イスラエルがレバノンで地上戦まで行い、「抵抗の軸」を率いるイランを刺激しているが、イラン政府はレバノンなどに兵力を送らない方針を示した。イランの最高指導者は、レバノンのシーア派組織ヒズボラへの支援が「ムスリムの義務」だと強硬論を明らかにしたが、実際にレバノンに派兵しイスラエルと真っ向対決するにはイラン内外の状況が厳しい。
AFP通信の報道によると、イラン外務省のナセル・カナ二報道官は30日(現地時間)、レバノンへの兵力支援について「追加または資源兵力を配置する必要はない」と述べた。カナニ報道官は「(レバノンのシーア派組織ヒズボラなどには)攻撃に対抗して自身を守る能力と力がある」とも語った。イラン政府はヒズボラなどからの「要請がなかった」という点を理由に、兵力の派遣には消極的な姿勢を見せている。イランは反米・反イスラエル連合体である抵抗の軸を共に形成するパレスチナのイスラム組織ハマスとヒズボラを、長い間軍事・財政面で支援してきた。
イランのヒズボラに対する軍事物資支援などは続くものとみられるが、兵力の派遣などをめぐっては意見の相違があるものとみられる。イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は28日、イスラエル軍がヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師を暗殺したことを受けて発表した声明で、「レバノンと誇らしいヒズボラの支援に乗り出すことはすべてのムスリムの義務」だとし、「彼らを助けるために、保有するすべての手段を動員する」と述べた。一方、改革派のイランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、イスラエルを非難しながらも、イスラエルに対する直接的な報復を宣言するのは避けている。
イラン政府のこのような態度は、内部の経済社会の不安が続いていることに伴うものとみられる。イスラエルに対する報復より、国内の状況改善に対する要求が高いということだ。このような要求は、7月に行われた大統領選挙で改革派のペゼシュキアン大統領が当選したことでより一層浮き彫りになった。ペゼシュキアン大統領は経済状況の改善と政治・社会の安定を主な課題に掲げている。イランは西側の経済制裁などの影響で経済難に長い間苦しんできた。世界銀行の資料によると、イランの昨年の物価上昇率は40.7%に達した。イラン政府が公式発表した2022年の若者失業率は8.82%だが、実際は30~40%に達するほど高いとみられる。
2022年9月、20代女性マフサ・アミニさんがテヘランでヒジャブをきちんと着用しなかったとの理由で道徳警察に連行され、疑惑の死を遂げた事件以来、イランを揺るがしたヒジャブ反対デモの余波もまだ残っている。このような状況で、米国の軍事的支援を受けるイスラエルとの全面戦争は、イランにとって大きな負担になる恐れがある。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は同日、異例にもイラン市民に送るビデオ声明を公開した。「タイムズ・オブ・イスラエル」の報道によると、ネタニヤフ首相は同声明で、「イスラエルは皆さんと共にいる。皆さんは人々が思っているよりも早く自由になるだろう」と述べた。また「イラン国民の多くはイラン政権が自分たちのことを気に留めていないことを知っている」とし、「国民のことを思っているなら、中東全域の無駄な戦争に数十億ドル(数兆ウォン)を無駄遣いすることを止めるだろう」と語った。