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レコーダーから「消えた4分」…済州航空事故機には補助バッテリーもなかった

登録:2025-01-13 09:16 修正:2025-01-13 10:01
先月31日午後、全羅南道務安郡の務安国際空港の済州航空機事故の現場で、米国家運輸安全委員会(NTSB)の関係者をはじめとする韓米合同調査団が、機体やローカライザー(方位角表示施設)の土台などを調べている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 務安(ムアン)国際空港で起きた済州(チェジュ)航空機事故の原因究明調査が乱気流に見舞われている。原因究明のカギとなる事故機のフライトレコーダーとボイスレコーダーに、衝突直前の「最後の4分」が保存されていなかったのだ。バードストライク(鳥との衝突)で2つのエンジンが故障したことで電気の供給が断たれた「シャットダウン」が原因だと推定される。

 国土交通部航空鉄道事故調査委員会(事調委)は今月11日、「米国家運輸安全委員会(NTSB)がフライトレコーダー(FDR)とボイスレコーダー(CVR)を分析したところ、事故機がローカライザーに衝突する直前の4分間、両装置へのデータ保存がすべて中断されていたことが把握された」と発表した。FDRは、航空機の飛行ルートやランディングギア(車輪)などの装置が作動したかなどをすべて記録する。CVRは、操縦室内の会話や機器の音などを録音する。保存が途絶えていたのは、8時58分50秒から衝突が発生した9時3分までの4分あまりの間。

 事故機は先月29日午前8時57分、管制官からバードストライクを警告され、2分後の8時59分に「メーデー(遭難信号)」を叫んでから着陸復行(着陸をあきらめて上昇すること)を開始。4分後の午前9時3分ごろ、着陸中にローカライザーの土台に衝突した。究明すべきこととしては、バードストライクで2つのエンジンの作動が停止した経緯、最初の復行を判断した過程、ランディングギアが下りなかった理由などがあげられる。事故時の機体の状態やパイロットがどのような措置を取ったかなどの確認は、レコーダーの記録がカギとなるが、2つのレコーダーには肝心の最後の瞬間の情報が記録されていなかった。

 専門家たちは、機内への電力供給が完全に断たれたことで、2つの装置への記録がなされなかったと推定する。カトリック関東大学のチョン・ユンシク教授(航空運航学)は、「両側のエンジンが故障し、発電機の電源供給も止まったようだ。その後は(機体のまひで)レコーダーにデータを送ることもできなかった状態だったとみられる」と述べた。エンジンがすべて故障した場合は、「バックアップエンジン」である補助動力装置を手動でオンにすると非常電力が供給され、レコーダーのデータの送受信も可能になる。今後の事調委による調査の過程で、補助動力装置すらも故障したのか、パイロットに作動させる暇がなかったのかも確認される予定だ。国土部によると、別の電源系統を用いる管制交信は、最後の瞬間まで記録されていた。

 2018年以降に生産された新しい航空機に取り付けられるCVRの補助バッテリーも、事故機にはなかったことが確認された。事故機はボーイングによって2007年に製作されたもので、済州航空は2017年に民間航空機リース会社から同機を借りて運用中だった。電源供給が断たれたとしても、補助バッテリーがあればCVRにデータが10分間記録される。

 肝心な情報が記録されていなかったことで、事故原因の調査も難航することになった。事調委は「レコーダーの記録も4分より前の資料は残っており、エンジンとその他の部品および管制交信などを総合的に検討して原因を探る」と述べた。極東大学のクォン・ボホン教授(航空安全管理学)は、「衝突事故の4分前からレコーダーの記録がないため、事故原因の究明は推定の水準で終わる可能性がある」とし、「帰責事由が不明確だと、今後の求償権請求などの補償問題にも影響を及ぼす恐れがある」と語った。

パク・スジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1177525.html韓国語原文入力:2025-01-12 19:13
訳D.K

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