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「対北朝鮮心理戦」6年ぶりに拡声器登場か…南北の緊張高まる

登録:2024-06-03 05:58 修正:2024-06-03 07:19
チャン・ホジン国家安保室長が2日、ソウル龍山の大統領室庁舎で開かれた国家安全保障会議(NSC)常任委員会の拡大会議に関するブリーフィングを行っている/聯合ニュース

 韓国大統領室は2日、緊急国家安全保障会議(NSC)常任委員会後、北朝鮮の汚物風船散布などに対する対抗措置として、「北朝鮮に対する拡声器放送の再開も排除しない」と述べた。南北間の緊張が再び高まる見通しだ。

 大統領室高官は「拡声器(放送)の再開を排除しないならば、そのために必要な手続きは当然取らなければならない」とし、「措置はためらうことなく、ただちに施行する」と語った。軍当局も同日、北朝鮮に対する拡声器放送の再開について、「韓国軍は常時実施する準備と態勢を整えている」という立場を示した。

 2018年4月の板門店宣言から中断されていた北朝鮮に向けた拡声器放送は、韓国軍の代表的な心理戦手段であり、南北関係の現状を示すバロメーターとみなされてきた。北に向けた拡声器放送は1963年から始まり、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の2004年に南北軍事合意に基づき中断された。その後、天安艦事件(2010年3月)、非武装地帯の木箱地雷事件(2015年8月)、北朝鮮の4回目の核実験(2016年1月)など、南北間の軍事的緊張が急速に高まる度に、一定期間再開して中断する過程を繰り返してきた。

 2018年4月以前まで、韓国軍は軍事境界線に近い最前方の警戒部隊で、固定式の拡声器と車両に積んだ移動式拡声器を約40カ所で運営していた。軍は当時20~30キロまで聞こえる拡声器スピーカーを用いて、韓国側の北朝鮮関連ニュースや気象情報、歌謡曲などを放送した。1960~80年代には北朝鮮軍の亡命を誘導するための政治的内容が多かったが、2010年代以降はK-POPを流すなど内容が変わった。

 拡声器放送の効果を強調する側は、前方の北朝鮮軍だけでなく、南北境界地域の北朝鮮住民の心理を揺さぶり、体制内部の動揺を引き起こすこともできると主張する。一方、北朝鮮は軍事境界線以北20~30キロメートルまで民間人の接近が難しく、北朝鮮住民には拡声器の効果はあまりないという主張もある。

 北朝鮮は過去、暴圧政治、人権蹂躙などを取り上げる対北朝鮮拡声器放送を「体制の脅威」とみなし、拡声器を砲撃したこともあった。2015年8月に非武装地帯(DMZ)の木箱地雷事件に対抗して韓国軍が拡声器放送を再開すると、北朝鮮が京畿道漣川郡(ヨンチョングン)28師団の最前方に配置された拡声器を狙い、高射銃1発と直射火器3発を撃った。これに対し、韓国軍は砲弾発射推定地点に向けて155ミリ自走砲28発で対応射撃を行った。その後、北朝鮮は準戦時状態を宣言し、南北は全面戦争の一歩手前まで進んだ。南北間の軍事的対決状況は同年8月25日まで行われた南北高官級接触で、北朝鮮の地雷爆発の遺憾表明▽韓国側の北朝鮮向け拡声器放送の中断など6項目の「8・25合意」が出るまで続いた。

 韓国が拡声器放送を再開すれば、北朝鮮も韓国に向けた拡声器放送を再開し、拡声器を狙って「照準打撃」で威嚇する可能性がある。この場合、軍当局は拡声器付近の最前方警戒態勢を強化し、砲兵部隊、戦闘機など火力待機態勢の段階を引き上げて対応することになる。北朝鮮向け拡声器放送が再開されれば、北朝鮮の反発が続き、南北の対抗措置のレベルが上がる悪循環が予想されるだけに、情勢管理の重要性がさらに必要だと指摘されている。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1143128.html韓国語原文入力:2024-06-02 20:48
訳H.J

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