裁判所による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の拘束取り消しと検察による釈放決定で、12・3内乱の被告人のうち、首謀者は不拘束で、重要任務従事者はほとんどが拘束されて裁判に臨むという、ねじれた状態が演出された。不拘束で防御権をよりいっそう保障されることになった尹大統領側は、「捜査権問題」を執ように攻略しつつ、公訴棄却を主張したり裁判を長期化させたりする可能性が高まった、という分析が示されている。
ソウル中央地裁刑事合議25部(チ・グィヨン裁判長)は7日、尹大統領の拘束取り消しを決定した際に、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)法に規定されている公捜処の捜査範囲には内乱罪が含まれていない▽職権乱用に対する捜査権を持つ公捜処が捜査過程で内乱罪を認知したとみなしうるに足る証拠がない、という尹大統領側の主張を認めた。拘束取り消しに限った論理だとしても、公捜処の尹大統領に対する捜査全般が否定されるとの趣旨からのものと解釈しうる部分だ。
内乱事件そのものの裁判も担う中央地裁のこのような判断は結局のところ、尹大統領側に捜査の適法性を争う口実を提供している。尹大統領の法律代理人団は8日の尹大統領の釈放直後に発表した声明で、「(裁判所は)手続きの明確性と捜査過程の適法性も多くの争いの余地があるということを具体的に指摘した」と述べて歓迎の意を示した。尹大統領側は、公捜処と検察による捜査は違法だったとして公訴棄却を主張する可能性が高い。拘束起訴されたキム・ヨンヒョン前国防部長官もこのかん、検察が直接捜査の範囲を拡大し、違法に内乱事件を捜査したと反発している。尹大統領の拘束取り消しを機として、その他の被告人たちも裁判の過程で同様の主張を行うと予想されるが、すでに裁判所がこのような批判があるにもかかわらず拘束令状を発行した経緯があるため、攻防が予想される。
尹大統領の内乱首謀容疑の刑事裁判は、先月20日に初の公判準備手続きが行われたのに続き、今月24日に2回目の公判準備手続き期日が設けられている。2回目の公判準備手続きで裁判所は尹大統領、キム前長官、ノ・サンウォン前情報司令官らの裁判を併合するかどうかを決めるとともに、全般的な裁判計画を確定する。その後、本格的な公判が開始される。拘束状態だった尹大統領が「自由の身」になったことで、尹大統領側は捜査の過程と立証の問題点を指摘しつつ裁判を遅延させるだろう、との懸念が出ている。元判事の弁護士は「尹大統領側は無罪を引き出そうとするというより、裁判を引き延ばして政権が再び転がり込んでくる時を待とうとするだろう」と述べた。