国内第2位の暗号資産取引所のビッサム(Bithumb)で、「幽霊ビットコイン」62万BTC(時価約60兆ウォン)が流出する未曾有の事態が発生した。実際に保有していない暗号資産も帳簿上ではいくらでも生成・支給される構造的な欠陥が露呈し、暗号資産市場全体の信頼が根本的に揺らいでいると指摘されている。
8日、金融当局と関連業界の説明によると、先月6日午後7時ごろ、ビッサムは自社イベント当選者249人にビットコイン計62万BTCを支給した。1人あたり2千ウォン(約215円)を支給しようとしたところ、単位を「ウォン」ではなく「ビットコイン数=BTC」で入力したため、1人あたりビットコイン2千BTCが誤って支給されたのだ。ビットコイン62万BTCの相場は約60兆ウォンに達する。これはビッサムが実際に保有するビットコイン総額(約7兆ウォン)の9倍、数量基準では14倍に相当する。
誤って支給されたビットコインがビッサム取引所内部に放出されたことで、ビッサムのウォン市場のビットコイン価格は一時8000万ウォン台前半まで急落した。同時刻の他取引所相場(9800万ウォン台)より約17%低い水準だ。ビッサムは誤送金を把握した後、直ちに関連口座の取引・出金を停止し回収に乗り出した。金融当局も緊急点検会議を開き、事故の経緯と対応状況を点検した。ビッサムは価格急落を受けて急いで売却した利用者の損失を全額補償する対策を手早く打ち出した。
暗号資産業界では「社員のミス」とビッサムの迅速な被害救済を強調し、今回の事態を一種のハプニングと捉える見方もある。一方、業界の信頼の基盤を揺るがす事態という見解もある。存在しない暗号資産を取引所の内部者が帳簿上で生成し流通させても、これをリアルタイムで検知・遮断する内部統制装置がない点が露呈したためだ。
これは中央集権型の暗号資産取引所が帳簿上の取引に依存する構造的な限界によるものだ。利用者が取引所内でビットコインを購入しても、その暗号資産が実際の購入者に移動することはない。取引所が管理する帳簿上の保有数量のみが変更され取引が成立する。実際の暗号資産の移動は、暗号資産を他の取引所などに移転する時のみ発生する。バイナンスなど世界の主要取引所も同様の方式を採用している。
現行の暗号資産利用者保護法は、取引所が内部の台帳に記録された暗号資産規模に相当する実際の暗号資産を、改ざんが不可能なブロックチェーン基盤の取引所ウォレットに保管するよう定めている。ビッサムは昨年9月末時点で、利用者委託分のビットコイン約4万2千BTCと自社保有分175BTCを実際のウォレットに保管している。
しかしビッサムは今回の事態で帳簿に記録された仮想資産規模が実際の保有数量を大幅に上回ることになり、「同一種類・数量の実質保有」原則に違反したことになる。この条項に違反した場合、1億ウォン以下の過怠金が課される。暗号資産業界関係者は「これまで苦労して築き上げてきた暗号資産市場の信頼を根本から揺るがす残念な事件」だと語った。
現行法でリスクを遮断するのに限界が明らかになったことから、総量管理と外部けん制が可能な構造に転換する必要性が指摘されている。ソウル大学のイ・ジョンス教授(法科大学院)は「伝統的な資本市場では証券会社、取引所、預託決済院が役割を分担し互いをけん制するが、暗号資産市場では取引所が仲介・保管・決済機能を全て担うため、外部監視が働きにくい」とし、「実際に暗号資産を保有しているか厳格な検査・監視が必要だ」と話した。
キム・ガプレ資本市場研究院研究委員も「今回のビッサム事態は総量管理など内部統制システムの不在から生じた事態」だとし、「取引時点ごとに実際の保有総量を自動的に点検し、これを超過する支払いや取引を遮断するシステムがない取引所は急いでこれを構築しなければならない」と語った。
一方、この日午後、イ・オグォン金融委員長は関連点検会議を開き、全ての暗号資産取引所を対象に帳簿上の記録と実際の保有仮想資産間の検証体系など内部統制全般を点検し、適切な内部統制体系を整備するよう指示した。