米国と関税交渉を進めている韓国通商当局が、米国産牛肉輸入の月齢制限緩和を交渉カードとして使う可能性を示し、その背景に関心が集まっている。米国は、事実上世界で唯一「30カ月齢以上の米国産牛肉の輸入」を禁止している韓国がこれを緩和すれば、象徴性と経済的効果が大きいとみて、韓国に強い圧力を加えているという。この措置はドナルド・トランプ米大統領を満足させることはできるが、国内世論を大きく刺激する恐れがあるという懸念の声もあがっている。
15日、通商当局などの説明によると、米国側は韓国との相互関税に関する実務交渉の過程で、韓国が米国産牛肉輸入の月齢制限を緩和すれば「トランプ大統領が世界で唯一残った米国産牛肉の月齢制限規制を解いたと自慢できるカードではないか」という趣旨の発言をしたという。韓国の米国産牛肉輸入緩和がトランプ大統領の可視的な交渉成果になり得るということだ。韓国を除き、ロシアとベラルーシが米国産牛肉に対して月齢制限を設けているが、これらは米国との貿易が制限された国々だ。韓国政府関係者は「米国が韓国に牛肉輸入緩和を重点的に要請しており、検討せざるを得ない」とし、「米国側の要求を受け入れれば、米国は私たちが誠意を見せたと考えるだろう」と述べた。
政府が牛肉の輸入拡大を「交渉カード」として取り上げることには、国内市場の状況も影響を及ぼしたものとみられる。国内で焼き肉用として主に流通する「プレミアムチョイス」等級の米国産牛肉はほとんどが24カ月齢未満で、輸入市場開放の影響を受けない。30カ月齢以上の牛肉はパティなど加工肉の材料として多く使われるが、価格競争力の高いオーストラリア産牛肉などが主に使われているという。米国が要求する他の農産物市場の開放に比べ、国内での影響が相対的に少ない可能性もあるということだ。
ただし、米国産牛肉の輸入と関連した問題は、政治的に敏感なテーマだ。農林畜産食品部の関係者は「2008年、牛海綿状脳症(BSE)論議で政権の負担が大きかったではないか」と懸念を示した。韓牛生産者団体「全国韓牛協会」はこの日、声明を発表し、「農畜産業の苦しみと犠牲を当然視している」とし、「全国の農畜産業従事者は怒りを禁じえない」と述べた。国会農林畜産食品海洋水産委員会所属の「共に民主党」議員たちもこの日声明を出し、「韓米通商交渉過程で農業は決して交換手段になりえない」とし、「他の産業の利益のために農業で譲歩する方式はもう止めなければならない」と批判的な声を上げた。
ジャガイモなど遺伝子組み換え作物(LMO)の輸入も交渉カードの一つとして取り上げられている。これに先立ち、農村振興庁は3月、米国シンプロット社の遺伝子組み換え作物のジャガイモに対し、7年ぶりに「適合」判定を下しており、遺伝子組み換え作物のジャガイモの輸入手続きは食品医薬品安全処の人体安全性検査だけを残している。安全性検査などで農食品部の手を離れただけに、米国側の要求を受け入れる余地があると見るわけだ。
ただし、コメ市場の開放拡大と果物の検疫緩和は、受け入れる可能性は低いとみられる。米国産コメの輸入量(約13万トン)を拡大する場合、国内にコメを輸出する中国やベトナムなどの割当量も改めて交渉に乗り出さなければならない状況であるうえ、果物の検疫緩和の際には取り返しのつかない被害を受ける恐れがあるからだ。農食品部の関係者は「検疫を緩和して外来病害虫が流入すれば、国内農作物の被害は計り知れない」とし、「科学的な手続きにともなう安全性が優先」だと述べた。