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イラン戦争の最大の戦略的敗者イスラエルはどこへ向かうのか

登録:2026-06-24 03:51 修正:2026-06-24 08:00
イスラエルのネタニヤフ首相が今年1月26日にエルサレムで開催された第2回「国際反ユダヤ主義対応会議-真実の世代」で、ユダヤ人の伝統的な帽子キッパをかぶり、オーストラリアのシドニーで起きた銃撃事件の犠牲者を追悼するため、ろうそくに火をともしている。昨年12月、シドニーのボンダイビーチでユダヤ人を狙った銃器乱射事件が発生し、少なくとも15人が死亡した=エルサレム/EPA・聯合ニュース

チョン・ウィギルのグローバル・パパゴとは?

 「パパゴ」は国際公用語のエスペラント語でオウムを意味します。鋭い洞察力を持ち歴史的事例を豊富に知るチョン・ウィギル先任記者がエスペラント語でさえずるみなさんのオウムとなり、国際ニュースの行間をわかりやすく解説します。

■何が起きているのか?

 イラン戦争の終戦が暫定合意されたことに伴い、イスラエルは最大の戦略的敗者となりつつある。イスラエルは米国と共にイラン戦争を開戦し、イラン指導部の除去に中心的な役割を果たしたが、終戦交渉からは排除された。ネタニヤフ内閣は今年4月8日の停戦後もヒズボラの脅威を除去することを名目にしてレバノンへの攻撃を継続したが、米国のトランプ大統領に制止されたことで、両国の関係は悪化した。米国とイランとの合意は、戦略的利害がかかっているとイスラエルがみなすイランの弾道ミサイルや中東地域内の代理勢力の問題が抜けている。イスラエルは国際的な非難を押し切ってガザ戦争とイラン戦争を推し進めたが、イランは健在であり、その代理勢力は復活するという現実に直面している。(編集者)

Q.イラン戦争の終戦合意はイスラエルにとって何を意味するのか。

A.今回のイラン戦争の直接の起源は、イランの核開発を制限する国際協定「包括的共同作業計画(JCPOA)」をトランプ大統領が第1次政権時代の2018年に一方的に破棄したこと。トランプ大統領はこの時、この協定ではイランの核開発は制御できないとして、イランに対する制裁を復活させるとともに新たな協定の締結を求めたが、第2次政権で最終的に戦争まで強行した。

 JCPOAの破棄と戦争勃発には、イスラエルの執ような要求と説得が作用した。イスラエルは、JCPOAは自国を脅かすイランの弾道ミサイルや地域内の代理勢力の問題をきちんと扱っていないと主張し、それがトランプ大統領によるJCPOA脱退の主な理由の一つとなった。イスラエルはその後、イラン指導部は除去できると言ってトランプ大統領を説得し、イラン戦争に火をつけた。

 しかし今回の終戦合意は、トランプ大統領が破棄したJCPOAの枠を越えられないと思われる。イランの核開発問題の議論は60日間の本交渉に持ち越されているが、イランのウラン濃縮は認められないわけではなく、その濃度と制限される期間のみが議論の対象となっている。以前の協定が破棄されたことで、イランは60%の高濃縮ウランを生産し、現在の交渉でカードとして用いている。イランの弾道ミサイルおよび代理勢力の問題は、言及すらされていない。

 イランの指導部は健在で、終戦の代価として制裁と凍結資産が解除される見込みだ。何よりも、イランは今回の戦争でイスラエルに対する抑止力を確保した。イスラエルを攻撃する弾道ミサイルとドローンの力量を示した。ホルムズ海峡に対する統制力を米国をはじめとする国際社会に対する武器として使えることも確認した。

 実際にイランは、今回の終戦合意は「レバノンを含むすべての戦線での即時の戦闘停止」で始まると宣言している。イスラエルがそれを受け入れなかったとしても、ヒズボラなどの周辺のイラン代理勢力への攻撃には足かせとなる。イラン政権の転換を狙ったイスラエルのイラン戦争は、イランを域内でより脅威となる勢力にするとともに、代理勢力の復活を助ける場となったわけだ。

Q.終戦合意はイスラエル内部でどのように評価されているのか。

A.メディア、与野党すべてから批判と不満が噴出している。14日付の有力日刊紙「イディオト・アハロノト」はトップ記事の見出しを「悪い合意」という2つの単語でまとめている。進歩系の日刊紙「ハアレツ」は15日の分析記事で、「トランプは彼のイラン合意を第一とし、ネタニヤフに残された選択肢はない」と評している。「タイムズ・オブ・イスラエル」は、前首相で野党代表のナフタリ・ベネット氏のインタビューで、「我々は存立にかかわる瞬間にある。現政権であと4年過ごすと、我々には社会というものが残らないだろう」と批判的な見解を伝えている。

 一時はネタニヤフ首相の同盟者だったアビグドール・リーベルマン元国防相はソーシャルメディアで、「イスラエルの視点からみると災厄」だと述べている。中道野党の指導者で、ネタニヤフ首相の強力なライバルでもあるヤイル・ラピド氏は声明で、「イランとの合意の報道が事実でないことを願う」として、「もし事実であれば、それはイスラエルの外交・安全保障政策の最も衝撃的な失敗の一つとなるだろう」と述べている。ネタニヤフ内閣を支える極右系のイタマル・ベングビール国家安全保障相もテレグラムチャンネルで、「トランプの合意案は我々を拘束しない」として、「ヒズボラの解体以外は、いかなる結果とも妥協してはならない」と主張している。

昨年7月7日(現地時間)、ホワイトハウスのブルールームで開催された非公開の晩さん会に出席した米国のトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相(中央の赤いネクタイの人物)=ワシントン/EPA・聯合ニュース

Q.そのような国内世論は、戦争を続けようとするネタニヤフ首相には好意的なものなのではないか。

A.必ずしもそうではない。ネタニヤフ首相は自らが推し進めてきた戦争のわなにはまっている。イスラエルは4月8日の停戦合意において、レバノンを含むすべての戦線での戦闘中止が含まれるとする条項を受け入れなかった。当時は米国もそれを容認していた。イスラエルは停戦合意の当事者ではないと宣言し、レバノンへの攻撃を続けた。

 それには2つの目的があった。1つ目は、ガザ戦争でも達成できていないレバノンのヒズボラの掃討。2つ目は、イラン戦争の停戦を破壊し、戦争を長期化させること。ネタニヤフ首相は、それによって自らの極右連立政権を維持しつつ、今年10月の総選挙で勝利を収めるという一石三鳥を狙ったのだ。

 しかし、終戦が急務となったトランプ大統領は、イスラエルのレバノン攻撃を止めようとした。その過程で、トランプ大統領によるネタニヤフ首相への罵倒までもが公開された。合意発表の直前にも、イスラエルがレバノンのベイルートを攻撃したため、トランプ大統領はネタニヤフ首相を「まともな判断力がない」と非難した。ガザ戦争の際にイスラエルから壊滅的な打撃を受けたヒズボラも生き返った。ヒズボラはイスラエル北部に対して砲撃を続けることで反撃能力を誇示しており、その結果、イスラエル北部の住民が避難するなど、実質的な安全保障上の被害が発生している。

 停戦直後の4月10日に発表されたイスラエルの放送局「チャンネル12」の世論調査では、イスラエル国民の79%がヒズボラに対する攻撃の継続に賛成している。同時期に実施されたヘブライ大学アガム研究所の世論調査では、戦争は成功だったと答えた人はわずか10%で、部分的成功だったが28%、成功でも失敗でもないが30%、失敗が32%だった。イスラエル世論は、ネタニヤフ首相がガザ戦争から3年以上推し進めてきた戦争は意味がないと評しつつも、ヒズボラへの攻撃は継続すべきだという矛盾した様相を呈している。

 ネタニヤフ首相にとってヒズボラとの戦争はやめたくても簡単にはやめられず、戦争を続ければ、米国との関係がさらに悪化するというジレンマ的な状況を甘受しなければならない。戦争をめぐる国内外の相反する矛盾した要求に自ら縛られている格好だ。これはネタニヤフ首相個人にとどまらず、イスラエル全体が直面している現実だ。

Q.イラン戦争はイスラエルを含む中東の地政学的情勢にどのような衝撃を与えたのか。

A.ネタニヤフ首相は、イスラエルの強硬右派および極右勢力が長きにわたって追求してきた「大イスラエル」計画の実現のためにイラン戦争まで引き起こした。「シナイからユーフラテスまで」というユダヤ教の聖典、旧約聖書に出てくる架空の古代イスラエルを具現化しようとしているイスラエルの右派は、2023年10月7日のハマスによる全面的な奇襲に触発されたガザ戦争を好機ととらえた。戦争初期からガザ地区を占拠し、住民追い出し計画を公然と表明した。ガザの半分以上を占領し、レバノンのヒズボラに壊滅的な打撃を与えてレバノン南部に改めて進駐し、戦争の影響でシリアのアサド政権が崩壊すると、その南部を占領した。そして、イスラエルが中東の覇権国家になるうえでの最大の障害であるイランを攻撃して開戦した。イスラエルはイランと国境を接するイラク北西部で秘密基地を運用するなど、実際にユーフラテス川までの影響力の拡大を試みた。

 しかしイスラエルは今、大きな代償を支払っている。最大の同盟国である米国で世論が悪化して両国関係の悪化につながっており、国際的には孤立状態に追い込まれている。自国を中心とした中東和平計画であるトランプのアブラハム合意の破算は、イスラエルが支払った具体的な代償のひとつだ。アブラハム合意の要となるサウジアラビアとの国交樹立は遠のいた。イラン戦争を機として、イスラエルの域内における影響力は顕著に弱まりつつある。

 イスラエルの無理矢理な拡大に湾岸諸国は背を向けており、終戦に向けた努力を契機として域内の新たな外交の枠組みが動き出しつつある。パキスタン、サウジ、トルコ、エジプトの4カ国は、終戦とホルムズ海峡再開に向けた仲裁外交を展開し、終戦合意をも引き出した。イスラエル中心のアブラハム合意プロジェクトに代わり、4カ国が主導するイスラマバード協力という新たな中東秩序が模索されていると評価されている。イラン戦争を通じて湾岸諸国は、米国には自国の安全保障を任せられないことを痛感しており、イスラエルの暴走と勢力拡大を見守っていた他の中東諸国にとっても、新たな域内協力の枠組みは切実なものとなっている。

 これは、中東からの米国の撤退とイスラエルの再孤立へとつながる可能性がある。今年10月の総選挙でネタニヤフ首相が勝利するかどうかにかかわらず、イスラエルは自らが推し進めてきた戦争によってかかってしまったわなから抜け出すのは難しいと思われる。対外政策で迷走するイスラエルの不安は、中東全域の不安へと直結するだろう。

チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1263897.html韓国語原文入力:2026-06-17 05:02
訳D.K

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