本文に移動
全体  > 経済

政府が撃った‘不動産浮揚信号弾’家計負債を増やすだけかも

登録:2010-08-30 08:06

原文入力:2010-08-29午後09:45:05(2206字)
[開け 経済] 首都圏DTI 事実上廃止 診断&展望
業界の思い通りに‘鎖’解いたが、展望暗いのが問題
目前利益のために長期安定化放棄…家計負債 増える公算

ホン・テソン記者

←所得対比利子比率とアパート価格上昇率推移

政府の住宅取引正常化対策がついに発表された。この間、論議が多かった総負債償還比率(DTI)は実需要者が住宅を買いとる場合、来年3月末まで金融会社が自律的に決めるようにした。江南3区を除きはしたが、事実上DTI規制を廃止したわけだ。

今や関心は事実上DTI規制廃止が‘家計負債と住宅景気にいかなる影響を与えるのか’に集まるだろう。規制がなくなっただけに家計負債が増加する余地がある。特に住宅価格がある程度 調整されたと判断する高所得層を中心に増えるだろう。金融会社の立場でも高所得層に対しては貸出を拡大する可能性がある。

しかし市場状況を見れば、高所得層の家計負債が増えてもその幅は小幅に留まるものと見られる。最近の住宅市場沈滞は住宅担保貸出に対する規制の強度よりは、不動産市場展望が良くないことが最大の要因として作用しているためだ。住宅供給の増加、金利引上期待など、マクロ経済的変数が不動産市場展望を暗くしている要因だ。

不動産市場の取引量と価格を通じて住宅景気を覗き見ることができる‘蜂の巣循環’(Honeycomb Cycle)模型を見れば、2009年4分期から沈滞が表面化し近い将来に本格的な沈滞局面への進入を予告している。蜂の巣循環理論は住宅景気の局面を診断する方法として不動産価格と取引量は実物景気と連動され、あたかも蜂の巣形のような一定のパターンで循環しながら動くというものだ。現在は家計の購買力弱化で実需要は萎縮している反面、政府のくつろぎの里住宅供給増加と好況時に着工した莫大な物量の入居が実現しながら供給が本格的に増加している状況だ。住宅価格が需給によって下落圧力を受けているわけだ。

住宅価格上昇期にはDTI規制に相当な影響力があるが、市場が下落する時には直接的な影響や効果が明確でないとの分析もDTI規制廃止の根拠に提示されうる。

住宅取引活性化のために実需要者の不便を減らす水準の緩和が必要であり、現時点での規制緩和は副作用が相対的に小さいとも言える。それにもかかわらず憂慮される点は多い。最初に、今回のDTI規制廃止措置を政府の本格的な不動産価格浮揚信号として市場が解釈しかねないという点が問題だ。DTI規制は象徴的な意味があるためだ。実際に2008年末の金融危機当時、DTI規制を解くとすぐに数ヶ月後から家計貸出が急増した経験がある。この間、建設および不動産業界でDTI規制緩和を要求してきたのも、それ自体に実効性があるというよりは不動産価格の流れの糸口を変える信号弾とするためという側面が強い。

二番目、資産が多い高所得層の負債増加が全般的な家計不健全につながる確率は一般的に高くないとはいえ、仮に中産層以下の階層で家計負債増加が広がれば問題が深刻化するという点だ。もし高所得層を中心に市場の投機需要が生き返り豊富な浮動資金が不動産市場に集まり、何年か前のように中産層以下の階層に広がるならば家計不健全問題が深刻化される可能性を排除できない。特に家計不健全は過去のクレジットカード事態に見るように、所得が絶対的に低い階層、すなわち資産なしで借金だけがある階層の負債が増えて発生する問題であるためだ。

合わせてDTI規制を事実上廃止することは短期的な成果のために経済の長期的な安全性を放棄する選択になりうるということを肝に銘じなければならないだろう。

ただしDTI規制が借入者の負債償還能力を考慮して貸出するという意味に合うように細かい内容を改善する必要はある。先ず、DTIを首都圏だけで規制することには問題がある。借入者の負債償還能力は金融安全性次元で必ず考慮しなければならない事項だ。ところが我が国は首都圏のような投機地域に特定時期にだけ一律的に適用している。DTIは特定地域と時点の問題ではなく、借入者ひとりひとりの負債償還能力を考慮する時に意味がある。
所得の認定範囲を現実に合うよう拡大する必要もある。最近DTI比率を何%ポイント上げるかについて論議が多かった。事実この間規制してきた40~60%の根拠と基準が何かは明確でない。したがって今後DTI規制比率の水準に対する論議よりは、どのようにすれば借入者の実際負債償還能力を正確に測定できるのかについて悩まなければならないだろう。

借金に対する元利金負担よりは資産まで反映した純負債基準としてDTI比率を算定することも考慮する必要がある。変動金利の比重が高く、満期構造などの側面で外部衝撃に相変らず脆弱な構造を持つ我が国の住宅担保貸出市場状況を考慮する時、一方的に規制を強化したり緩和する場合、多くの副作用が発生しうる。今は規制の構造調整、規制の合理化が必要な時点だ。

ソン・テジョン/ウリ金融持株会社首席研究委員

原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/437338.html 訳J.S