イランがカスピ海を通じてロシアから無人機の部品の供給を受け、米国・イスラエルとの戦争で消耗した無人機能力を再建しているという。カスピ海を通じて食糧も供給され、米国の海上封鎖を一部迂回しているという分析もある。
ニューヨーク・タイムズ紙は9日(現地時間)、米政府関係者の話として、ロシアがカスピ海を経由してイランに無人機部品を送っていると報じた。米政府は、イランがロシアとの取引を通じて、過去2カ月間の戦闘で消耗したドローンの備蓄を急速に回復させているとみている。同紙によると、イスラエルが3月にカスピ海一帯のイラン海軍施設を空爆したのは、ロシアとの武器取引を遮断するためだったという。
イランはカスピ海を経由して、ロシアから武器だけでなく、米国のホルムズ海峡封鎖により搬入できなかった食糧などの物資の供給も受けている。イラン政府関係者は、カスピ海にあるイランの4つの港が24時間稼働しており、小麦、トウモロコシ、飼料、ひまわり油などの物資を搬入していると明らかにした。これに先立ち、ワシントン・ポスト紙は、米情報当局が、陸路などの他の迂回路を通じてイランが少なくとも3~4カ月は米国の海上封鎖に耐えられ、移動式発射台とミサイルの保有量もそれぞれ戦争前の75%と70%の水準を回復したものと推定していると報じた。
イランの北側に接するカスピ海は、ロシア、アゼルバイジャン、ウズベキスタン、トルクメニスタンなど5カ国に囲まれた内陸海。カスピ海でロシアとイランを行き来する船舶のほとんどは、位置追跡装置をオフにして運航しているため、監視網からも逃れている。米国は公海とつながるイラン近郊のアラビア海やホルムズ海峡は封鎖できるが、カスピ海は内海であるため接近することさえ難しい。フランスのパリ政治学院(シアンスポ)のニコル・グラジェフスキー教授は、「カスピ海は制裁回避や軍需物資の貿易にとって理想的な場所だ」と語った。
これまでカスピ海は、ロシアとイランが西側の制裁を回避して協力してきた主要なルートだった。2023年にロシアがタタールスタンでイラン製シャヘド無人機を独自生産する前は、イランから供給を受けてウクライナとの戦争で使用していた。その後、ロシアは実戦使用の経験を基にシャヘド無人機の性能を改善し、これをイランと共有することで「好循環構造」を築いたと専門家たちはみている。
カスピ海沿岸の5カ国について、米軍内では中央軍司令部と欧州軍司令部が分担して担当し、米国務省も担当部署を3カ所に分散させているため、カスピ海が米政府の死角となっていたという専門家の指摘もある。米シンクタンク「ハドソン研究所」のルーク・コフィー上級研究員は、「カスピ海は米国の政策立案者にとって、事実上存在しない場所のようなものだ」と語った。