28日、韓国初の遺伝子治療剤「インボッサ(Invossa)」(変形性膝関節症改善の新薬)が認可取り消しになり、コーロン生命科学をはじめ、安全性を十分に検査せずに許可を出した食品医薬品安全処(食薬処)に対し責任を問う声が大きくなっている。 保健医療市民団体などは、規制緩和でバイオ産業を支援してきた政府の責任を問い、食薬処のインボッサ認可から取り消し遅延までを徹底的に明らかにすべきだと主張した。長期的な副作用管理は第3の機関が担当すべきだという指摘も出ている。
■バイオ産業に打撃
インボッサ認可取り消しでコーロングループは衝撃を受けている。イ・ウンヨル前会長とコーロン生命科学などが、市民団体と少額株主から告発および提訴されたのはもちろん、1兆ウォン(約920億円)に達する技術輸出・製品輸出の契約破棄にまでつながる可能性が大きいからだ。今回の認可取り消しでインボッサ販売が中止となれば、コーロン生命科学は根元から揺らぐことになる。コーロン生命科学が食薬処を相手に訴訟を提起するだろうという展望も提起される。コーロンはこの日「品目許可提出資料が完ぺきではなかったが、操作あるいは隠ぺいの事実はなかった」として「取り消しの理由に対する会社の立場が受け入れられていないので、今後手続きを踏んで対応していく」という立場を明らかにした。適切な検証なしで市販許可を出した食薬処も責任がないとは言えないという理由からだ。
今回の事態で、文在寅(ムン・ジェイン)政府が育成してきたバイオ産業全体が打撃を受ける可能性もあるという見方も出てくるが、“腐ったリンゴ”を切り取ったという見解もある。バイオ産業のある関係者は「インボッサは認可の時から効能が過大に取り繕われているという話が多かった」として「政府がまともに評価して支援するならば、いくらでもバイオ産業全体が成長していくことができる」と話した。
■まず患者の安全対策から
保健医療団体連合など保健医療市民団体は、今回の事態が無理なバイオ産業規制緩和の結果だと批判する。食薬処が今回の事態の再発を防ぐために遺伝子治療剤などに対する認可および審査力量を育成するとしたが、実はこれも先端バイオ医薬品の審査期間を短くしようとする意図を含んでいるということだ。保健医療団体連合のウ・ソッキュン政策委員長は「政府のバイオヘルス革新成長戦略によると、審査人員を確保して新しい医薬品の市場進入までの時間を減らすと言っているが、 食薬処はこれを再発防止策に入れて審査力量を育てると言葉だけ変えたものだ」と指摘した。 ウ・ソッキュン委員長はさらに「インボッサ事態が始まってから認可取り消しまで50日余りかかったが、その間政府はバイオ産業を育成する先端再生バイオ法の国会可決のために努力した」とし、「産業体の育成に先立って、患者に対する安全管理対策をまず備えてこそ第2のインボッサ事態を防ぐことができる」と付け加えた。
■注射後の副作用管理は第3の機関で
食薬処は、全投与件数の3707件に対して15年間の追跡調査を推進すると明らかにした。 インボッサの注射を受けた患者の深刻な副作用については、それほど大きな心配はないとしているが、一部の患者は関節部位がむくんで痛みを訴えているという。 訴訟を代理するオム・テソプ法務法人のオ・キムス弁護士は「患者はむくみなどをはじめとして腫瘍ができるかも知れないという不安におびえている」と明らかにしている。
副作用の調査機関に対する憂慮もある。人道主義実践医師協議会のチョン・ヒョンジュン事務局長は「食薬処に対する監査を通して許認可の過程の特典疑惑を糾明すべき時に、メーカーと食薬処が患者の副作用を調査するのは客観的とは言いがたい」として「国立中央医療院や疾病管理本部などが追跡観察を担当すべきだ」と指摘した。
政府の支援金を「還収」措置すべきだという指摘も出ている。 保健福祉部は最近10年間、インボッサ開発に82億1千万ウォン(2015~2018年)を支援したと説明した。 福祉部関係者は「研究成果評価審議委員会を構成してから支援金還収を推進する」と説明した。