ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡協会議(ICOMOS、イコモス)が、日帝強占期(日本による植民地時代)に朝鮮人強制動員が大規模に行われた日本の佐渡鉱山(「佐渡島の金山」)の世界遺産登録について「保留」を勧告したことで、最終結果をめぐり激しい韓日外交戦が予想される。来月、佐渡鉱山が世界遺産に登録されたとしても、日本が「朝鮮人強制動員」を認め全体の歴史を理解できる措置を取ると約束した2015年のユネスコ決定が維持されるかに注目が集まっている。
日本文化庁は6日夜、「「佐渡島の金山」について、世界遺産登録を考慮するに値する価値があることは認められた上で、『情報照会』(保留)という勧告がなされた」とし、「来月7月にインドで開催される世界遺産委員会において『記載』(登録)決議とすべく対応する」考えだと明らかにした。文化庁は「昨年の世界遺産委員会において『情報照会』勧告を受けた文化遺産6件は、全て昨年の世界遺産委員会において『記載』決議となった」として、自信をのぞかせた。韓日など21の委員国が参加する世界遺産委員会は満場一致で決定するのが慣例だが、見解が異なる場合、3分の2以上が賛成すれば登録が可能だ。
佐渡鉱山が最終的に登録されるかどうかは世界遺産委員会で決定されるが、専門家で構成された諮問機関であるイコモスの意見はかなりの影響力を持っており、日本が勧告を無視することは難しい。
今回のイコモスの勧告内容では大きく2つの点が目を引く。日本文化庁が公開した資料によると、イコモスは佐渡鉱山と関連し、「鉱業採掘が行われていたすべての時期を通じた推薦資産に関する全体の歴史を現場レベルで包括的に扱う説明・展示戦略を策定し、施設・設備等を整えること」を明示した。
これは、日本政府が植民地時代の朝鮮人強制動員問題を露骨に避けるために、世界遺産登録対象期間を戦国時代(1467~1590)末から江戸時代(1603~1867)に限定する「小細工」を指摘したものとみられる。1989年に廃鉱になった佐渡鉱山の場合、1939年以降、約1500人にのぼる朝鮮人が強制動員され、苛酷な労働に苦しんだという事実が具体的な資料と証言で立証されている。
韓国外交部は「強制動員された韓国人労働者に対する事実を反映すべきだ」と日本政府に求めているだけに、今回の結果が、一方的な譲歩を繰り返している「尹錫悦(ユン・ソクヨル)流の韓日外交」が大きく試される契機になる見通しだ。外交部当局者は7日、記者団に対し「われわれの立場が反映されなければ(登録に)反対しなければならない」とし、「投票まで行く状況はできるだけ避けて、韓日合意を成し遂げることが両国政府の目標」だと述べた。
佐渡鉱山が世界遺産に最終的に登録されても、「朝鮮人強制動員」を認めるなど2015年7月にユネスコから韓国政府が得た結果が最後の砦にならざるをえない。当時、日本政府は軍艦島(端島)を含め「明治日本の産業革命遺産」23カ所の世界遺産登録を進める際、佐渡鉱山と同様に対象期間から朝鮮人が強制動員された植民地時代を除外した。
保守政権の朴槿恵(パク・クネ)政権は「世界遺産に対する歴史歪曲」だと強く反発し、政府レベルで対応したことで、日本政府に「朝鮮人強制動員」を認めさせるなどかなりの成果を得た。ユネスコは朝鮮人強制動員を念頭に置いて「全体の歴史」を理解できる解釈戦略を設けるよう勧告しており、日本政府は受け入れた。日本政府は9年にわたりユネスコの約束を守っていないが、今も定期的に約束履行状況をユネスコに報告しなければならないなど、最小限のけん制装置として働いている。
ユネスコの状況だけを見ると、2015年より今の方が有利だ。佐渡鉱山はイコモスで「保留」の決定が出たが、2015年には軍艦島(端島)などの「記載」が勧告され、韓日交渉が容易ではなかった。2021年7月に新たに導入された世界遺産条約履行のための作業指針も、尹錫悦政権が活用できるカードだ。新たな指針では、他の国との潜在的対立を避けるために「対話を十分に行うように」定めている。韓国が日本の歴史歪曲を問題視して最後まで反対すれば、対話が十分になされなかったとみなされ、登録が失敗に終わる可能性もある。
日本政府はイコモスの勧告の中で「全体の歴史の説明」の部分にそれほど重きを置いていない。盛山正仁文部科学相はイコモス決定後の談話で、「イコモスから佐渡の金山について世界遺産登録を考慮するに値する価値があると認められた。勧告を真摯に受け止める」と言いながらも「朝鮮人強制動員」については全く触れなかった。
ただし、韓国政府との対話が必要だという点は、何度も強調している。林芳正官房長官と上川陽子外相は同日の記者会見で「日本は佐渡の金山の世界遺産登録実現に向けて韓国と丁寧に議論を行っていく考え」だと述べた。
イコモスが、植民地時代を含め明治時代以降の遺産が多く集中している「北沢地区」などを世界遺産の対象から除外するよう勧告したことも注目に値する。
これは、日本政府が朝鮮人強制動員問題を避けようと対象期間を16~19世紀中盤に限定したことで生じたことだ。佐渡鉱山で最も代表的な遺跡地は北沢地区にある浮遊選鉱場だ。日本で初めて金銀鉱石から金・銀などを採取する浮遊選鉱法という工法を導入した。東洋最大規模として知られているこの施設は1938年に建設されたため、世界遺産の対象にはならない。日本政府が朝鮮人強制動員問題を避けようとしたがために、佐渡鉱山で最も有名な地区が世界遺産から外れるという状況になったわけだ。
日本文化庁の担当者は毎日新聞に「イコモス勧告を真摯に受け止める。北沢地区を除外するかどうかは県、市、関係省庁と協議する」と語った。