アルコール使用障害がアルツハイマー病の症状を悪化させる可能性があるという研究結果が公開された。先月の米国スクリプス研究所の研究によると、アルコール使用障害は脳で炎症を増加させ、細胞間の信号の伝達を阻害する変化を起こすことが明らかになった。科学者らはアルツハイマー病の主な誘発要因として年齢と遺伝的要因を挙げるが、最近の研究は、過度な飲酒のような生活習慣がアルツハイマー病の発病と進行に重要な影響を及ぼすと指摘する。
アルコール使用障害はアルコールの依存と乱用を含む慢性疾患で、飲酒習慣を制御できず、身体的、心理的、社会的問題を引き起こす状態をいう。これは軽微な状態から深刻な依存状態まで幅広い範囲を含む。アルコール使用障害の主な特長には、アルコールに対する強い渇望、統制力不足、禁断症状などがある。また、同じ効果を得るためにますます多い量の酒を必要とすることになる。飲酒によって、職場、学校、家庭での役割遂行に支障をきたしたり、飲酒によって対人関係に困難が生じたりする。
スクリプス研究所のピエトロ・パオロ・サンナ博士はニューズウイークのインタビューで、「実験室での研究と人体観察を総合すると、アルコールがアルツハイマー病の発病と進行を促進する可能性が高いという証拠がある」と明らかにした。また、「アルコール使用障害とアルツハイマー病では、遺伝子と細胞経路の変化が似ている」として、アルコールの使用がアルツハイマーの進行を加速させる可能性があることを示唆した。
研究チームは初期、中期、末期のアルツハイマー病患者75人と健康な人10人の数十万個の脳細胞遺伝情報を分析し、それをアルコール使用障害患者の既存のデータと比較した。その結果、2つのグループの脳では、炎症遺伝子の活性化、細胞死を引き起こす信号の妨害、血管細胞の損傷など、似たような遺伝的変化が確認された。研究チームは、今回の研究は患者数が少ないという限界があるため、今後より多くのデータを活用した追加研究を計画している。ただし、過度な飲酒を避けることが健康な脳を維持するうえで重要だと強調した。
一方、認知症予防のためには、完全に酒を断ち切ることが必要だという主張も出ている。米国神経精神医学会の前会長であるリチャード・レスタック博士は著書『記憶についての完全ガイド』(The Complete Guide to Memory)で、アルコールを弱い神経毒と描写し、65歳以降はアルツハイマー病のリスクを減らすため禁酒が必要だと助言している。65歳以降の認知症のリスクは急激に増加し、5年ごとに2倍高まる。フランスでの研究によると、65歳未満の早期発病の認知症患者の半数以上が飲酒問題の病歴があった。これは、認知症のリスクが予想より早い時期に始まる可能性があることを示している。
認知症の症状には、平衡感覚の低下、道案内の困難、感情の変化、判断力低下などがある。記憶喪失の症状としては、繰り返される質問やメモ依存の増加が代表的だ。