オレンジ色のロボットアーム3台が順番に動いた。最初のロボットが鉄製部品を掴んで前方へ長く移動して置くと、2番目のロボットがその部品を再び持ち上げ、溶接作業台に移した。3台目のロボットが近づくと、青い光が閃き、火花と煙が立ち上った。12日、蔚山市東区のHD現代重工業中型船事業本部の船殻第5工場で会った中型船自動化革新部の担当者ファン・サンミンさんは、「ビジョンAIを搭載したロボットが部品を撮影し、正確な位置を把握し、その情報を『目のない』ロボットに伝えて溶接などの部品製作を続ける」と説明した。
ロボットが共同で作るこの鉄製部品は、ブロック(船の一部を構成する大型構造物)をクレーンで持ち上げる際に、ブロックと引き上げ装置をつなぐ「ラグ」だ。巨大なクレーンやドック、船殻ブロックが設置された造船所では、ラグは比較的小さな部品だが、船を作る上で欠かせない必需品だ。HD現代重工業が稼働中の「ラグ自律製造システム」は、産業通商部の製造AI転換政策「M.AX(マックス)」の支援が生産現場に適用された事例だ。同社は、このシステムで実際の船舶建造の工程に使用されるラグを大量生産していると説明した。「フィジカルAI」が実証を超えて実際の生産に突入したのだ。システム導入後、ラグの生産量は従来比で87.5%増加した。
11日から12日にかけて、蔚山のHD現代重工業と浦項のポスコ(POSCO)・エコプロの現場を視察したところ、製造AIは業種ごとに異なる形で導入されていることが分かった。M.AXは、製造業にAIを組み込み、現場で検証された技術をサプライチェーン全体に広げようとする産業部の政策だ。
韓国ロボット融合研究院安全ロボット実証センターでは、ポスコの原料工場に投入するベルトコンベア点検ロボットを開発していた。このロボットはローラーの音や熱などから故障の兆候を分析し、設備の稼働を止めずに故障したローラーまで交換することを目指している。ポスコ浦項製鉄所第2高炉では、四足歩行ロボットが羽口(はぐち)周辺の高温設備の間を巡回し、温度とガス漏れの有無を調査した。ポスコは、人が高温の溶融金属の近くで行っていた温度測定や試料採取を、移動型の両腕ロボットに委ねる技術も開発している。
エコプロの浦項バッテリー素材生産団地では、AIが品質を予測し、ロボットが設備を点検していた。陽極材を高温で熱処理する焼成炉の周辺を自律移動ロボット(AMR)「ティポイ」が巡回し、音響、熱画像、映像センサーで配管の漏れや設備の異常兆候を調査する。高温と粉塵が多い環境で人が行っていた日常点検を自動化するものだ。会社側の説明によれば、約200項目の点検項目のうち約70%をロボットで検査できるという。
企業の説明を総合すると、国策事業の利点は資金支援だけではなかった。AIへの転換を早め、適用範囲を広げる役割も果たす。ポスコの課題には、韓国ロボット融合研究院やロボット・センサー企業、大学など10機関が参加している。ポスコが実際の製鉄工程とデータを提供し、参加機関がロボットやセンサー、故障の兆候を事前に検出するAI技術を共同で開発し、現場で性能を検証する構造だ。エコプロBMの課題にも、韓国電子通信研究院やIT企業など6機関が参加し、データプラットフォームやAI学習データ、品質予測モデルなどを共同開発している。
現場で検証した技術は、他の工程や産業へと拡大していく計画だ。ポスコはロボットとセンサー、デジタルツインを一つのオペレーティングシステムにまとめ、モジュール型製品を作り、セメント工場や火力発電所など類似の設備を使用する産業に適用するという構想だ。HD現代重工業は、共同開発したシステムを標準モデルにして協力会社や中小造船業者が活用できるようにし、ラグの自律製造技術を他の工程に適用しようとする協力会社にはコンサルティングを支援している。エコプロBMは、品質予測課題で開発した技術を、生産・品質・設備・安全を網羅する自律製造ラインへと拡大する計画だ。
つまり、産業部が「M.AX」という名称で推進する製造AI転換は、大企業の工場にロボットを数台導入するだけにとどまらない。企業が単独でこなすのは難しい技術開発や現場実証の負担を複数の機関で分担し、検証された技術を他の工場や産業へ広げることに重点が置かれている。最終的には、個別の工程を超えて、製造の全段階をAIでつなぐ「フルスタック」技術を構築し、最高水準の自律工場である「ダークファクトリー」を実現するという構想だ。産業部は2030年までに自律製造のAI工場を500カ所以上構築するという目標を示した。
今回訪れた3社の製造現場は、産業部がM.AXを通じて描く完全自律化の初期段階にあった。製造現場の至る所にはまだ人がいた。この点が最も鮮明だったのは造船所だった。12日午前10時頃、自転車に乗った作業員3人がHD現代重工業蔚山事業所内を横切った。近くには、作業員が広い造船所を行き来する際に使う自転車やオートバイがぎっしりと並んでいた。来週、進水(建造ドックに水を入れて船を浮かせる作業)を控えた緑色の液化天然ガス(LNG)運搬船の船上や周りにいる作業員は、肉眼でも20人以上確認できた。この造船所で働いた経験のある20代の作業員は、「船舶の暗い密閉空間に潜り込んで溶接したり、錆を除去する作業は、依然として人が行うしかない」と述べ、「AIロボットで代替するのが難しい作業が多い」と語った。
HD現代重工業は、現在ラグ製造などの定型作業に集中しているAI・ロボットの適用範囲を、建造ドック周辺や船舶外部など作業環境や部材がそれぞれ異なる非定型作業に広げる計画だ。同社の中型船事業本部の常務執行役員ユン・デギュさんは「非定型作業には製品や作業環境に適したAI技術が必要だ」と述べ、「四足歩行・二足歩行ロボットなどを活用し、現在は人が行わざるを得ない作業まで実行できる技術を開発している」と語った。