原文入力:2010-10-04午前08:58:20(2454字)
[開け経済] 診断&展望| 貸切不安と住居政策
売買価格上昇を前提に出来なければ貸切制度 維持できない
庶民層 基本的生存権 威嚇すれば深刻な問題に
ホン・テソン記者
貸切→家賃 転換‘賃貸借構造変化’に備えなければ
最近、住宅売買価格の安定傾向が続く中で、貸切価格が高い上昇勢を示している。国民銀行の全国住宅価格動向調査によれば、今年の全国アパート売買価格は3.2%上昇に止まったが貸切価格は10.6%上昇した。ソウル地域のアパートの場合、売買価格は1.7%上がったが、貸切保証金は13.8%急騰した。これにより2008年末に下限を迎えた貸切価格/売買価格比率は持続的に高まり、去る8月末現在の全国アパートとソウル アパートの場合、各々55.7%、42.6%に至っている。
最近の貸切価格上昇は貸切市場への新規供給鈍化と貸切需要増加から始まった。数年にわたる住宅建設不振と未分譲住宅の増加は貸切市場への新規住宅供給を萎縮させたが、売買価格の安定化および追加下落に対する期待心理などで潜在的な住宅購買待機者らが貸切市場へ切り替えることにより貸切需要はかえって増えた。ところが、このような貸切市場の需給変化は単に一時的な要因ではなく、我が国住宅賃貸借市場の中長期的な構造変化を知らせる信号弾でもあるという点でもう少し詳しく調べる必要がある。
以前までは‘不動産不敗論’が広く知られてきたが、実際に統計資料を覗いて見れば我が国の住宅価格が持続的に上昇してきたわけではない。1980年代後半、住宅価格急騰を背景に政府は住宅建設200万世帯など新しい都市建設に注力し、このような供給増大に力づけられ1991年を頂点に住宅価格は数年間下降安定傾向を示した。盆唐や一山など、1期新都市が相次ぎ入居した91~96年の6年間、ソウル アパート売買価格は年平均1.0%下がり、興味深いことは同期間にソウル地域のアパート貸切保証金は年平均6.4%上がった。その結果、91年40%にも達し得なかった売買価格対比貸切保証金の比率は持続的に上昇し、96年には50%台後半まで上昇した経緯がある。
90年代の事例と最近の経験に見られるように、貸切保証金と売買価格は必ずしも同方向には動かない。住宅売買価格の安定は貸切住宅の供給減少と需要増加を誘発することにより、貸切価格を上昇させる要因として作用する。貸切住宅の供給者である家主の立場から見れば、「貸切にして家を買う」ことは、住宅保証金という形態で他人資本を借り、テコを活用した住宅投資をすることだ。貸切/売買価格比率が100%に達しない限り、自己資本が必要になり、家主の投資収益は売買価格上昇にともなうキャピタルゲインを通じてのみ可能だ。住宅価格が本来の価格に留まる場合にも、家主は住宅保有にともなう税金と自己資本の機会費用という側面で損失を被ることになる。
したがって貸切住宅の供給は売買価格の持続的上昇に対する期待を前提とする場合にのみ可能だ。売買価格が安定し、追加上昇に対する期待心理が消える場合、貸切住宅の供給は急速に萎縮し家賃へ転換されたり売買市場に出てくることになる。すでに貸切市場に供給されている住宅の場合、家主の住宅保証金償還負担で家賃転換などが容易でないこともありうるが、これは短期的な摩擦的要因に過ぎず、貸切供給の萎縮は避けられない。
また、需要者の立場から見れば、最近 現れているように売買価格安定にともなう追加下落期待感は潜在的な住宅購買待機者らが貸切需要に切り替わるよう誘発要因として作用することになる。
要するに我が国固有の住宅賃貸借制度として知られた貸切制度は、売買価格の持続的な上昇を前提とする場合にのみ維持されうる。最近の住宅バブル存在有無と大勢下落の可能性などに対する論議は別としても、家計の過度な借金負担と所得に対する高い価格水準などを考慮する時、今後 売買価格の追加上昇可能性は非常に小さいものと見られる。このような状況で、売買価格の安定基調が中長期的に定着する場合、貸切価格の上昇圧力が加速化し、究極的には賃貸借市場から貸切市場が消え家賃形態に代替される可能性が大きい。
この間「大勢上昇」に対する信頼を前提に作動してきた貸切制度は庶民層にとっても、専ら不利なものではなかった。住宅購買のために大金を用意する能力がない場合、貸切制度は家賃より安い費用で比較的良好な住居環境を享受することができる機会を提供してくれた。しかし、今後 貸切価格上昇により家賃制度に代替されるならば、庶民層の住居費用が増加し住居不安が深化しうる。
1980年代後半、売買価格と不動産費用が共に急騰しながら、住宅保証金を用意することの出来ない借家人たちの挫折などが社会的問題に飛び火したことがあった。しかし2000年代の上昇期には売買価格の急騰にもかかわらず、貸切価格は相対的に安定していたし、これにより住宅価格が深刻な社会問題にはならなかった。売買価格の急騰は無住宅中産層の相対的剥奪感を引き起こすという点で社会的な問題になるが、貸切価格の急騰は庶民層の基本的な生存権を威嚇する要因という点で、より一層深刻な問題でもある。
売買価格の急騰落を抑制することも住宅政策の重要な目標だが、現実的にすべての国民が売買市場の参加者となることができるわけではない。安定した住宅金融機会の提供等を通じて、マイホーム取得を助けるのはもちろん、公共および民間賃貸住宅の活性化等を通じて賃貸借市場の構造変化の可能性に備えなければならないだろう。
イム・イルソプ/農協経済研究所研究委員
原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/442000.html 訳J.S