「入り口を開けろ」「労組弾圧を中止せよ」
数十年間にわたって「無労組経営」を続けてきたサムスン電子の事業所内で、労働者がスローガンを叫んだ。高層ビルの間で歓声がこだますると、労働者たちは不思議そうに拍手をした。1969年のサムスン電子の創立以来初となる争議行為を決めた全国サムスン電子労働組合の集会には、2千人近い労働者が集まった。労働者たちは会社の「コミュニケーション不在」を批判し、労働者と労働組合を尊重することを要求した。
17日昼、京畿道華城(ファソン)のサムスン電子DSRタワーで、全国サムスン電子労働組合の集会が行われた。会社との賃金団体交渉の決裂後、今月8日に組合員による投票で争議行為を決議した労組が企画したものだ。
同労組のソン・ウモク委員長は、「中央労働委員会の調停の中止後、会社側からはいかなる案件提示もなく、対話もせずにいる。対話しに訪ねて行っても拒否されている」とし、「だからこの場まで来ることになったのであり、進めていくつもりだ」と述べた。
■「バリケードを見て今日労組に加入した」
集会は当初、社屋1階のロビーで行われる予定だったが、会社が鉄製のバリケードを設置して出入り口を封鎖したため、社屋前の空き地で行われた。会社は社屋封鎖の理由を「安全のため」としたが、労働者たちは会社の決定が「コミュニケーション不在」を示しているとして憤った。
DSRタワーで働くAさんは「朝、バリケードを見て、自分の会社に出勤するのに脇のドアから入らなければならないということに当惑した」とし、「会社のこうした反応に反発する気持ちが生まれ、今日労組に加入して集会に参加した。会社のこうした態度は、労組に加入しろと社員の背中を押しているようなもの」だと述べた。これに対しサムスン電子の関係者は、「事故が懸念されるため、会社はロビーの代替案として華城事業所内のバス乗り場や大運動場などを提示した」と語った。
集会に参加した労働者たちは、会社の経営失敗と不透明な賃金算定方式に対する不満を吐露した。仮面をかぶって集会に参加したBさんは、「会社は市場の状況が良好だから売上が上がったのを自分の実力だと勘違いしており、失敗に対して反省もしていない」とし、「社員たちは今この瞬間にも責任を全うしているが、会社は責任を全うしているのか」と述べ、参加者たちから拍手を浴びた。
華城事業所で働く経歴10年の社員のCさんも、「昨年の赤字は理解するにしても、今年は営業利益が発生しても成果給がまったく受け取れない可能性がある」とし、「社員は何をどうすれば良い補償を受けられるのかを知らなければならないが、知ることのできないやり方に怒りを覚える」と話した。
■次の集会は瑞草社屋で
労使協議会によって賃金が決定されるというあり方に対する怒りの声も相次いだ。先に会社は、労組と賃金をめぐって団体交渉をおこなっている間に労使協議会の社員代表と協議し、今年の賃金引上げ率を決めている。この日、有給休暇を取って集会準備に参加したというDさんは、「労使協議会の社員代表が本当に社員を代弁するのなら、会社の決定をそのまま通知するのではなく、社員の意見を聞くべきだった」と述べた。別の社員のEさんは、「彼らは社員の声を代弁できないと思う。むしろ労組と社員を裏切ったのだと思う」と話した。
1時間あまりにわたって行われた集会は、バンドの公演を最後に幕を下ろした。集会に参加してスローガンを叫び、公演を共にした労働者たちは、満足げに見えた。昼食を終えて三々五々集まってきた組合員も多かったが、平沢(ピョンテク)事業所からバスに乗って、有給休暇を取って、あるいは夜間勤務を終えてやって来た組合員もいた。ある組合員は「私と同じ考えを持つ仲間がこんなに多いというのは気分がよい」、別の組合員は「今日の集会を見て会社も明確に感じるところがあればと思う」と話した。
労組は24日に2度目の集会をソウルのサムスン電子瑞草(ソチョ)社屋で行う予定であることを明かした。イ・ヒョングク副委員長は、「その日の行事の内容と形式は組合員の考えを聞きながら決める予定」だとし、「さらにクオリティーのある文化行事になるか、ストライキ宣言になるかは、会社がどのように出てくるかにかかっている」と述べた。