ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS、イコモス)が日帝強占期(日本による植民地時代)に朝鮮人強制動員が大規模に行われた新潟県佐渡鉱山(「佐渡島の金山」)の世界遺産登録と関連し、「保留(情報照会)」を勧告したことで、日本政府の悩みが深まっている。岸田文雄政権が2015年7月のように「朝鮮人強制労働」を認めるかなどが主な争点になるものとみられる。
10日のユネスコ報告書によると、イコモスは6日、佐渡鉱山が「世界遺産一覧票への記載を考慮するに値する価値を有すると考える」としながらも、いくつかの指摘事項を付けて保留を勧告した。重要な項目3つとともに、8つを追加で勧告した。
日本政府は、イコモスが指摘した北沢地区などを世界遺産の対象から除外し▽遺産保護のために緩衝地帯を拡張することと▽鉱業権の所有者が遺産の範囲内で商業採掘をしないという約束が必要だという3つの核心事項については受け入れる考えだ。新潟県の関係者は朝日新聞に「3つの内容は対応する方向で検討していく」とし、「7月の世界遺産委員会開催までに、追加情報として何らかの書面を提出する方針」を示した。
問題は追加項目にあった「朝鮮人強制労働」に関する勧告だ。イコモスは「鉱業採掘が行われていたすべての時期を通じた推薦資産に関する全体の歴史を現場レベルで包括的に扱う説明・展示戦略を策定し、施設・設備等を整えること」を明示した。具体的な内容は書かれていなかったが、日本でも朝鮮人の強制動員を念頭に置いたものとして受け止められている。
日本政府が朝鮮人強制動員問題を露骨に避けるために世界遺産登録の対象期間を江戸時代(1603~1867)に限定した時から、韓国側では全体の歴史を説明することを求めてきた。1989年に廃鉱になった佐渡鉱山の場合、日帝強制占領期の1939年以降、約1500人にのぼる朝鮮人が強制動員され、苛酷な労働に苦しんだという事実が具体的な資料と証言で立証されている。
地元では岸田政権が判断する問題だとしながらも、登録のためには勧告を受け入れるべきではないかという声もあがっている。具体的には、佐渡で観光案内所の役割を果たす施設に朝鮮人強制動員問題を展示するのが現実的だという意見もある。
日本の世界遺産専門家もイコモスの勧告を無視するのは難しいという見解を示している。松浦晃一郎元ユネスコ事務局長は時事通信に「(2015年7月の端島などの)先例に習い、金山の歴史全体を説明するセンターを設けるべきだ」とし、「朝鮮半島出身の方の死者数などデータや、労働環境をしっかり発信する必要がある」と強調した。松浦元事務局長は1999~2009年までユネスコで事務局長を務めた。
日本政府は2015年、端島(軍艦島)を含む「明治日本の産業革命遺産」23カ所の世界遺産登録過程で、韓国政府の強い反発で「朝鮮人強制労働」を公に認めた後、「全体の歴史」を理解できる施設を作る方針を明らかにした。
岸田政府は困惑している。これまで日本政府は、佐渡鉱山の世界遺産対象期間は江戸時代に限定されているとして、韓国側の指摘は適切ではないと主張してきた。イコモスの勧告を受け入れるためには、これまでの立場を覆さなければならないうえ、どのような内容を展示するかも争点にならざるを得ない。
今回の佐渡鉱山の世界遺産登録で日本が「朝鮮人強制労働」を認めた2015年ユネスコ決定より後退した場合、一方的な譲歩を繰り返す「尹錫悦(ユン・ソクヨル)流外交」に対する非難は避けられないものとみられる。一方、日本政府は日帝強占期の朝鮮人強制動員について、募集・斡旋および国民徴用令に基づいたものだったとし、2021年4月の閣議で「強制労働」、「強制連行」という表現は不適切だという決定を下した。
産経新聞は「韓国が(佐渡鉱山で)戦時中に朝鮮半島出身者の『強制労働』 があったと反発してきた」とし、「歴史的事実を国際社会に正しく伝える『歴史戦』にどう向き合うのか、日本政府の姿勢が注視される」と強調した。
佐渡鉱山の世界遺産登録の可否は来月21~31日、インドで開催される世界遺産委員会で最終決定される。韓日など21の委員国が参加する世界遺産委員会は満場一致で決定するのが慣例だが、見解が異なる場合、3分の2以上が賛成すれば登録が可能だ。