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シャチと友達になったイルカの本音…「私たちを守って」

登録:2025-06-27 10:17 修正:2025-06-28 07:33
カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバー島の海岸でイシイルカやカマイルカなど小型のイルカがシャチの群れに近づく姿が、2018年から4年間で計42回観察された=ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 カナダ・バンクーバー所在の非営利海洋保全団体「オーシャンワイズ(OceanWise)」の生物学者ブリタニー・ビソナ=ケリー研究員は、2018年7月、ブリティッシュコロンビア州のバンクーバー島の海岸で珍しい場面を目撃した。海の最上位捕食者であるシャチに小型のイルカが近づいて泳ぎ、幼いシャチをかまう姿が捉えられたのだ。シャチに接近したイシイルカとカマイルカは体長2メートル前後、体重も200キロに至らないが、シャチは体長9メートルに体重は6トンを超える。このように巨大な捕食者に小型のイルカが自分から接近することは、以前に観察されたことがない。

 19日(現地時間)、米国科学雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」はビソナ=ケリー研究員と同団体のランス・バレット=レナード研究員が、国際学術誌「生態と進化(Ecology and Evolution)」」にこのような観察記録を載せた論文を発表したと報道した。両研究員は論文で2018年の初観察を含め、2021年までの4年間にバンクーバー島とカナダ本土の間を流れるジョンストン海峡でシャチと小型イルカの相互作用を計42回観察したと明らかにした。

イシイルカとカマイルカが北部定住型シャチの群れに接近する理由は、他のシャチの威嚇を避けるためと推定される。写真はカマイルカ=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

 ビソナ=ケリー研究員は、初めて観察した当時について「イシイルカの群れが成体のシャチに近づいて数分間泳いでいたが、すぐに飽きたように子どもを連れている他のシャチに接近した」とし「赤ちゃんシャチはイルカが現れると興奮したようにスピードを上げ、母親シャチはこの状況に苛立ったように見えたが、赤ちゃんシャチはとても楽しそうだった」とナショナルジオグラフィックに伝えた。

 このような相互作用は海の最上位捕食者であるシャチと他のクジラ類の間で初めて記録される「友好的関係」であると研究チームは推測した。先の研究でシャチは約20種のクジラ類との相互作用が観察されたことがあるが、ほとんどはシャチが他の種を捕食したり、いじめてからかったりする行動が主に報告された。しかし、この地域では「イシイルカとカマイルカがシャチに惹かれているように見えた」というのがビソナ=ケリー研究員の説明だ。研究チームはこのような相互作用の動機は捕食者の回避、エサの確保、水力力学的な利点、社会的利点などにあるが、特に捕食者を避けるという目的にあるとみた。

2018年9月1日(a~d)と2021年7月8日(e~h)、北部定住型シャチの子どもとカマイルカが社会的行動を見せている=ビソナ・ケリー研究員/オーシャンワイズ提供//ハンギョレ新聞社

 小型のイルカが先に近づいた「北部定住型シャチ」(Northern Resident Killer Whales)の個体群は、バンクーバー島北部からブリティッシュコロンビア州の海岸線に沿ってアラスカ南東部まで分布するが、この地域はイシイルカとカマイルカの生息地とも重なる。そのうえ、ここは北部定住型シャチとは生態的特性と生活様式が完全に異なる「南部定住型シャチ」(Southern Resident Killer Whales)、「ビッグスシャチ(回遊型)」(Bigg's Killer Whales)が活動する地域でもある。これらのシャチの個体群は食性、社会構造、コミュニケーション方式などが異なり、生態的にはほとんど他の種とみなされることもある。

2018年7月~2021年9月、バンクーバー島北東部で記録された種間相互作用のうち、北部定住型シャチ(黒)に対するイシイルカ(黄色)、カマイルカ(青緑)の遊泳体勢。それぞれの値は遊泳体勢が記録された相互作用の回数=ビソナ・ケリー研究員/オーシャンワイズ提供//ハンギョレ新聞社

 北部定住型シャチはキングサーモンを主食とし、小型イルカに攻撃的ではないが、南部定住型シャチはイシイルカやネズミイルカを攻撃したり、殺したりもする。ビッグスは小型イルカなどのクジラ類だけでなく、アザラシ、アシカなどを狩る。このため、イシイルカとカマイルカは北部定住型シャチに接近することで、他の捕食者から身を守る戦略を取ったと研究チームは推測した。実際、ビッグスは北部定住型シャチに出会うと自ら群れを避ける姿が何度も観察された。

 また研究チームは、小型イルカが他のシャチと外見がほぼ同じである北部定住型シャチを近くで観察し、捕食者のスピードや敏捷性、加速能力などを学習でき、シャチのそばで泳ぐことで移動にかかるエネルギーを節約したのではないかと分析した。ワシントン大学海洋哺乳類学のサラ・テマン博士は「すべての野生動物は『恐怖の風景』の中に生きている」とし「体は大きいが比較的危害を与えないシャチのそばで、しばし安らぎを得ようとするのは、ある意味自然なこと」だとナショナルジオグラフィックに伝えた。

*引用論文: Ecology and Evolution, (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/wild_animal/1203988.html韓国語原文入力:2025-06-22 10:21
訳C.M

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