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「セウォル号惨事から10年、小さな町で始まった動きが世の中を救う希望に」

登録:2024-04-01 11:01 修正:2024-04-09 10:43
「市民の記録展-マウルの4.16」に参加した安山希望教会のキム・ウンホ牧師(左から2人目)とイム・ナムヒ仙府総合社会福祉館部長(3人目)など安山市の住民たちが29日、展示の開かれた4.16記憶展示館でポーズを取っている=イ・ジュンヒ記者//ハンギョレ新聞社

 セウォル号沈没惨事から10年。韓国社会は変わっただろうか。真相究明は依然として行われず、梨泰院(イテウォン)雑踏事故の惨事まで起きた。何も変わっていないと悲観する人もいる。だが、「4.16市民の記録展・マウルの会」と「4.16記憶貯蔵所」が共に主催する「市民の記録展-マウル(町)の4.16」は希望を語る。今回の展示は、惨事で犠牲者が最も多く出た檀園高校のある京畿道安山市(アンサンシ)のうち、一洞(イルドン)、四洞(サドン)、半月洞(パンウォルドン)、瓦洞(ワドン)、古桟洞(コジャンドン)の住民たちが10年にわたって地域で行ってきたセウォル号関連の活動の痕跡を集めた。

 今回の展示には、犠牲者の家族と隣人たちが命と安全を尊重する社会を作るために力を尽くしてきた足跡が込められている。2014年6月から2015年まで毎週金曜日にろうそく集会を開いた一洞、いまも家族たちと連帯してともに食卓を囲む会を続ける半月洞、政府とマスコミの歪曲に対抗して町新聞を発行し、隣人たちの対話の集いを行ってきた瓦洞、10代の青少年たちを中心に「記憶Tシャツ」などを作った四洞、2015年から毎年「記憶の花屋」と「記憶音楽会」を開いてきた古桟洞の活動が、映像、写真、本などで展示されている。

 古桟洞で主に活動してきたイム・ナムヒ仙府総合社会福祉館部長(56)は、10年前にセウォル号惨事が起きた時、大学院の博士課程にいた。社会福祉士だったイムさんは、当時は現場を離れていたが、2014年9月にオープンした「ヒーリングセンター0416憩いと力」で働いてほしいという依頼を受け、センターの事務局長になった。「真相究明がなされて対策が設けられたら大学院に戻るつもり」だったが、問題解決は容易には進まなかった。この過程でイムさんは、地域社会が徐々に冷淡になっていくのを感じた。「国会前や光化門広場で何日も泊まり込んで闘っている家族たちが帰ってきたとき、地域住民との溝ができてしまうかもしれない」という心配が生じた。

古桟洞のイム・ナムヒさん 
家族と地域社会の溝を埋めるため 
記憶の花屋・記憶音楽会を毎年開催 
「命と安全に対する感受性が目に見えて高まった」

 イムさんはセウォル号の家族と地域住民をつなぐ活動を始めた。2015年に開かれた檀園高校のある古桟洞の町の祭りで、合同焼香所から檀園高校へとつながる道を「大切ないのちの道」と命名し、住民たちと一緒に歩いた。惨事から1年目を迎えた年に始めた「記憶の花屋」を毎年開いて近隣の人たちに花を配ったり、家族たちと一緒に楽器を練習して毎年「記憶音楽会」を開いたりもした。イムさんは「10年のあいだに命と安全に対する地域住民の感受性が目に見えて高まり、自治の力もついた」とし、「これをうまく定着させていくことが、犠牲になった子どもたちが私たちに与えた課題」だと語った。

安山の住民たちのセウォル号連帯活動を写した写真が展示されている=イ・ジュンヒ記者//ハンギョレ新聞社

 瓦洞で牧師をしている安山希望教会のキム・ウンホさん(51)は、惨事が起きた4月16日から18日まで、檀園高校でろうそく祈祷会を開いた。キムさんには普段から「教会は信徒ではなく地域社会のために存在すべきだ」という思いがあった。その後も地域で地道に活動してきたキムさんは「セウォル号惨事以降、町を新たな視線で眺めるようになった」とし「これまでは住民たちに文化的な恩恵を与えるという、ある種の施しのような運動をしてきたとすれば、惨事後は、住民たちが世の中を自らどう眺めて解釈できるか」について考えるようになったという。

瓦洞のキム・ウンホさん 
心の中の重石、一緒に考えるために 
「隣人対話全国大会」を開催 
「展示を通じて、つながっている私たちを知ってほしい」

 キムさんは「全国各地の人々は皆、セウォル号惨事のような大きな重石(おもし)を心の中に一つは持っている」とし、「時代的なつらい出来事であれ、家族の問題であれ、地域社会のいざこざであれ、この重石を私たちがどうやって一緒に取り出せるかを考えなければ」と語った。そのような発想から、キムさんは「隣人対話全国大会」を開くようにもなった。キム牧師は「ある信徒が『檀園高校のセウォル号の犠牲を悼むろうそくの灯が、社会的なろうそく革命につながった』と述べる姿を見て驚いた」とし「小さな町で始めた小さな動き、美しいその動きが世の中を救うと思った」と話した。今回の展示を通じて「私たちは皆つながっているということ」を人々が知ってほしいと願っていた。

「市民の記録展-マウルの4.16」=4.16記憶貯蔵所提供//ハンギョレ新聞社

 展示は5月31日まで開かれる。展示時間は午前9時から午後6時まで。休館日は毎週月曜日と祝日。ただし4月10日の国会議員選挙日は開館。展示場所は京畿道安山市檀園区の現代商店ビル3階にある「4.16記憶展示館」だ。檀園高校の生徒たちがよく訪れたネットカフェのあった商店ビルの内部にある。4月6日午後6時には、5つの町の住民代表が集まり、これまでの活動に対するトークイベントを開く。展示は市民たちの自発的な参加によって企画されたため、展示の運営費用は募金(socialfunch.org/416civicexhibit)でまかなわれる。

イ・ジュンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/area/capital/1134586.html韓国語原文入力:2024-03-31 18:57
訳C.M

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