大西洋で行方不明になったタイタニック号見学ツアー用の深海潜水艇「タイタン」から救助を要請したと推定される音が探知されたが、依然として捜索が難航している。酸素が2日分程度しか残っておらず「ゴールデンタイム」が差し迫った状況だ。
20日(現地時間)、CNNは米政府の内部情報を引用し、捜索隊が水中で30分おきに叩くような音を感知したと報じた。捜索隊は音波探知機をさらに配置した4時間後にも叩くような音を聞いたという。これは潜水艇に搭乗していた行方不明者らが潜水艇の壁を叩いて救助信号を送ったものと推定されると、CNNは報じた。ただし、捜索当局はまだ行方不明になっている潜水艦の位置を把握できていない。
長くても2日分の酸素しか残っておらず
「タイタン」は19日午前、潜水して約1時間45分後に連絡が途絶えた。この潜水艇は、1912年に英国から米国のニューヨークに向かう途中で氷河にぶつかって沈没したタイタニック号の見学ツアーのために航海に出た。今回が3回目の航海だった同潜水艇は、通常4日分の酸素を積んで潜水に乗り出したという。このため、現在長くても2日分程度の酸素が残っているものと推定される。
捜索が行われる中、5年前から同潜水艇の安全性について懸念が示されていたことも明らかになった。「CNBC」の報道によると、同潜水艇を運営するオーシャンゲート・エクスペディション社の元責任者が、2018年の同社との訴訟で、潜水艇をまともにテストしていないことが「搭乗客を深刻な危険にさらす恐れがある」と警告したという。
オーシャンゲートの海洋運営局長を務めたデビッド・ロクリッジ氏は、シアトル連邦地裁に提出した文書で、「非破壊検査を実施せずにこの潜水艇を(深海に)航海させるという会社の立場には同意できない」と述べたという。非破壊検査は製品を破壊せずに性能や状態、欠陥などの有無を放射線、超音波などで確認する検査。同文書によると、ロクリッジ氏は当時、潜水艇の安全と品質管理に対して会社経営陣に口頭で懸念を表明したが「無視された」という。
安全問題警告されたのに
同時期、業界や学界の専門家らも潜水艇に対する安全問題を提起したという。ニューヨーク・タイムズ紙は、海洋学者と他の潜水艇会社の役員など30人余りが2018年にオーシャンゲート・エクスペディションズ社のストックトン・ラッシュ最高経営者(CEO)に書簡を送り、潜水艇に対して「大きな問題が生じる可能性がある」と警告したと報道した。彼らは「費用と時間がかかるかもしれないが、搭乗者を保護する安全装置作りのために、第3者の検証手続きが必須だというのが私たち皆の見解」だと強調したという。
最近、オーシャンゲート側も技術欠陥の可能性に言及した事実が明らかになった。同社の法律・運営顧問であるデビッド・コンキャナン氏は、昨年バージニア州東部連邦地方裁判所に提出した書面資料で、「タイタニックに行く初めての潜水で、この潜水艇にバッテリー問題が生じた」と証言したという。
一方、行方不明になった潜水艇には、英国の大富豪の事業家であり探検家のヘイミッシュ・ハーディング氏を含めて5人が搭乗しているという。ハーディング氏はアラブ首長国連邦(UAE)基盤の航空会社アクション・アビエーションの会長で、昨年アマゾンの創業者のジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙企業ブルー・オリジンのロケットで宇宙旅行も経験した。
オーシャンゲートのストックトン・ラッシュCEOやパキスタンの大富豪シャザダ・ダウッド氏とその息子、フランス人のダイバーも同乗しているという。8日間行われるこのツアーの費用は、1人当たり25万ドルだという。