格を10%下げる‘物価解決者’の役割を再び一手に引き受けている。CJ第一製糖の異例的な哀訴にはこうした背景があった。
それではCJ第一製糖はなぜ‘向こう見ずに’価格を上げたのだろうか。しかもCJは昨年11月にも砂糖価格を9.7%上げた。わずか4ヶ月の間に価格を2度も上げたわけだ。理由を調べれば、歴代最高水準まで跳ね上がった国際原糖価格があった。砂糖材料である原糖価格は去る3年間に3倍以上暴騰した。業界資料を見れば、2008年1月、1ポンド10.9セントだった原糖価格は去る2月、31.6セントまで跳ね上がった。「最悪の状況」というCJの説明がおおげさなだけではなかった。CJ関係者は「価格を上げなければ砂糖事業部門で今年上半期だけで400億~500億ウォンの赤字が予想された」と話した。製糖業界の別の関係者は「価格を上げれば政府が公正取引委員会や国税庁を動員し圧迫を加えたが、原糖価格があまりにも大きく上がったために仕方なかった」と話した。
製糖業界だけがこういう迂余曲折を経ているのではない。隣接している製粉業界や飼料業者、食品企業等も内情は同じだ。砂糖だけでなく小麦粉、とうもろこしなど主要食糧価格が国際市場で最高記録を越えたり肉迫しているためだ。国連食料農業機構(FAO)が3月に出した‘世界食品価格動向’資料によれば、状況は尋常でない。機構が穀物、油脂類、肉類、砂糖など55ヶ品目の価格を集めて作成する‘食品価格指数’(FFPI)が8ヶ月連続で236点(2月基準)まで騰がった。1990年機構が指数を集計した以後、最も高い水準だ。食糧価格のために物価が暴騰する現象を‘アグフレーション’と称する。 代表的なアグフレーション時期に挙げられる2008年の食品価格指数が224点だった。今年に入って1月の指数は史上初めて230点を越えた。4月7日に発表された3月食品価格指数も230で2月よりはやや弱まったが、高どまりは続いている。
品目別には小麦・とうもろこしなど主要穀物価格がいっせいに暴騰している。 米国産冬小麦価格は去る2月 t当たり362ドルで、1年前より75%も上がった。米国産とうもろこし価格もt当たり287ドルで2010年2月より77%も跳ね上がっている。この他にコーヒーと大豆価格も50%以上上がった。
FAO “10年内に最大40%さらに上がるだろう”
価格上昇の原因は短期的には2つが主に挙げられる。何よりも昨年の気象異変を挙げることができる。日照り・洪水などの自然災害は世界穀倉地域を大部分なめ尽くし過ぎ去った。世界3大穀物輸出国であるロシアは2010年夏、最悪の猛暑と日照りに襲われた。昨年小麦収穫量は展望値の8500万tを大きく下回る6100万tに過ぎなかった。中国小麦生産の3分の2を占める山東、江蘇など北部5省も深刻な日照りで収穫量が展望値の半分水準まで墜落した。ブラジルとアルゼンチン、オーストラリア、米国などでも大豆ととうもろこし栽培に支障が生じた。
国際石油価格も食糧価格を押し上げている。韓国石油公社の石油情報網資料を見れば、ドバイ油価格は2008年12月バレル当たり40.5ドルから一貫して上がり今年4月に入ると110ドル台を越えた。食糧価格は石油価格と連動する傾向がある。大規模農業に必要な農業機械、電力、長距離輸送にはばく大な量の石油が消費されるためだ。
食糧価格の上昇勢が1~2年内に終わる問題でもない。経済協力開発機構(OECD)とFAOは昨年出した‘2010~2019農業展望報告書’で“今後10年間、菓子・飼料用穀物の平均価格は1997~2006年の平均価格より16~40%さらに上がるだろう”と予測した。報告書は“特に低開発国家で人口増加速度に合わせ食糧を増産するためにより一層困難な時間を過ごすだろう”と付け加えた。
穀物価格上昇が長期化するという観測には二種類の要因が作用している。先ずバイオエネルギーの活性化だ。米国やヨーロッパ連合を中心にバイオエネルギー生産が増え、原料穀物のとうもろこしと油脂作物などの需要が急上昇している。OECDの昨年資料を見れば、バイオエタノール生産量は2005年 419億リットルから2010年には930億リットルへ2倍以上増えた。2011年には1千億リットルを越えると展望された。ここに投入されるとうもろこしは2011年基準で1億2200万tに達する。米国とうもろこし需要全体の42%にもなる。
中国とインドの経済成長も食糧需要を増やしている。特に中国人は所得水準が急速に高まりながら肉類消費を増やしている。 2001年に1人当り49.2kgだった肉類消費量は2010年には59.5kgに増え、2020年には77.7kgまで増えると予想されている。肉類を生産するには穀類よりはるかに多くの資源を消耗する。人一人の年間食糧(100万kcal)をさつまいもで充当しようとすれば0.04haの土地が必要で、米で充当しようとすれば0.07haが必要だが、牛肉で充当するなら何と6.80haが必要だ。インドでも菜食から肉食へ食生活が変わりながら1980年代以後、肉類消費が3.5倍に増えた。爆発的に増える需要を満たそうとするなら、供給も共に爆発しなければならないという意だ。
長期的な'食料危機’の影
その上、世界人口膨張も主要な変数だ。2000年に61億人だった世界人口は毎年1.1%ずつ増え、昨年には69億人に増えた。2050年には90億人に増える展望だ。食糧が入らなければならない‘口’がそれだけ増えるという意だ。英国の経済週刊誌<エコノミスト>は“今飢えている10億人の人口まで加えれば、今後40年間にインドが3ヶ新たにできると見れば良い”と説明した。
長期的な‘食糧危機’の影も足早に迫ってきているようだ。FAOが2009年に出した‘2050年人類生存’報告書を見れば、2050年までに人類は91億人、34%増えることになるが、これを養うには食糧生産は70%増やさなければならないと分析した。FAOは“穀物生産は現在の21億tから30億tに増えなければならず、肉類生産は2億t以上増え4億7千万tまで増やさなければならない”と明らかにした。昨年10月、韓国を訪問したザック ディウフFAO事務総長は「開発途上国で農業基盤施設を拡充するためには、先進国が農業分野の公的開発援助(ODA)を年間440億ドルまで大幅に増やし、開発途上国では公共支出の内、少なくとも10%を農業に使わなければならない」と話した。
米国、ワシントンにある国際食糧政策研究所(IFPRI)が描く未来はさらに暗い。IFPRIは昨年12月に出した資料を通じ2050年までにとうもろこし価格は42~131%、米穀は11~78%、小麦は17~67%上がると見通した。研究所は「人口増加と所得増加により需要は増えるが、地球環境変化の影響で生産増加は鈍化するだろう」と展望した。
食糧価格の展望が陰る中で世界各国も鋭敏に動いた。国内だけでやりくりする姿も見せている。昨年小麦農作業で痛い目に遭ったロシアが穀物輸出禁止令で先手を打った。ロシア政府は穀物輸出を昨年12月まで禁止すると発表したが、再び‘期限’を今年6月まで延長すると明らかにした。世界麦輸出量1位のウクライナ政府も昨年の凶作で穀物輸出を2009年の半量水準に制限した。パキスタンも昨年国土全体の4分の1ほどを覆った洪水の余波で玉ネギ価格が2倍近く上がるや去る1月に玉ネギ輸出を電撃中断した。カレーに必須な材料が必要なインドがトマト輸出禁止で報復した。 FAOは昨年出した報告書で“各国の農業政策が変化の様相を示している”として“政府が食糧政策に積極的に介入し、国際交易の代わりに食糧自足側に政策中心が変わっている”と説明した。
世界銀行“物価上昇のために5500万人が貧困層へ転落”
状況が尋常でなくなり、今年の主要20ヶ国(G20)議長国のフランスが乗り出した。フランスは来る6月 G20農業長官会談、11月 G20首脳会議を通じ食品価格安定化方案を探してみる計画だ。それでも国家間の利害関係が交錯し合意に至ることは難しそうだ。ティモシ ガイトナー米国財務長官は去る2月8日「農産物市場に政府が介入することは経済回復を阻害しかねない」と話した。○○は「農産物国際価格を規制しようというフランスの提案を米国が事実上拒否したこと」と伝えた。
食糧価格が上がれば一番最初に打撃を受けるのは当然に貧困層だ。FAOは食糧危機を分析した昨年の報告書で、飢餓に苦しむ人口が2006年の8億5千万人から2009年には10億人に増えたと説明した。機構は「金融危機と食糧価格暴騰が原因と思われる」と分析した。世界銀行も2008年以後、食糧価格不安定ために貧困層に転落した人口が世界的に5500万人に達すると推定した。食糧価格急騰が中東国家の政治不安の原因になったということはすでに定説だ。ロバート・ゼーリック世界銀行総裁は去る2月「食糧価格が中東地域不安の主な原因ではないが、インフレーションを煽りたて社会不安を産んだ要因であることは事実」と説明した。
低所得層に及ぼす波紋は国外だけの話ではない。去る3月31日、我が国統計庁の発表を見れば、市場の買い物カゴ物価が大きく上がりながら、昨年低所得層の食品支出負担が2005年以後 最も高く現れた。昨年所得下位20%のエンゲル係数(家計支出中で食料品負担比率)は20.5%であり、2005年(20.7%)水準に迫った。食品価格が騰がる時、低所得層が被る苦痛は富裕層よりも大きくならざるをえない。統計庁の‘家計動向’統計によれば、下位20%の支出の内で食料品・非酒類飲料の比重が20.7%だが、上位20%ではその比重が12.0%に過ぎない。経済日刊紙の<韓国経済>は最近これと関連して興味深い統計を紹介した。各階層の支出構造に応じて階層別物価上昇率を求めたが、上位20%には去る3月基準で物価が4.4%だけ上がったが、下位20%では物価が5.0%上がったという分析が出てきた。食糧価格上昇の頸木は階層ごとに重さが違わざるをえない構造だった。
その上、我が国は食糧価格上昇に脆弱にならざるをえない構造だ。我が国の場合、主食の米自給率は104.6%だが、小麦ととうもろこしは0.8%、豆は8.7%、麦は26.6%で、全体穀物自給率が26.7%に過ぎない状態だ。OECD 31ヶ国中29位であり最下位圏だ。‘メシの種’を外国が握っている状態だ。世界穀物市場が波打ち、去る3月 我が国の農・畜・水産物物価も1年前より何と14.9%も増加した。食糧価格上昇という嵐は我が国に防壁の盾もなしで狂風として襲っている。
放置された農業増産政策、消える農地
尻に火がつき肉が焦げる臭いまでして、政府があわただしく対策準備に出た。李明博大統領は4月7日、ソウル、良才洞の農協ハナロクラブで開かれた第82次国民経済対策会議で「穀物自給率を50%程度まで高める必要がある」と話した。彼は「農産物は短期戦略も必要だが次世代のための長期戦略も重要だ」としてこのように話した。
展望は? 明るくない。我が国政府の食糧自給政策は今まで事実上放置されてきた。まだ国家戦略次元で食糧安保政策が出てきた事例はない。国家食糧自給率目標値は2007年に出てきた‘農業農村発展基本計画’で初めて提示された。それさえも農業政策の細部項目で貧弱に登場した。内容も直接目で見るまでは信じ難い。政府は長期的に自給率を‘低くする’ことを国家戦略として捉えていた。当時、政府が提示した穀物自給率目標値は2015年までに25%に達するということだった。基本計画で提示された2004年の大韓民国穀物自給率は26.8%であった。11年間に自給率を1.8%ポイント下げることが政府の目標だったという意味だ。また、米自給率は2004年の96.5%から2015年には90.0%に、麦類の自給率も7.0%から4.0%に下げるという‘目標’を設定した。
農林水産食品部関係者は「農産物生産量が減る流れを政府も確実には防止できないという判断により、2007年の食糧自給率目標値を設定したものと理解している」と話した。彼はまた「去る1970年代、春の端境期を越えた以後では農政に食糧安保という概念は率直に言ってなかった」と説明した。国策研究所のある関係者は「現在の自給率水準では国家経済次元で国外の価格上昇に脆弱にならざるを得ず、何よりも食糧が武器化する最悪の場合に悪影響を防ぐ方法がない」と話した。
政府が農業増産政策を放置している間、農地は継続的に減り続けた。農林水産食品部資料によれば、2006年から昨年までに10万508haの農地が消えた。汝矣島(848ha)の約119倍に及ぶ土地だった。
キム・ギテ記者 kkt@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/473357.html 訳J.S