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「一度ターゲットにされたら蟻地獄」…悪質なコメントと共生するマスコミ・ポータル

登録:2019-10-17 08:56 修正:2019-10-17 11:29
今月14日に亡くなったソルリ(本名チェ・ジンリ)のための追悼祭が16日夜、ソウル新村の現代デパート前で開かれ、追悼を表し黒い服を着た参加者たちが故人の冥福を祈り、ろうそくを灯している=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 2017年、韓国内グーグル人物検索語1位。多くの悪質なコメントに悩まされ、14日に亡くなった俳優ソルリ(25・本名チェ・ジンリ)に残った記録の一つだ。当時、ソルリはただ洋服の下に下着を着用していない写真を個人のSNSアカウントに載せたなどの理由で、ヘイト表現を伴う悪質なコメントに苦しんだ。前例のない早期大統領選挙があった年だが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の名前はソルリに次ぐ2位。なぜソルリにこれほど大衆の関心が注がれたのだろうか。専門家らは「クリック商売」に出たマスコミが先頭に立ち、「悪質コメント群」がこれに続き、悪循環をあおった結果だと口をそろえる。「悪質コメント群に場を開いたマスコミからまず自浄すべきだ」という指摘だ。

 実際、16日にハンギョレが韓国言論振興財団のニュースビッグデータ分析システム「ビッグカインズ」で分析した結果によれば、ソルリがガールズグループ「f(x)」を脱退して個人活動を始めた2015年8月7日から今月13日まで、ソルリを取り上げた記事は日刊紙と専門紙だけで9238件に上る。彼女について最も多くのゴシップ情報を流した一般の芸能紙を除いても、記事件数が1万件に迫ったということだ。ソルリが映画『リアル』に出演するなど、俳優として本格的に新しい領域を開拓し始めた時だが、マスコミの主な素材は「ソルリのSNS」をめぐる話題だった。マスコミが煽ったために、当時の関連検索語を見るとソルリに対するネットユーザーの関心は作品活動よりも主にゴシップに注がれていた。関連語は「インスタグラム」「過去の恋人」「SNS」「ネチズン」「オンラインコミュニティ」などだ。かつて、ソルリは悪質なコメントに苦しみ2014年に芸能界活動を一時停止したことまであったが、マスコミもネットユーザーも彼女を考慮しなかった。

 この過程で鮮明に現われるのは、「イエロー・ジャーナリズム」と悪質コメント群の共生構造だ。マスコミは有名人のゴシップ情報を記事にすることで悪質なコメントを呼び込み、記事に悪質なコメントが掲載されるとこれを「話題」として再配布し、問題を拡大再生産してきた。4月8日、ソルリがインスタグラムのライブ放送を通じて知人たちとの飲み会を公開した時は、「ノーブラ問題」で約50件の記事が出た。5月22日、ソルリが自分の姿を撮ってSNSに上げたときは「下着を着けずに道を歩く」というテーマで25件の記事が出た。一部のメディアは「甲論乙駁」「ざわざわ」といった修飾語とともに、ソルリに書き込まれた悪質なコメントをそのまま記事に掲載した。

 専門家らは、悪質なコメントとマスコミの共生の輪を、まずマスコミこそが断つべき時だと口をそろえる。『アイドロジー』編集長のミミョ氏は、ハンギョレの電話取材で「芸能人に向けられた悪質なコメントを無分別に記事に載せるのは、悪質なコメントをつける人々の発言を価値ある意見のように信じさせ、暴力的な視線を再生産することだ」とし、「事実上、マスコミが悪質なコメントを載せる機会を提供し、場を開いた」と皮肉った。民主言論市民連合のキム・オンギョン事務処長も、「悪質なコメントの連鎖構造は、芸能人にとっては一度引っかかれば抜け出すことのできない『蟻地獄』だ」とし、「個人の告訴・告発や『インターネット実名制』だけではこれを防ぐことができず、マスコミ自らこれを止めようという社会的宣言をしたり、報道準則を公論化しなければならない」と促した。

 一方、社団法人韓国芸能マネジメント協会はこの日、立場文を発表し「悪質なコメントによる大衆文化芸術家の精神的な苦痛と被害が社会的な問題として浮上した」とし、「根拠のない悪質なコメントによる被害を防止するため、会員社所属のアーティストを保護するという観点から超強硬対応を取る」と明らかにした。

ソルリがf(x)を脱退した2015年8月7日から今月13日までに報道されたソルリ関連記事に出たキーワードを関連語分析を通じて加重値によって視覚化したワードクラウド//ハンギョレ新聞社

 

キム・ミンジェ、チョン・グァンジュン、シン・ジミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/913497.html韓国語原文入力:2019-10-17 07:52
訳C.M