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不吉な予感…「雪だるま式」に膨らむ疑惑に蓋をし続けると尹政権崩壊の恐れも(2)

登録:2024-10-14 06:19 修正:2024-10-14 08:16

(1から続く)

「東亜日報」10月4日付のコラム「『キム・ゴンヒの沼』、司法審判台に立つのが唯一の脱出口」//ハンギョレ新聞社

■金大中・金泳三も涙をこらえて「息子の拘束」を受け入れた

 三つ目は司法処理不可避論です。

 キム・ゴンヒ女史を司法処理するしかないという主張です。特異なのは、メディアから最初にこのような主張が提起されたことです。「東亜日報」のイ・ギホン大記者が10月4日付の新聞に「『キム・ゴンヒの沼』、司法審判台に立つのが唯一の脱出口」という見出しのコラムを書きました。

 「与党はこのような雪崩が本格的に始まる前に、キム女史が速やかに司法の審判を受けるようにしなければならない。過去の大統領たち同様に取り調べを受け、もし少しでも違法の疑いがあるなら、令状実質審査を受けなければならない」

 「まだ大統領の任期が半分以上残っている。自分の腕をえぐり取る決断が、大統領と与党全体はもちろん、キム女史のためにも賢明な解決策だ」

 「中央日報」のイ・ハギョン大記者は10月7日付の同紙に「岐路に経たされた尹錫悦大統領」という見出しのコラムを書きました。

 「権力は一瞬にして消える夢にすぎない。天下の二金(金大中・金泳三)さえも在任中、涙をこらえて息子の拘束を受け入れた。その引き換えに国を混乱から守った。この国の民主主義を築いた巨人にふさわしい行動だ。尹大統領がどうか失期しないよう願う」

 二つのコラムの論旨は、政権が崩れる事態を防ぐために、キム・ゴンヒ女史を迅速に司法処理すべきということです。イ・ハギョン大記者が取り上げた「天下の二金」、その中でも金泳三(キム・ヨンサム)大統領の事例を調べてみました。金泳三大統領は回顧録で、「韓宝不渡り事態」と「次男の拘束」の2カ所に分け、当時の状況や心境を詳しく記しました。

 「息子は潔白を主張しており、私は父親としてその言葉を信じたかった。だが、私は息子の父親である前に、一国の大統領だった」

 金泳三大統領は就任4年目の1997年2月25日、国民向けの談話を発表しました。

 「理由はどうであれ、このすべては私の不徳の致すところであり、大統領である私に責任があります」

 「世の中のすべての父親たちと同じく、私も息子の過ちはすなわち父親の過ちだと思っています」

 息子のヒョンチョル氏は4月25日、国会聴聞会の証言台に立ちました。新韓国党が国会の過半数を占めており、金泳三大統領が総裁でした。金泳三大統領は息子の聴聞会への出席を阻止できたにもかかわらず、それをしませんでした。ところが、聴聞会後も国民の怒りは収まりませんでした。

 「つらく寂しい日々が続いた。私の在任中、最もつらく孤独な時間だった」

 「『息子を拘束しなければならない』。社会的に物議をかもしたヒョンチョルをそのままにしておくことはできなかった。何日も悩んだ末に決心した。キム・ギス検察総長に直接電話をかけ、『ヒョンチョルを拘束せよ』と指示した」

 「私も大統領である前に、一人の父親だった。子どもを自分の手で刑務所に送りたい父親がどこにいるだろうか。私は幾多の日々を煩悶の中で過ごした。『人にやさしく、自分に厳しく』という言葉を数えきれないほど繰り返し、父情を振り払い、自分自身と家族に本当に苛酷な決断を下した」

 金泳三大統領の人間的苦悩が伝わります。

■与党も「切り離し」ムード

 保守メディアの大記者が先に提起したキム・ゴンヒ女史の司法処理不可避論は、与党内でますます広がっているようです。国民の力のシン・ジホ戦略企画副総長は、10月8日の「SBSキム・テヒョンの政治ショー」でこのように述べました。

 「検察がキム・ゴンヒ女史を起訴すれば、むしろ党の負担が減る」

 「検察が不起訴処分をすることになれば、野党に『ほら見ろ、ブランドバッグも見逃し捜査で不起訴、ドイツモーターズも不起訴、だから特検が必要なのではないか』と言われ、特検法で防御することがもっと難しくなるというのが大方の意見だ」

 ハン・ドンフン代表もこの流れに加わりました。ハン代表は10月10日、ドイツモーターズ事件をめぐる検察のキム・ゴンヒ女史不起訴方針に関する記者の質問に、このように答えました。

 「検察がどのような計画を持っているのか分からない。ただし、国民が納得できる結果を出すべきだと思う」

 かなり焦っているようです。長きにわたり検事を務め、法務部長官まで担った人の発言とは到底思えないものです。ハン・ドンフン代表がついに尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の首に刀を突きつけた格好です。

『金泳三大統領回顧録』(上・下)//ハンギョレ新聞社

 そろそろまとめに入ります。キム・ゴンヒ女史の司法処理を求める世論がいくら沸騰しても、最終決定は結局、尹錫悦大統領とキム・ゴンヒ女史が下さなければなりません。特にキム・ゴンヒ女史の「決心」が必要です。二人の独特な関係から推定すると、キム・ゴンヒ女史の反対を押し切って、尹錫悦大統領がキム・ゴンヒ女史を司法処理することは不可能と思われるからです。

 尹錫悦大統領は果たして金泳三大統領の道を選ぶことができるのでしょうか。遠い後日の回顧録にこのように書くことができるでしょうか。

 「私も大統領である前に一人の夫だった。妻を自分の手で刑務所に送りたい夫がどこにいるだろうか。私は幾多の日々を煩悶の中で過ごした。『人にやさしく、自分に厳しく』という言葉を数えきれないほど繰り返し、夫情を振り払い、自分自身と家族に本当に苛酷な決断を下した」

 尹大統領にそれができるでしょうか。皆さんはどうお考えですか。

ソン・ハニョン政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1162216.html韓国語原文有力:2024-10-139:34
訳H.J

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