ある保守団体が日帝強制動員の被害者の支援団体を弁護士法違反で告発したが、警察はこの事件を不送致(却下)処理した。2012年に、日本の戦犯企業を相手取って起こした訴訟で勝訴した場合は、被害者から損害賠償金の20%を「勤労挺身隊ハルモニと共にする市民の会(市民の会)」が公益事業への寄付として受け取るとした約定を結んだことは、弁護士法違反には当たらないと判断したのだ。
5日の警察と市民の会の説明を総合すると、光州市の光山(クァンサン)警察署は9月22日、市民の会の2人の関係者についての弁護士法違反の告発事件に対して不送致(却下)決定を下した。警察は一般的に、捜査した事件が「嫌疑なし」、「罪とはならない」、「公訴権なし」の3つの理由に明らかに該当する時に不送致決定を下す。光山警察署の関係者は「(告発人と被告発人の調査を経て)事実関係を確認し、(弁護士法違反の)疑いは明白ではないと判断したため、(不送致で)終えた」と述べた。
保守団体の告発内容は「市民の会が2012年に、日帝強占期に日本企業三菱重工に連行された朝鮮女子勤労挺身隊の被害者ヤン・クムドクさんら5人の損害賠償請求訴訟の開始に伴って弁護士を斡旋し、同年10月23日に締結した約定書で、訴訟で勝訴した場合は受け取った金(賠償金または慰労金など)の20%を強制動員被害者のための公益事業に使うと定めたことは、弁護士法違反に当たる」というもの。被害者が賠償金の一部を寄付するとする約定を結んだことは、朝鮮日報が今年5月23日に初めて報道し、その後、保守の政治家と団体による「歴史ビジネス」批判へと拡大し、市民団体の「自由大韓護国団」が5月26日にソウル中央地検に市民の会の2人の関係者を告発した。
30人の弁護士が参加する被告発人共同弁護団のキム・ジョンホ弁護士は、ハンギョレの電話取材に対し「2人の被告発人は市民の会の会員かつ弁護士として、2009年から2012年まで無料で被害者を支援した。彼らは自発的に訴訟代理人として参加していたので、被害者に弁護士を斡旋する構造ではまったくなかった」と説明した。
寄付約定を提案したのが被害当事者だったということも、警察の不送致判断に影響を及ぼしたとみられる。ヤン・クムドクさんら5人の被害者は、2010年6月の三菱重工前での「三歩一拝」デモ後に初めて寄付の意思を明らかにし、その年の11月にも「みなさんの助力で訴訟を起こし、日本との間を行き来しながら闘うことができたので、私もお金を受け取ったら他の人々が志を貫けるよう助けたい」と寄付の意志を改めて確認している。約定書は2012年10月23日に作成され、翌日の24日に光州地方裁判所に訴状を提出した際に被害者が自ら署名捺印した。約定書の内容も「寄付金を日帝被害者の人権支援事業、歴史的記念事業および関連する公益事業のために使えるよう、市民の会に交付する」というものだ。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が日本企業のかかわらない第三者弁済案を打ち出し、今年4月に政府の資金で判決金(賠償金)の支払いを開始したことに対し、訴訟代理人団のある弁護士は同月9日、寄付を約束した被害者(故人)の遺族に約定書の内容を説明し、その後、これを内容証明で送っている。市民の会側はハンギョレに「約定書どおり寄付するかの判断は遺族がするだろうが、故人の遺志を伝えることが重要だと考えた」と説明した。
弁護人団は、市民の会の活動は「歴史ビジネス」ではなく「公益的助力活動」だということも強調した。キム・ジョンホ弁護士は「市民の会の会員たちは長い訴訟に疲れた被害者たちと外出したり、病院に同行したり、被害者たちの自叙伝の出版を助けたりした。それにかかったすべての費用は市民の会の後援者と弁護士による募金でまかなわれている」と強調した。